抄録
トロンボモジュリン (以下TM) は血管内皮細胞上の重要な凝固制御因子として機能する.また, 血中や尿中には血管内皮細胞から遊離した可溶性TM (以下sTM) が存在する.特に血中のsTMは血管内皮細胞の障害, 破壊過程で各種プロテアーゼにより分解されて生じるため, 血管内皮細胞の損傷マーカーとしても注目されている.われわれはこれまでに正常児における血中および尿中のsTM値の年齢別推移を示し, さらに正常児においては血中と尿中のsTM値はよく相関することを報告した.今回われわれは, TMが肺に多く存在することから, 呼吸窮迫症候群 (RDS) および新生児慢性肺疾患 (CLD) のsTM値を測定した.その結果, RDSでは出生時検体 (臍帯血) でnonRDSと有意差はなく, CLDでは正常児に比べ有意に高値をとることがわかった (血中sTM p<0.001, 尿中sTM p<0.05).