日本小児血液学会雑誌
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Fanconi貧血を巡る諸問題
別所 文雄
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1993 年 7 巻 2 号 p. 105-116

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抄録

Fanconi貧血の表現形質は多様で, 全く外表奇形を持たない症例も少なからず存在する.この多様性は同一家系内でもみられる.逆に, 表現形質上はFanconi貧血から区別不可能であるが, 染色体異常が検出されない例が存在する.当面このような例はFanconi貧血の分析からは除外することが適当と考えられる.白血病, 偏平上皮癌, 肝腫瘍などの発生が報告されているが, 肝腫瘍については蛋白同化ホルモンの関与も考えられる.白血病の型では急性骨髄単球性白血病, 赤白血病が多く, また骨髄異形成症候群も多くみられる.白血病に対する化学療法や骨髄移植のための前処置に対する感受性が高く, 注意が必要である.遺伝学的には単純な常染色体劣性遺伝をするとされるが, 少なくとも四つのcomplementation群の存在が知られており, C群の遺伝子FACCが単離されている.他の群の遺伝子も単離され, それらの性質が明確にされることにより, Fanconi貧血を巡る様々な問題が解決されるものと期待される.

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