改訂された薬学教育モデル・コアカリキュラムの実務実習では,「代表的な8疾患」に対する実践的な臨床対応の基本を,患者との関わりを通して修得することが求められている.しかしながら,実習施設によって体験できる疾患が限られることもあるため,薬局実習から病院実習を通して,代表的な8疾患を学習できるよう配慮する必要がある.そこで,薬局実習の期間中に,より広範な疾患を体験して病院実習に引き継ぐため,実習の受入薬局では体験が困難な疾患を,他の薬局(以下,協力薬局)で体験する薬局間連携実習を試行した.協力薬局で学ぶ疾患を予め選定し,1日ずつの実習を3週間程度の間隔で計3日間行った結果,対象者(13名)全員が服薬指導と薬歴の記入を体験(のべ患者数:3–23例,中央値5例)し,患者での薬学的管理を実践することができた.この薬局間で連携する実習は,より多くの疾患を薬局実習で体験する手段の一つになり得ることが示された.
The revised core curriculum for pharmaceutical education requires pharmacy students to gain experience during the pharmacy and hospital clinical clerkships in medication counseling of patients with a major disease. However, since some pharmacies do not treat all of these diseases, we created a new education method for pharmacy clerkships. This trial’s primary purpose was to provide opportunities for students in medication counseling with as many kinds of diseases as possible. The preceptor pharmacists received assistance from cooperating pharmacists of other pharmacies for educating the pharmacy students on specific diseases that could not be covered at the original training pharmacy. The cooperating pharmacists provided three days of practical education at three-week intervals throughout the eleven-week clerkship. Thirteen students participated in this program and gave medication counseling to patients with the diseases such as a psycho-neurologic disease, hypertension, or other diseases that could not be covered at the original training pharmacy. During the three days, the median number of patients treated by each student was five, with a range of two to 23 patients. The students also learned how to make a record of the patient’s medication history. This cooperative method among pharmacies was an effective measure in providing the required learning for the clinical clerkships.
平成25年度より改訂された,薬学教育モデル・コアカリキュラム1)(以下,改訂コアカリ)では,薬局および病院実務実習の計22週間で,実務実習を行う学生(以下,実習生)に,代表的な8疾患(がん,高血圧症,糖尿病,心疾患,脳血管障害,精神神経疾患,免疫・アレルギー疾患,感染症)を有する患者の臨床対応を体験させることが望まれている2).薬学実務実習に関するガイドライン3)(以下,ガイドライン)では,実習生が体験できる症例や参加できる事例等に不公平が生じないよう努めることが,大学や実習施設に求められている2).
これに伴い,大学と実習施設との情報共有のあり方の模索や,実務実習での代表的な8疾患の学習状況の調査などが行われている4,5) ほか,各地区の調整機構などの主導により複数の実習施設をグループ化して,施設間で連携した実習を行うなどの学習環境の整備が進められている6).
しかし,薬局実務実習において,実習生が受入薬局のみでは体験することが困難な疾患の臨床対応を体験させるために,他の薬局と連携する実習方法を検討した報告はまだない.そこで,代表的な8疾患のいずれかを協力薬局において効果的に体験する方法を構築するため,福山大学薬学部と広島県東部地区の保険薬局との協働で,薬局実務実習期間中に薬局が連携して行う実習(以下,薬局間連携実習)を行った.
平成30年度の福山大学薬学部5年生のうち,薬局実務実習期間中に受入薬局での体験が困難な「代表的な8疾患」のいずれかを,協力薬局にて体験することが可能な実習生(13名)を選択した.
実習生は,協力薬局での実習を3日間とも同じ薬局にて行った.
2.協力薬局の選定受入薬局において臨床対応の体験が困難と考えられる疾患の有無と疾患名,および協力薬局による支援の希望の有無を確認し,該当する疾患の学習が可能な協力薬局を探す作業を大学と地域薬剤師会で行った.協力薬局には,本研究に賛同した認定実務実習指導薬剤師(以下,指導薬剤師)が勤務しており,実習生の受入薬局と同一の市内に位置し,かつ実習生が無理なくアクセスできると判断された薬局を選定した.実習生には,協力薬局での実習の目標と内容を説明するとともに交通手段について相談し,本人の同意が得られた場合に薬局間連携実習を実施した.
協力薬局での実習費は,福山市内および尾道市内の実務実習において,実習内容の一部を他の薬局に委託する際に,受入薬局が実習協力費として支払っている1日あたり5,000円(消費税別)を,受入薬局から協力薬局に支払った.実習生に交通費が発生した場合は,原則として実習生が負担した.薬局間連携実習の実施日は大学が事前に把握し,万一不測の事態が発生した場合は保険等で対応できる準備をした.
3.薬局間連携実習の日程薬局間連携実習は,協力薬局での1日(終日)の実習をおおよそ3週間の間隔で計3日間行う日程(第3~4週頃,6~7週頃,9~10週頃の3回を目安)とし,各日の指導項目を設定した(表1).3日間の実習期間で,実習生が協力薬局での調剤業務の概略を理解し,処方箋監査や治療経過の把握を経て服薬指導や薬歴の記載による薬学的管理を体験することを目標とした.また,実施日に3週間程度の間隔を設けることで,同一患者に複数回関わる機会が得られる可能性もあると考えた.
目標 | 主な指導項目 | |
---|---|---|
Day 1 | 1 治療薬の理解向上 | ・医薬品学習リスト※1)の確認と指導 |
2 薬局業務フローの理解 | ・指導薬剤師による説明 | |
3 処方箋調剤の実践 | ・処方箋監査と調剤 | |
4 服薬指導の準備 | ・薬剤師の服薬指導の見学 | |
・薬歴での継続的な治療経過の把握 | ||
・実習生による服薬指導内容の準備 | ||
・服薬指導の体験 | ||
5 到達度の確認 | ・目標ごとの到達度評価※2)(中間評価) | |
・実習生へのフィードバック | ||
Day 2 | 1 治療薬の理解向上 | (Day 1と同じ) |
2 処方箋調剤の実践 | ||
3 服薬指導の準備 | ||
4 服薬指導の実施 | ・1例以上の服薬指導 | |
・服薬指導した患者の薬歴記入 | ||
5 到達度の確認 | (Day 1と同じ) | |
Day 3 | 1 治療薬の理解向上 | (Day 1,2と同じ) |
2 服薬指導の準備 | ||
3 服薬指導中心の実習 | ・複数の患者への服薬指導 | |
・服薬指導した患者の薬歴記入 | ||
4 到達度の確認 | ・目標ごとの到達度評価※2)(最終評価) | |
・実習生への伝達 |
協力薬局の指導薬剤師は,薬局間連携実習で体験する疾患の治療薬のうち,協力薬局において使用頻度が高い医薬品の名称もしくはその分類を医薬品学習リスト(図1-A)に記載し,受入薬局の指導薬剤師を通して実習生に予習を指示した.実習生は,協力薬局での実習初日(以下,Day 1)までに医薬品学習リスト等で自習して薬局間連携実習に臨んだ.この学習リストは,前年度に我々が予備的検討として計3日間の薬局間連携実習を試みた際に,実践的な知識が不足している(薬理作用や副作用等を,患者に説明する言葉で表現できない)と,協力薬局の指導薬剤師による口頭試問等において判断され,服薬指導は困難と評価されたケースがあったことにより導入された.また実習生は,受入薬局にて患者対応を体験する予定の疾患の中から指導薬剤師が選定した1疾患についても,医薬品学習リストでの自習を行った.
医薬品学習リスト
また,前年度の予備的な検討では,受入薬局と協力薬局の指導薬剤師が,SBOの到達を基に業務への適応を判断する従来の指導方法を踏襲していたことも,服薬指導の体験が不十分だった理由と考えられた.そこで,受入薬局では服薬指導などの体験を重視した実習日程とし,協力薬局では実習生が体験する患者の候補を事前に選択しておくなどの対策を講じることとした.
薬局間連携実習における実習生のパフォーマンスは,受入薬局での実習の進捗に伴い実習生が修得したことを,協力薬局において基礎的なレベルまでは実践できることを期待し,10項目の具体的目標を設定してその到達度で評価した(図2-A).到達度はLevel 1からLevel 5までの5段階とし,項目ごとの最終評価がLevel 2以上に到達することを目標とした.実習生は薬局間連携実習日に自己評価して,協力薬局の指導薬剤師による確認と助言を受けた.
薬局間連携実習における具体的目標
さらに実習生は,薬局間連携実習で体験した内容を実習日誌に記載するとともに,服薬指導を行った日付および処方内容を疾患学習記録(図3-A)に記録した.実習生が,服薬指導を体験した患者の治療経過を薬歴にて繰り返し考察することや,今後の介入方法などについて指導薬剤師と意見交換を行うことで,患者像を把握し,複数回の継続した薬物治療を考察することを促すことができるように,これらの学習経過も疾患学習記録に記録することとした.
疾患学習記録
なおこの疾患学習記録は,福山大学が平成30年度の実務実習より導入し,実習生全員が薬局および病院実務実習で使用している.薬局実習での記録(図3-Bに例示)は,病院の指導薬剤師に提出され,薬局実習における学習成果の一つとして情報提供されている.病院実習では,薬局実習での疾患ごとの体験例数や学習の深度を参考にして,体験させる患者を選択することとしている.
5.倫理的配慮対象となる実習生への倫理的配慮として,得られた結果は学会や論文などで公表されることがあるが,その際には匿名化を行い個人が特定されないようにすることを説明し,実習生本人の同意を得た上で実習成果の提出を受けた.なお本研究は,人を対象とする医学系研究に関する倫理指針に留意し,福山大学研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(通知番号H30-ヒト-19号).
8種類の代表的な疾患のうち,実習生が協力薬局で学習することを目標とした疾患の種類は,11名が1種類,2名が2種類で,いずれも受入薬局での体験が困難と考えられたものであった.対象とした疾患は,精神神経疾患が8名,高血圧症が3名,感染症が2名,糖尿病および脳血管障害が各1名であった(表2).
実習生 | 受入薬局 | 協力薬局 | 服薬指導を実施した患者数(例) | 患者ごとの服薬指導回数 | 服薬指導を体験した薬剤の品目数 | |||||||
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近隣の医療機関 | 薬局名 | 近隣の医療機関 | 学習の目標とした疾患 | Day 1 | Day 2 | Day 3 | のべ例数 | 1回 | 2回 | 3回 | ||
1 | 内科 | A薬局 | 心療内科 | 精神神経疾患 | 5 | 7 | 12 | 10 | 1 | 4 | ||
2 | 内科 | 11 | 12 | 23 | 23 | 5 | ||||||
3 | 総合病院 | B薬局 | 2 | 2 | 1 | 5 | 3 | 1 | 8 | |||
4 | 総合病院 | C薬局 | 8 | 4 | 5 | 17 | 2 | 3 | 3 | 13 | ||
5 | 内科 | D薬局 | 脳神経科 | 3 | 4 | 7 | 7 | 7 | ||||
6 | 皮膚科 | 2 | 1 | 3 | 3 | 4 | ||||||
7 | 皮膚科 | 2 | 2 | 4 | 4 | 8 | ||||||
8 | 内科 | 1 | 2 | 1 | 4 | 4 | 3 | |||||
9 | 内科 | E薬局 | 脳血管障害 | 2 | 1 | 3 | 3 | 1 | ||||
10 | 総合病院 | F薬局 | 小児科 | 感染症 | 1 | 1 | 4 | 6 | 6 | 2 | ||
11 | 泌尿器科 | G薬局 | 内科 | 高血圧症 | 2 | 3 | 5 | 5 | 7 | |||
12 | 脳外科 | H薬局 | 内科 | 高血圧症 | 3 | 1 | 4 | 4 | 5 | |||
感染症 | 2 | 2 | 4 | 4 | 2 | |||||||
13 | 小児科 | I薬局 | 総合病院 | 高血圧症 | 3 | 2 | 2 | 7 | 7 | 10 | ||
糖尿病 | 1 | 1 | 2 | 2 | 4 |
実習生が服薬指導および薬歴の記載を体験した疾患別の患者数(のべ例数)は2~23例(中央値:5例)で,協力薬局での3日間の実習によって患者での薬学的管理を実践することが可能であった.服薬指導を体験した患者の処方薬のうち,学習の目標とした疾患に対する治療薬は1~13品目(中央値:5品目)であった(表2).中でも,精神神経疾患を学習した実習生のうち3名(いずれも異なる協力薬局で実施)は,同一患者に複数回の服薬指導を行うことができた.一方で,Day 1および薬局間連携実習2日目(以下,Day 2)に服薬指導を体験できたにもかかわらず,薬局間連携実習最終日(以下,Day 3)に1例も服薬指導を実施できなかった実習生が2名いた.
3日間の実習終了時の具体的目標への到達度は,10項目中8項目で,実習生の8割以上がLevel 2「基礎的なレベルの業務には対応している」以上に達した(図2-B).また,項目1(調剤と調剤監査ができる)および項目9(次回来局時を見据えたプロブレムの把握と薬歴の記入ができる)については,実習生の6割以上がLevel 3「アドバイスがなくても基本的に対応している」に達した.一方,項目4(患者に適した処方薬や調剤方法を考察できる)と項目10(必要に応じて,医師へ患者情報の提供や処方提案ができる)では,Level 2以上に達した実習生はそれぞれ3名(23.1%)および1名(7.7%)にとどまった.Level 5「薬剤師と同等のレベルで対応している」に達した項目は,全ての実習生において皆無だった.
薬学実務実習のあり方として,ガイドライン3) には,(1)参加・体験型学習を通して実践的な臨床対応能力を身に付けること,(2)「代表的な8疾患」として提示されている8種類の疾患群の薬物治療について,患者対応の体験によって広く学ぶこと,ならびに(3)事前学習から薬局および病院実務実習まで一貫性を持つこと,などが明記されている.
とりわけ代表的な8疾患の臨床対応の体験については,薬局や病院が組織的に連携し可能な限り実習生が公平に学習できるよう配慮する必要があり,どのような方法で実習施設間が連携した実習を行うべきかは,大学が主体的立場で検討し実習施設と調整する必要がある.
我々は,実習生が薬局実務実習において幅広い疾患を体験する方法を検討することとし,計3日間の薬局間連携実習を試みた.
服薬指導の準備の一つとして自習課題とした医薬品学習リストは,協力薬局で繁用されている医薬品を対象に,大学の授業で学んできた知識を,実践的な服薬指導文に変換することを学ぶ様式とした.実習生は自己学習したものに,薬剤師からのアドバイスや,服薬指導体験から得た情報を追記するなどして活用していたことが伺えた(図1-Bに例示).
代表的な8疾患の臨床対応の深度については改訂コアカリ1) に規定されていないが,個々の患者で薬剤師業務を体験し,コミュニケーション能力や問題解決能力を培うことが目標である旨がガイドライン3) に示されており,薬局実習では,患者への服薬指導と薬歴記入の体験によって薬学的管理の能力向上を図ることが重要と考えられる7,8).協力薬局の指導薬剤師には,限られた実習日数で,服薬指導の体験のために必要な治療薬への理解度や,コミュニケーションの技量9) などを評価しながら,事前に選択した患者に実習生が対応できるかを判断することが求められた.
服薬指導を体験した患者数には,実習生ごとに差がみられ,服薬指導を体験した患者数と扱った医薬品の品目数は,連動しているとは限らなかった.協力薬局の中には,服薬指導を体験させる医薬品をある程度限定して,体験する患者を多く選定していたところもあった.
精神神経疾患領域では,実習生に服薬指導を実施させる患者の選択をより慎重に行う必要があると考えられるが,8名の実習生全員が服薬指導を体験し,うち3名は同一の患者に複数回対応することができた.精神神経疾患の診療は,処方日数が短いことに加えて,受診する日が固定され次回来局日が予測可能な患者も少なくないという領域の特性を生かし,対象患者を厳選しながら,密度の濃い実習指導が協力薬局でなされたことの成果と考えられる.
具体的な目標への到達度(図2-B)は,調剤手技(項目1)や薬歴の記入(項目9)など8項目で概ねLevel 2以上が達成できた一方,処方提案や医師への情報提供(項目4,10)に関する成果は不十分であった.これらは,実習生には難度が高いことに加えて,薬局現場で実践する機会も多くない業務であり,この取り組みで体験できる項目に限界があることを示唆している.改善策として,協力薬局が経験した過去の実例を課題として実習生に提示し,連携実習日に指導薬剤師と意見交換を行うことで補う方法なども検討する必要がある.
実習生は,薬局間連携実習について実務実習開始前に説明を受けた際には,不安を抱えていた様子だったが,終了後に聴取した感想は,「協力薬局での,実習日ごとの学習内容が示されていた(表1)ことで,3日間とも緊張感を持って臨むことができた」,「実習先(受入薬局)では経験できない疾患の経験は貴重だった」,「この実習は今後も続けたほうが良い」など意欲的に取り組めたことが伺えるものが多かった.さらに,「できればもう1日実習して,より多くの服薬指導を体験したかった」,「協力薬局で学習する薬について,受入薬局の薬剤師さんからもアドバイスをいただけた」などのコメントも得られ,協力薬局と受入薬局の両方で,実習生の意欲を促す指導が行われたことを知ることができた.また,受入薬局でも1疾患に対して医薬品学習リストを使用し,指導薬剤師からの指導を受けたことで,協力薬局で行う服薬指導の内容などを受入薬局での実習中にイメージできた,との意見が複数の実習生から挙げられた.これらの薬局現場での尽力が実習生の学習意欲の向上に好影響を与えたことは,指導薬剤師の創意工夫や熱意が実習生の姿勢に与える影響が大きいとする報告10) と一致している.
薬局間連携実習は,実施する日数を増やすことでさらに成果が上がることも期待できる.対象とした疾患の服薬指導を,Day 3に体験できなかった2名は,ともにDay 3が雨天のため来局患者が少なかったためで,予備日の設定が必要とも考えられた.しかしながら,日数が3日間を超えると協力薬局の負担が増すため,参加する協力薬局が少なくなる恐れがあるとの意見が,協力薬局および受入薬局の双方から出されていた.実習日ごとの指導項目(表1)の内容を,受入薬局での修得と併行して協力薬局で体験できる日程が望ましいと考え,Day 1を第3~4週頃に設定した.実習日の間隔は,実習生がDay 1までの準備が上手くできなかった場合も,Day 2までの約3週間で受入薬局での学びを続けながら挽回する時間があること,協力薬局の指導薬剤師は,実習生のレベルや個性に合わせた指導方法を再考する時間を持てることも考慮し設定した.その結果,受入薬局と協力薬局の指導薬剤師が,相互に連絡を取り実習生の情報を共有しながら実習を進めたケースもみられた.今後ガイドライン3) への理解が指導薬剤師に浸透することに伴い,薬局実習の早期からの服薬指導の体験が促進されることで,協力薬局でのDay 2の服薬指導例数が増加し,Day 3の服薬指導の質が向上することも期待できる.
さらに,協力薬局における実習の重点を服薬指導の体験に置くならば,実習の終盤に3日間程度で実施する方法も検討する必要がある.実習生と協力薬局の指導薬剤師の双方から,「薬局実習後半に1週間隔で3日間実施するのも良いかも知れない」との意見が出されていた.しかしながら,実習生の臨床対応の能力には個人差があることを考慮すると,本研究で試みた日程と学習内容は,より多くの実習生が,受入薬局以外の薬局で薬学的管理を体験することが可能な方法の一つと考えられる.
受入薬局の指導薬剤師と協働し,協力薬局として薬局間連携実習を経験した指導薬剤師の中には,この経験によって学生を指導することへの不安感が払拭され,次年度の薬局実務実習で受入薬局に名乗りを挙げた例もみられている.大学と地域薬剤師会が協力して,薬局間連携実習を行う薬局の選定や仲介を行うとともに,実習期間中も支援していくことで,薬局実務実習における代表的な8疾患の臨床対応の体験を充実させることが可能と考えられる.
薬局間連携実習に参画し,協力薬局ならびに受入薬局として学生指導を実施していただいた(一社)福山市薬剤師会,(一社)尾道薬剤師会の指導薬剤師の方々に深謝いたします.
発表内容に関連し,開示すべき利益相反はない.