日本小児血液学会雑誌
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小児先天性慢性型赤芽球癆 (Diamond-Blackfan anemia) 患児の赤血球膜糖鎖異常の解析
高橋 祐子
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1997 年 11 巻 3 号 p. 180-185

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抄録

小児先天性慢性型の赤芽球癆 (Diamond-Blackfan anemia = DBA) 患児赤血球のpeanut lectin (PNA, Arachis hypogaea) に対する凝集反応性を追求するため赤血球膜上の糖鎖構造を分析した.DBA患児は生後1カ月以内に診断を受け, 副腎皮質ホルモンのみで輸血なしで経過している.この患児の赤血球はPNAに持続的に反応するが, papain処理でこの反応は消失するので蛋白上の糖鎖が異常であることがいえた.PNAにて凝集するものは, 臍帯血赤血球やViblio cholerae (VC) で処理した健常人赤血球でも観察されたが, 他の小児貧血患児ではなかった.これらのPNAに反応する赤血球膜からO-glycan糖鎖をO-glycanase処理にて得, HPLCで分析すると約14分後に出現する糖鎖波形はこれら3群ですべて一致した.これらのO-glycan糖鎖をPNA columnで吸着後溶出させた糖鎖波形も同様のものが出現した.しかし, このような波形は健常人や他の小児貧血患児ではみられなかった.FITC label PNAでのflow cytometryでは, VC処理赤血球ではほとんどがPNA反応赤血球であったが, DBAでは10%程度であった.このことからDBA患児赤血球膜の糖鎖は, 臍帯血と同様の未熟性や, VC処理され末端糖のシアル酸が欠失した赤血球と同様の不完全なものが存在していると考えられ, これが貧血の一因として推定された.

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