2020 年 4 巻 論文ID: 2020-038
原籍は心臓外科医であり,半世紀以上,現役の医師を続け,かつ長い間教師でもあった.
くすし(薬師)は,古語では医師を指していた.当然である.現代も,医師はAIやロボットを駆使しつつ,診断し,手術を含めた治療を行うが,ほとんどの場面で薬剤が重要な役割を果たしている.
反面,多くの医療の局面で責任を問われるのは医師である.道義的責任は勿論のこと,場合によっては刑事罰もある.免許剥奪に至ることもある.疾病の治療と健康を共に担う人材として,一体薬剤師とはどうあるべきなのか,を教育学会の場で考えてみたい.
1.薬学の分野を選んだ動機は何かを問いたい.理系が好きというなら,理学部,工学部で何故ないのか.人体の神秘に迫り,疾病にあえぐ患者を支えたい,という医療の一端を支えるという覚悟はあるのか.
同一性の追求としてのサイエンス!
真理は一つ.
限りなく個別的な医療!
医学・医療と理工学の差はここにある
2.薬学を選んでよかったと思っているか,問いたい.
3.職業としての社会からの評価に満足しているか.
4.薬学は本当に理系の一分野なのか.それとも医療という巨大な人類へのサービスの一部,重要なピースを担う総合的な社会的存在なのか.
5.職業に理系,文系の差はあるのか.同一性の追求としてのサイエンスと,限りなく個別的な人の心と体に対する薬学の立場はどうなのか.今日,一部上場企業の社長のうち9人は哲学科出身である.
職業に理系,文系の差はあるのか
同一性の追求としてのサイエンスと,限りなく個別的な人の体に対する薬学の立場はどうなのか
6.薬学を選んだ人間は卒後どのように学習の機会をもつのか.40年の職業人生のうち,大学はたった6年ではないか.
7.社会も,将来,必要とする人材の予測を見失ってはならない.
大学の文系学部を削減し即戦力の理工系を重視する思想
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リベラルアーツは科学の世界にこそ必要である
8.生涯通用する教養が必要である.
教養とは発揮すべく咀嚼された智をさす
教養とは社会に対して,あるいは職務の上で価値を創造する力,デザインする力,自分や社会を展望する力,ときにはイノベーションを起こす力にもなりうる智の源泉であり,そしてそれは国際通用性を有しているべきである.
9.良い教師,良い教育とはどのような具体像か.
10.一方,教師はいかに生きるべきか.
知識や技術は3年経てば古くなる.そして,教師は学生より先に死ぬ.学生はその後何十年も生きてゆくのである.
11.医療に倫理学はなぜ必要なのか.
倫理とは「ある集団の生存確率」を高める考え方・技術を指す.
EU(欧州連合)による
AIについての倫理指針 2018.12
1.AIの判断過程をわかりやすく説明する責任を企業に課す
2.判断にどんなデータを使ったかなどの情報公開制度を整える
3.AIの仕組みや運用が倫理的にどうか監査する機関の設置
4.倫理的なAIの認証制度を設ける
12.予想できない未来に立ち向かう若者たちへ.
激変に打ち勝とう.
変化の遅い国を変えよう.
2019.8.25 私は阪大豊中キャンパスにいた.
薬学を専攻する方々へ,激変に打ち勝とう,と述べ,締めくくった.
しかし,2020年1月すでに激変は始まっていた.
数年後,日本は,そして世界はどうなっているだろうか.
しかし,このような激変のために,私たちは学習し,備えてきたはずである.
数年後,新しくなった世界でまたお会いしたい.
〈急注〉
2020.7.10
薬剤師「在り方」検討会が開かれる.
改正医薬品医療機器等法(薬機法)
患者のニーズにつき検討される.
「新薬剤師養成問題検討会」が2020年2月に行われ,検討会設置が決められたが新型コロナ問題で7月にずれこんだもの.