抄録
ファンコニ貧血 (FA) は, 骨髄不全, 白血病への進行, 染色体不安定性を特徴とする常染色体劣性の遺伝性疾患である.遺伝的に異なる8群 (A, B, C, D1, D2, E, F, G) に分類され, そのうちB群を除く7群の遺伝子が同定されている : これらのFA蛋白は共通の分子経路で働き, この経路の下流で機能するFANCD2は家族性乳癌遺伝子産物BRCAlと相互作用する.さらに, BRCA2がDl群遺伝子であることが判明し, FA/BRCA経路はDNAの相同組み換え修復を制御することが示唆されている.本総説では, この経路の分子メカニズムの最新の知見を説明し, FAに関する重要な遺伝学的トピックスを紹介する.FA/BRCA経路は造血幹細胞におけるゲノム安定性の維持に重要な役割を果たし, その分子機構の解明は, 後天性の骨髄不全, 骨髄性腫瘍などの発症機構に新しい知見をもたらすと考えられる.