日本小児血液学会雑誌
Online ISSN : 1884-4723
Print ISSN : 0913-8706
ISSN-L : 0913-8706
造血幹細胞の増幅と, 赤芽球系と顆粒球系造血におけるc-kit機能発現の相違
小西 道雄小泉 晶一市原 強和田 英男山上 正彦
著者情報
ジャーナル フリー

1995 年 9 巻 2 号 p. 78-83

詳細
抄録

ヒト臍帯血 (CB) と骨髄 (BM) 中のCD34+細胞を純化, 濃縮し, 幹細胞因子 (SCF) とインターロイキン3 (IL-3) とインターロイキン6 (IL-6) とを加えて液体培養した.6日ごとに一部の細胞を採取し, 顆粒球/単球系前駆細胞 (CFU-GM) や赤芽球系前駆細胞 (BFU-EおよびCFU-E) からなる造血前駆細胞のコロニー形成を算定した.12日間の培養でCB中のCFU-GMは98倍に増幅され, BFU-EとCFU-Eは6日間培養でそれぞれ3倍, 5倍に増幅された.自己複製性CD34+細胞数は培養6日目がピークで約5倍に増幅された.しかしBMの造血幹細胞や前駆細胞は今回のわれわれの培養条件では増幅されなかった.IL-3+IL-6+SCF添加液体培養下で, 抗c-kit抗体, SR-1, はBFU-EおよびCFU-Eを培養前および12日間培養後でも有意に抑制したが, CFU-GMは, 培養前および培養6日目までのSR-1の影響は少なく, さらに培養12日目にはSR-1による抑制は全く認められなかった.この結果から, 顆粒球/単球系前駆細胞と赤芽球系前駆細胞の分化増殖において, c-kitの機能発現には相違があるものと思われた.

著者関連情報
© (社)日本複写権センター
前の記事 次の記事
feedback
Top