Japanese Journal of Pharmaceutical Education
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Special Topics | Let’s think together! What to do deal to “Problem” student? -Everyone should recognize each other’s diversity
Recognition and tolerance of personality diversity in practical training
Yoko Hibi
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2022 Volume 6 Article ID: 2022-023

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抄録

社会は,思考方法や行動様式が異なる様々な人が混在して成り立っている.環境を認識する方法や思考の癖が異なる人同士が関わりを持った場合,それぞれが持つ「常識」の違いから摩擦が生じることも往々にしてある.長期実務実習では年間何人もの実習生が11週の長期間「職場という共同体」に滞在する.彼らの興味も行動様式も様々で,指導薬剤師の「こうあるはず・こうあるべき」の範囲を外れた個性を持つ実習生に出会ったとき,「でら(※名古屋弁で「非常に」の意)困った!」ことになる.病院では,病棟実習など実習生が特定の薬剤師に長期間指導を受ける場合に問題が発生しやすい.担当する薬剤師によって仕事の進め方や大切にしていることも様々なので,実習生と指導薬剤師の組み合わせは重要である.本総説では多様な人間同士が認め合い協働する方策を考える題材として,多くの指導薬剤師が「でら困った」経験をしている実務実習をとりあげる.

Abstract

Society is made up of a mixture of people with different ways of thinking and behavior. When people with different ways of recognizing the environment and the habit of thinking are involved, friction often arises from the difference in “common sense” that each has. In the long-term practical training, many students stay in the “community of workplace” for 11 weeks. Their interest and the action style are various, and when it meets the student who has the individuality which deeds the range of pharmacist’s “It should be so and it should be so”, it becomes trouble. In hospitals, problems are likely to occur when students, such as ward training, receive long-term guidance from a specific pharmacist. The combination of students and supervising pharmacists is important because there are various ways to proceed with work and what is important depending on the pharmacist in charge. In this review, practical training that many pharmacists have “troubled” experience as a subject to think about measures for various human beings to recognize each other and collaborate.

序論

薬局・病院でそれぞれ11週間の長期実務実習が始まり,早くも10年が経った.毎年,多くの実習生が臨床現場を訪れ,薬剤師その他の医療従事者と共に時間を過ごす.以前の,希望者のみが1~2週間程度行う実習は薬剤師免許取得に必須ではなく,自分の常識の範囲から外れた学生がいたとしてもすぐに通り過ぎていっただろう.しかし現在の実務実習では薬剤師免許取得を目指す全ての学生が必ず臨床現場を訪れ,11週の長期間「職場という共同体」に滞在する.安定して業務を遂行していた共同体に「自分たちのルールから外れた」思考方法や行動パターンを持った実習生が入ってくるのである.実習生の数だけ個性があり,指導薬剤師が「こうあるはず・こうあるべき」の範囲を外れた個性を持つ実習生に出会ったとき,「困った!」ことになる.そのような状況下で,実習生とのコミュニケーションに戸惑いつつ国から提示された実習カリキュラムを達成しなければならないと考える薬剤師の悩みは深い.一方で,薬剤師にもその数だけ個性がある.実習生の方から見ても同様に,初めての臨床現場で,自分と認識が異なる薬剤師に戸惑い,萎縮して「困った!」ことになっていたりもする.両者のコミュニケーションが破綻すると,実務実習で学ぶ利点は大きく損なわれてしまう.多様性の共存「インクルージョン」が進められる現代社会において,自己と他者の違いを認め合い協働することは実務実習において重要である.

「インクルージョン」とは,多様な人々が,それぞれに特有の経験やスキル,考え方を認め合い対等に関わりながら一体化している状態を言う.昨年行われたオリンピック東京2020では3つのビジョン「すべての人が自己ベストを目指し(全員が自己ベスト)」「一人ひとりが互いを認め合い(多様性と調和)」「そして,未来につなげよう(未来への継承)」が掲げられていた.このビジョンは全く実務実習においても重要なことである.薬学生の臨床実務実習では多様な実習生と多様な薬剤師が関わり合いながら将来の薬剤師を育てている.それゆえ個性の違いによる摩擦も生じやすく,それが薬剤師の実習に対する負担感にもつながっている.2021年に行われた第6回薬学教育学会学術集会のシンポジウムでは,「みんなで考えよう!でら困った学生」と題して3人のシンポジストが実務実習を題材に人間の多様性とインクルージョンについてディスカッションを行った.

シンポジスト1:日比陽子(名古屋市立大学・西部医療センター)

「実習生はみんな違う」

シンポジスト2:藤堂恭正(スギヤマ調剤薬局御器所店)

「多様性をみとめあう薬局実務実習」

シンポジスト3:大里洋一(国立がん研究センター中央病院)

「性格の違いをとらえた教育活動」

本総説では,このシンポジウムに基づいて,主に筆者が担当した病院実習での取り組みについて紹介し,藤堂先生のご講演にも触れたいと思う.大里先生のご講演については,ご自身の総説にて詳しく述べられている.

実習生はみんな違う

長期実務実習の開始当初は大学も受け入れ施設も勝手がわからず右往左往していたが,今では実習生がいることが日常になりつつある.今年も,施設を次々と訪れる実習生達と共に日常業務を行う.彼らと良い関係を築いて満足のいく実習ができることもあれば,どう対応したらよいか分からず困ってしまうこともある.この総説シンポジウムでは,「なぜ,実習生に困ってしまうのか?どうしたら,有意義な実務実習を行えるのか?」について考える.この場合,実習指導時の「困った」にも,知識や技能のばらつきで均一な指導ができないことや身体的配慮が必要な場合など様々な状況が考えられるが,今回の総説では,個々人の認識や常識の違いによるコミュニケーションの摩擦に焦点をあてて考える.

困った事態の要因として今回提示するのは,

1.医療現場と実習生の常識の違い

2.実習生の性格の多様性

である.まず,3つの事例を挙げて医療現場と実習生の常識の違いについて考えてみたい.

困った要因その1:医療現場と実習生の常識の違い

事例1:

(薬剤師)8時半から開始と言ったらぎりぎりに施設に来た!

(実習生)8時半から開始と言われたから8時半に来ました.

事例2:

(薬剤師)病院の電源でヘアアイロンを使うのはダメ!

(実習生)ダメですか?

事例3:

(薬剤師)病院のPCで就職活動など他事をしてはダメ!

(実習生)行動を制限された!

こうした事例は,受け入れ施設側としては「社会的マナー」であり実習生にとっても当然常識であると思われがちなので,往々にして「大学は何を教えているんだ!」と怒ることになる.しかし,学生である彼らの常識は社会人と異なるものであることを認識して,してはいけない理由から具体的に説明すれば問題は大きくはならないと考えられる.先の3つの事例について,指導の仕方を変えてみる.

事例1:

(薬剤師)8時半から開始だから,それにまでに準備が整うように15分前には来ること.

事例2:

(薬剤師)病院の電気だから私用に使わないでください.またヘアアイロンは実習に必要ありませんね.

事例3:

(薬剤師)ネットセキュリティー上問題があるため,病院のPCは業務に関係ないことに使ってはいけません.

上記のような説明をすることで,実習生も納得をして指示に従うようになった.集団的背景が異なる相手にはできる限り詳しく説明することで誤解を回避することが可能となる.さらに,実習生が処方箋やカルテ情報を勉強のために自宅に持ち帰らないよう,患者情報保護など臨床現場として見逃せないルールは特に,実習の最初にきちんと示しておくべきである.患者情報保護や医療安全管理など重要かつ認識のずれが起こりやすいものについては,スモールグループディスカッションによって実習生自身に考えさせた上で解説や補足説明を行うとより納得するようになる.

藤堂先生のご講演では,このような医療現場と実習生の常識のズレを埋めて実習生の行動変容を促す取り組みが紹介された.小児臨床アレルギー学会認定小児アレルギーエデュケーター(Pediatric Allergy Educator, PAE)の資格を取得された藤堂先生は,PAEが持つ行動科学的技法(動機付け面接,行動療法,カウンセリング技法)を用いて,治療がうまくいかない「困った」患者を行動変容へと導く指導を実践している.「困った」患者というのは,患者の価値観と医療者の価値観の相違からブロッキング(相手の気持ちや本当に伝えたいことを聞くのを妨げる自分の気持ち)を起こすことにより医療者が「困った」と感じていることが多い.PAEではカウンセリング技法を用いて患者の価値観を聞き出すことで真の問題点を明らかにし,その問題点に対し動機付け面接や行動療法などの技法を用いて適切な治療ができるよう患者を行動変容へと導き,治療を軌道に乗せていく.来局ごとにその結果を評価し,介入方法を修正していく.これを繰り返して患者と共に治療の目標へ向かっていく.藤堂先生は,このPAEとして培った指導スキルを実務実習に応用できないかと考えて実践して来られた.実習生には皆それぞれの個性があり,時には「困った」と感じることもある.そのようなケースでは学生の行動を「普通はこうあるべき」「言わなくても普通わかるでしょ」などと捉えてブロッキングを起こしていることが多い.実習生と指導薬剤師との間の価値観の対立である.「困った」ケースに対しては,カウンセリング技法を取り入れて実習生の話を関心を持って受け入れながら聞くことで,実習生の気づきを促し行動変容につなげていた.この方法は実習生を受け入れるコミュニケーションをとることで信頼関係を形成しやすくなることも利点である.

困った!の要因その2:実習生の性格の多様性

次に,実習生の性格の多様性について考えてみよう.大勢の聴講者全体に向けた講義の場合,一律に話をして集団全体からの大まかな反応を見るため,個々の性格の影響は表れにくい.しかし臨床実習では,実習生と指導薬剤師が至近で対峙しコミュニケーションをとる.従って其々が持つ「常識」や「認識」や「行動パターン」が両者の間でずれた時,トラブルが発生する.

図1のように,実習生も指導薬剤師も多様な性格を持っている.両者の組み合わせによっては,順調に行く場合も破綻する場合もあることは想像に難くないだろう.近いタイプを組み合わせた方がスムーズに実習が遂行されるが,それが難しい時,異なるタイプの組み合わせの場合には,指導薬剤師の客観性や包容力が頼りになる.

図1

実習生も指導薬剤師も性格が様々

以下に3つの事例を提示して,実習生の多様な性格と実習で起こりうる問題を回避するマッチングについて考えてみる.

1. 事例1:最初は問題学生だと思われたが

「落ち着きがないと思われた実習生A.私は,薬剤師Bが中央業務実習で説明をしているときにAがゴソゴソして集中して聞いていなかったと報告を受けた.Bはその実習生を叱り,『不真面目・要注意学生!』と認識した.しかしAはその後,病棟配属で病棟担当薬剤師Cと出会い,飄々としたCを尊敬し楽しそうに実習に取り組んでいた.」

この事例から私は,「困った学生」の要因は実習生個人にあるのではないことを学んだ.同じ実習生であっても指導薬剤師によって持つ印象は異なるし,実習生の側も実習への取り組み方が変わるのだ.

2. 事例2:人と対するのが苦手な実習生

「自信がなく,患者さんと話すのが苦手な実習生.病棟担当指導薬剤師ともうまくコミュニケーションがとれない.薬剤師も実習生への対応に困ってしまった.大学教員と薬剤部教員で相談して,実習生と病棟薬剤師のそれぞれと個別に話し合いをした結果,実習を欠席はせず,1日1件だけ患者面談を行い(または見学し)それに基づき実習生控室で自習するという形で実習を修了した.」

これは実習生の気質に配慮した仕方のない対応だったのだろうか.もっと早く介入していたら状況は違ったかも知れない心残りのある事例である.

3. 事例3:要注意と言われていた実習生

「大学での授業態度が不真面目に見えた学生で,大学からは実習にも真面目に取り組まないかも知れないと心配されていた.この実習生には強い雰囲気と学習力の高さを感じたため,同様に強く知識が豊富な薬剤師が担当する重症病棟(高度な学習力と対応力が必要とされる)に配属した.するとこの実習生は病棟担当薬剤師の助けを借りて他職種との意見交換や薬物治療への提案を積極的におこなっていた.患者のために懸命に悩み考える姿が印象的だった.」

この事例の場合,臨床現場での学習がこの実習生に合っていたとも考えられるが,実習生の強さに対応できる強さを持った薬剤師と組むことが重要であったと思う.経験の浅い気の優しい薬剤師であったら,薬剤師の方が圧倒されていたかも知れない.

マッチングは有効

実習生が「おっとりしたゆっくりタイプ」や「内気で自信がないタイプ」である場合,図2のように「仕事を効率よく進めたいタイプ」や「理想が高く自己にも他者にも厳しいタイプ」の薬剤師を担当にすると,実習生の学習スピードが指導に追い付けず,実習生が自信を無くしてしまうこともある.さらに指導薬剤師が思うように業務が進まないことや実習生の態度に苛立つと,それを感じた実習生がさらに委縮する負のスパイラルに陥る可能性もある.一方で,図3のように,「おおらかで優しいタイプ」の指導薬剤師が担当となった場合には,実習生は自分のペースに合った学習方法で成長し,自信をつけて実習を終えることができる.このように【事例2】の実習生の場合は,指導薬剤師のマッチングによってはよりスムーズに実習指導ができたかもしれない.

図2

マッチングが合わない場合

図3

マッチングが合う場合

実習では,対立が起こるとそれを解消するには時間も足りず両者共にストレスを抱え,実習生は学びや経験が不十分となったり,指導薬剤師は業務遂行に影響が出る.最悪の場合実習中断にも至る.そのような状況を避けるために両者の性格を踏まえたマッチングを行うことは有効であると考える.

しかしマッチングの方法による実習生の多様性を踏まえた実習遂行の方法には問題点もある.薬剤師数が少ない施設では,実習生と指導薬剤師の性格を踏まえたマッチングはできない.また,マッチングは第三者による観察を基に人間関係を調整することであって,観察者の感覚に依存するところも不確実な部分である.

実習生を観察すること

病棟薬剤師とのマッチングを行うためには,実習生を観察することから始める.実習初期の中央業務実習の指導を行いながら以下のような点に注目して実習生を観察する.

・行動

・話し方

・実習への取り組み方

・外向的か内向的か

・他者とのかかわり方

そして,相手を受容しやすい組み合わせとして,その実習生と似た雰囲気の薬剤師を病棟実習の担当とする.

一方,指導薬剤師も自分の考え方の癖(自分はどのように考えて行動しがちなのか?)を客観的に見ることができ,相手の実習生はどのような考え方をする人なのか?を観察できれば相互理解が進むだろう.指導薬剤師が各々の違いを踏まえて実習生に対応すれば,コミュニケーションが改善され実習生に合った学び方を促すことができると考える.

薬剤師教育

この総説でお話しているようなマッチングの取り組みは,実習生と薬剤師の性格を見て,互いを理解しやすい組み合わせにすることで摩擦を減らす方法である.多くの薬剤師の「常識」からの振れ幅が大きいと思われる実習生の場合には,柔軟に対応できる薬剤師を組み合わせる.【事例1】の薬剤師Cがそれに相当する.この「柔軟に対応できる薬剤師」は経験が豊富で許容範囲が広く,おそらく経験的に認知システムが人によって異なることを理解していて,個々の性格に合わせて対応している.薬剤師がこのようなスキルや技術を獲得していれば,マッチングに依らず,それぞれの薬剤師が担当実習生の個性を認識して彼らの能力を伸ばすような教育を行うことができるだろう.現在の薬剤師の多くは心理学やコミュニケーションに関する十分な教育を大学でも職場でも受けておらず,自分の認識の方法と他者の認識の方法の違いが対等のものであることやその違いへの対処スキルを持ち合わせていない.こうしたことはコミュニケーションに興味のある一部の薬剤師が自己研鑽として学んでいると思われる.もっと一般的に,例えば新人教育の一環として心理学・コミュニケーション学を学ぶ機会があれば実習生指導スキルも向上するのではないだろうか.大里先生の総説は,薬剤師教育について論じていて,このような性格分類をユング心理学に基づいて行い,自己理解・他者理解によって論理的に他者との認知システムの差異を知ろうというものである.薬剤師側が人間の認知システムの多様性を理解することで様々な個性の実習生に対して許容範囲が広がることが期待される.

考察

実習生と指導薬剤師の関係に問題が生じると,実習の遂行に支障が生じて十分な学びや経験を積む機会を逸し,パフォーマンスを評価する概略評価にも影響がおよぶ可能性がある.「困った実習生」という結果に至った事例の一部が指導薬剤師と実習生の認知方法や行動パターンのすれ違いにより生じていたら非常に残念なことである.

実習生指導を担当する薬剤師は,それぞれ仕事の進め方や大切にしていることも様々なので,実習生と指導薬剤師の組み合わせを調整することで摩擦を減らすことができる.この場合は,できる限り雰囲気やペースが似ている者同士を組み合わせたほうが,指導薬剤師も指導しやすく実習生とも良い関係を築いている.マッチングは指導薬剤師が自分と異なる認知システムを持つ実習生に柔軟に対応するスキルが十分でない場合には特に有効である.教育の場では,1997年にAron & Aronらによって提唱された「感覚処理感受性の高い人(highly sensitive person: HSP)」1) の概念も近年知られており,日本でも研究が行われている2).15%存在するとされるHSP気質の人は周囲の状況や相手の感情を敏感に感じ取り悩んだり落ち込んだりしやすい.実習生がこの気質を持っていた場合は一層,指導を受ける薬剤師や実習環境の影響は大きく,マッチングの有効性は高いと考えられる.指導薬剤師が戸惑うかも知れないと思われる場合には,指導薬剤師と実習生の両方に適宜声掛けして様子を確認しアドバイスをするなど,第三者の立場で薬剤師と実習生の間を取り持つ存在がいることもコミュニケーションを円滑にするために有効である.

実習は短期間であるから,認識方法や行動パターンが似ている実習生と指導薬剤師同士をマッチングすると戸惑いが少なくコミュニケーションをとれ,直近の摩擦を回避することでストレス無く満足する学びにつながる.ただ,より長期的に続く職場のチームを考えると,同じような認識方法・行動パターンを持つ者を集めると成長が遅いかもしれない.得意なことと苦手なことが同じ集団であると業務遂行に支障が出るかもしれない.職場チームにおいては,個々人が自分の認識や行動の癖を知り,他者は自分と異なる認識法や発想,行動の癖を持つことを知ることで,自他の違いに寛容になるとともにそれぞれの得意を活かし真に助け合って発展できるのではないかと考える.

最後に,マッチングの情報とするためにも,担当薬剤師が実習生とコミュニケーションをとる上でも,大切なのは肯定的な目を持って実習生を観察することであると思う.この人はどんなペースで行動し何に興味を持っていて,何が苦手なのだろうか?と.これは藤堂先生の講演内容に有ったカウンセリング技法,1.相手に関心を持ち,2.相手の言葉を受け止め,3.こちらの理解が合っているか確認する,にも通じることである.人より薬に興味がある実習生もいるし,感情が苦手で理論で考えるのが好きな実習生もいる.それは良し悪しとは無関係に「そういう学生である」と受け入れるべきものである.指導薬剤師が実習生に伝えたい理想や思いはあるとしても,実習生の興味や性格によって彼らが臨床現場での経験から得るものは異なるので,実習生それぞれが経験を将来の勉強や仕事の動機にしてもらえれば良いと思う.

多様な実習生の個性を楽しみながら,それぞれ違ったペースで学び成長していく彼らの姿を見守り,可能なら彼らの興味を伸ばす介入ができたら良いであろう.実務実習は,将来の医療を担う人材に学びと経験を与え,彼らが将来を選択する動機ともなる重要な教育である.それは指導薬剤師達にとってもまた成長の機会となるに違いない.

発表内容に関連し,開示すべき利益相反はない.

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