日本小児血液学会雑誌
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HLA2座不一致の母親より骨髄移植を施行し, 難治性下痢から頭蓋内出血で死亡したB細胞陽性重症複合免疫不全症の1例
佐藤 理香毛利 陽子石井 榮一宮崎 澄雄
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1995 年 9 巻 6 号 p. 440-445

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抄録

HLA不一致の骨髄移植後の回復期に難治性下痢を発症し, 頭蓋内出血で死亡したB細胞陽性重症複合免疫不全症の1例を経験した.男児は生後123日目にHLA2座不一致の母親からT細胞除去なしで骨髄移植を施行した.移植後1度の急性GVHDを認めたがsteroid療法にて軽快し, 細胞性免疫の再構築が認められた.しかし移植後3カ月目に難治性下痢を併発, GVHDの所見に乏しいためウイルス性腸炎と考えγ-globulin, 抗ウイルス剤を投与したが下痢は遷延した.GVHDに対するsteroid療法も併用したが改善なく, vitamin K欠乏によると思われる頭蓋内出血を来し死亡した.免疫不全症に対するHLA不一致の骨髄移植ではT細胞除去を含めた前処置の選択が重要と思われる.また本例のように移植後に認められる難治性下痢ではGVHDとウイルス感染の鑑別が困難であり, 腸生検を含めた早期の検査が必要と考えられた.

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