抄録
上気道感染を契機に高度の貧血を呈したHb Köln症の1例を報告する.患児は7歳の女児で, それまで貧血に気づかれていなかったが, 昭和61年5月末より発熱・全身倦怠感を呈し, 当院を紹介された.入院時, 軽度の肝脾腫・高度の貧血 (RBC 216 ×104/mm3, Hb 5.29/dl, Ht 19.1%, reticulocyte 1‰) が認められた.骨髄像では, 赤芽球系の過形成が認められた.Hbの検索において, セルロースアセテート膜電気泳動 (pH 8.6) では, HbAとHbA2の間に異常バンドが認められ, さらに逆相高速液体クロマトグラフィー (HPLC) により分離精製したβ鎖のアミノ酸分析では, 98番目のValがMetに置換されていることが同定され, Hb Kölnと診断された.なお, 家族の調査では, 異常Hbを有する者は他には認められなかった.