日本小児血液学会雑誌
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各種貧血における血漿エリスロポエチン変動と造血能の検討
平野 浩次井上 リカルド シンジョウ高橋 良博伊藤 悦朗横山 碓
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1997 年 11 巻 3 号 p. 155-161

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抄録

血漿エリスロポエチン (Epo) と赤血球造血能との関連を溶血性貧血 (HA) 11例, 再生不良性貧血 (AA) 12例, 鉄欠乏性貧血 (IDA) 30例, Dubowitz症候群 (DS) を含む他疾患5例について検討した.それらの例について血漿Epo, 種々血液学的パラメーターおよび末梢血赤血球糸造血幹細胞 (CFU-E, BFU-E) を測定し, それらの相関を検討した.以前から報告にもみられるように, すべての貧血状態においてHbと血漿Epoの間には有意の逆相関が得られたが, Hb低下の程度に相当したEpoの上昇度はAAにおいて著しく高かった.血漿Epoと末梢血幹細胞の間の相関はAAにおいてのみみられ, CFU-EとEpoの間に有意の逆相関が得られた.興味があることは, 貧血の著明でない (Hb≧11g/dl) 例においても血漿Epo上昇がみられたことであった.貧血の著明でないHA4例中3例, AA7例中3例, IDA5例中1例でEpo≧50mU/mlの上昇がみられ, それらの例では末梢血BFU-Eの有意の増加があり, 造血能の促進が示唆された.DS例ではHbが12.5g/dlであり, Hb異常がないにもかかわらず, 血漿Epo206mU/mlを呈し, これらの例では組織の低酸素以外のEpo分泌刺激の存在が示唆された.このメカニズムを解明するために行った動物実験では, ヘミンの腹腔内注入がラットのEpo分泌や網赤血球増加を刺激した.これらのヘモグロビン分解産物が, 貧血の著明でない例のEpo分泌刺激に関係しているかもしれない.

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