薬学教育
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誌上シンポジウム:地域の健康支援活動を薬学教育へどう取り入れるか
地域薬局での地域住民への健康支援活動について
富永 由美
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2025 年 9 巻 論文ID: e09038

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抄録

虹薬局南千里店は2017年に健康サポート薬局として申請し認定を受けた.社内の会議室を改装し,地域住民への健康支援活動ができるコミュニティスペースを造り,地域住民に対して「糖尿病教室」「骨粗鬆症教室」「認知症サポーター養成講座」「高血圧に対する減塩教室」など様々なイベントを開催している.新型コロナウイルス感染症が5類相当となった2023年5月,がん防災,糖尿病カフェ,フレイル対策の食事と運動教室,女性のためのヘルスケアカフェなどの様々な健康イベントを盛り込んだ「コミュニティファーマシーフェスタ」を開催した.当薬局がこれまでに開催した地域健康支援活動を紹介し,その意義について報告する.さらに,当薬局では薬学部の実務実習生を受け入れており,学生が地域住民への「健康教室」を企画,準備,開催することも実務実習の中に取り入れている.その事例も紹介し,その学習効果などについても考察したい.

Abstract

Niji Pharmacy Minami-Senri Branch was designated a health support pharmacy in 2017. As a result, it added an in-house meeting room to create a community space for their health support activities. Some interactive classes held for community residents included topics on diabetes, osteoporosis, dementia support training, and salt reduction for hypertension. The pharmacy also had a “Community Pharmacy Festa” in May 2023 to promote various health events, including cancer prevention, a diabetes café, a diet and exercise class for frail, and a women’s health café. Furthemore, the pharmacy hosted pharmacy students who planned, prepared, and delivered some of these classes to community residents as part of their practical training. This paper summarizes this case study and discusses its learning impact on the pharmacy, students, and the community.

 はじめに

2013年6月に日本再興戦略が閣議決定され,予防・健康管理の推進に関する新たな仕組みづくりとして「薬局を地域に密着した健康情報の拠点として,一般用医薬品等の適正な使用に関する助言や健康に関する相談,情報提供を行う等,セルフメディケーションの推進のために薬局・薬剤師の活用を促進する」という内容が盛り込まれた1).2016年,薬機法が改正され「健康サポート薬局」の認定制度が開始,患者が継続して利用するために必要な「かかりつけ薬剤師・薬局の機能」に加え「国民の主体的な健康の保持増進への取組を積極的に支援する機能」が求められるようになった.しかしながら,全国で3,188件(2025年3月31日時点)と健康サポート薬局の認定数はまだ少なく,国民からの認知度も低い状況が続いている2).

虹薬局南千里店は2017年に健康サポート薬局としての要件を満たし申請,認定を受けた.社内の会議室を改装し,地域住民への健康支援活動ができるコミュニティスペースを造り,地域住民に対して「糖尿病教室」「骨粗鬆症教室」など様々なイベントを開催していた.しかしながら,新型コロナウイルス感染症の感染拡大により4年間は地域住民に対する健康イベントを開催することができなかった.2023年5月に,新型コロナウイルス感染症が2類相当から5類相当へ移行したのを機に,日本コミュニティファーマシー協会等の協力も得て,がん防災,糖尿病カフェ,フレイル対策の食事と運動教室,女性のためのヘルスケアカフェなどの様々な健康イベントを盛り込んだ「コミュニティファーマシーフェスタ」を開催した.今回当薬局がこれまでに開催した地域健康支援活動を紹介し,その意義について考えたい.

さらに,当薬局では薬学部の実務実習生を受け入れており,地域住民への「健康教室」の企画,準備,開催することも実務実習の中に取り入れている.その事例も紹介し,その学習効果などについても考察したい.

 薬局紹介

虹薬局南千里店は大阪府吹田市阪急南千里駅前にある薬局である.

大阪府吹田市は,1970年に日本万国博覧会が開催された市であり,日本最初の大規模ニュータウンとして開発された千里ニュータウンがあり,大阪大学医学部付属病院や国立循環器病研究センター等医療機関も多く健やかでこころ豊かに暮らせる健康・医療のまちと言われている3).

この千里ニュータウンの中心部に当薬局はあり,2011年10月無菌調剤室を併設した薬局として開局した.近隣に系列薬局が2店舗営業している.

処方箋調剤,無菌調剤,在宅訪問の他,OTC医薬品や化粧品,健康食品,日用品等の販売にも力を入れており,薬局の店頭には「緊急避妊ピルあります」「更年期,月経,妊娠,不妊,出産産後のことご相談ください」と記載した幟(図1)を立て,緊急避妊薬を取り扱うことのできる薬局であることも告知している.現在厚労省が実施している「緊急避妊薬販売に係る環境整備のためのモデル的調査研究」の薬局ではないが,相談があれば紹介状を用いて近医を紹介しオンライン診療等に対応できるように常に準備している.

図1

薬局店頭の幟旗

コロナ禍においては,ワクチン接種の予約支援や,ワクチン接種後の副作用フォローアップ,解熱鎮痛剤や咳止めなどOTC薬や抗原検査キッドの販売,新型コロナウイルス経口治療薬対応薬局として,患者宅への薬のお届けや服用後のフォローアップ,無症状者に対する新型コロナ無料検査事業所,大阪府による若年軽症者に対する抗原定性検査キッド無償配布事業協力薬局として取り組んだ.

当薬局での地域住民への健康支援活動の開催概要は下記のとおりである.

目的:健康サポート薬局として,日頃薬局を利用している地域住民に対し自身が主体的に健康の保持増進できることを支援するための情報を,顔馴染みの薬局薬剤師,スタッフがわかりやすく提供し共に学ぶこととする.

開催時間:土曜日などの午後90分程度(14時~15時半など)

テーマの選定:薬剤師や管理栄養士,医療事務など薬局スタッフが,季節や時勢などを考慮しテーマを選定する.神戸薬科大学エクステンションセンターが2016年4月に発行した「健康ガイドブック(毎日の健康管理と健康長寿への豆知識)」も参考とした.

集客方法:健康イベントの案内状(チラシ)を作成し,薬局店頭に掲示し,ターゲットとなる薬局利用者に対して,馴染みの薬剤師や薬局スタッフが直接配布し案内した.薬局の公式ラインからも告知した.

参加人数:会場スペースと対話しやすい人数ということで定員を10名前後と設定している.

イベントの内容:講師による講義(約30分)に加え,テーマに沿った食事や運動などの紹介,試食しながら講師や薬局スタッフとの質疑応答,ディスカッション(約30分)

講師の選定:薬局薬剤師,実務実習生,薬局に勤務する管理栄養士が主に担当するが,テーマによっては地域医療機関の医師や,地域包括センター職員などに講師を依頼した.

イベント資材や試供品の準備:製薬メーカーや医薬品卸などに依頼し,テーマに沿った患者向け資材や試供品を準備し参加者に紹介し配布した.

以下,実際に開催した地域住民への健康支援活動を紹介する.

 若い女性を対象とした健康セミナー「生理の悩み相談しよう」

講師:薬局薬剤師と淀川キリスト教病院産婦人科医柴田綾子先生

対象者:10代20代の女性とその保護者,実務実習生も参加した.

内容:産婦人科医による「普通の生理とは?異常な生理とは?生理痛やPMSへの対応について,ピルの効果や副作用について,こんな時は産婦人科受診を等」について講義,薬局薬剤師からは薬局で取り扱っている生理痛やPMSに関連するOTC薬や生理用品等日用品も紹介した.その後参加者と日頃の生理に関する悩みについて講師の医師や薬局薬剤師と情報交換した.産婦人科の医師に講師を依頼することで,若い女性にとって敷居の高い産婦人科受診を身近な存在になればという期待も込めた.参加者からは「生理のメカニズムや低用量ピルの使い方など知らなかったことが多く勉強になりました」「薬局が身近な存在に感じました.これから薬をもらう以外にも活用してみようと思いました」「薬局で売っている痛み止めや女性向けの商品についてよくわかった」「かかりつけ薬剤師を作ることが良いということがよく分かった」など感想が寄せられた.

 認知症サポーター養成講座

講師:近隣の地域包括支援センターに相談し,キャラバン・メイト(「認知症サポーター養成講座」を企画・開催し,講師を務めることのできる人)を講師として派遣依頼した.

対象者:地域の薬局利用者

内容:キャラバン・メイトからは,認知症に対する正しい知識と理解を持ち,地域で認知症の人やその家族に対してできる範囲で手助けする「認知症サポーター」の活動を紹介し,認知症についての正しい理解を深めるための講義を行い,薬局薬剤師はポリファーマシーについて講義した.

参加者には終了後認「認知症の人を応援します」という意思を示す「オレンジリング」が配布された.

高血圧セミナー「血圧に関する悩みお答えします(めざせ血圧マイスター. 味噌汁から家族の健康を考えよう)」(図2)
図2

薬局店頭で配布するイベント告知用チラシ

講師:実務実習生,薬局の管理栄養士

対象者:地域の薬局利用者

内容:参加者に家庭の「味噌汁」を持参してもらい,塩分濃度を測定,その結果をもとに管理栄養士が減塩のポイントなどについて講義した.実務実習生から,高血圧の身体への影響について,正しい血圧測定について,血圧コントロールのための生活習慣について講義した.最後には牛乳を入れた味噌汁など減塩レシピを紹介,参加者全員で試食し,高血圧や薬局の活用方法について意見交換した.

参加者へのお土産:減塩塩「ウレシオ®」の試供品,塩分1 g,100 kcalのレトルトカレー「マイサイズ®」の試供品,血圧手帳などを配布した(図3).

図3

イベント参加者へのお土産(高血圧セミナー)

 ロコモセミナー「ロコモティブシンドロームを知ろう」

講師:実務実習生,管理栄養士

対象者:地域の薬局利用者

内容:医薬品卸に協力を依頼,器材を貸し出してもらい,握力測定,立ち上がりテスト,歩幅チェックなどロコモ度チェックを行った.その後,実務実習生からロコモ度チェックの解説,ロコモ予防体操の紹介,管理栄養士からロコモ予防のための骨や筋肉を強くする食事を紹介した.セミナー開催にあたっては,公益財団法人長寿科学振興財団の健康長寿ネットや日本整形外科学会のHPを参考とした.

 糖尿病セミナー「糖尿病の薬について考えよう」

このセミナーは企画から全て実習生考えた.企画にあたっては前述の神戸薬科大学エクステンションセンターが発行した「健康ガイドブック」を参考とした.

講師:実務実習生,管理栄養士

対象者:糖尿病薬を服用している薬局利用者

内容:実務実習生からは,糖尿病の病態や合併症,参加者が服用している薬の作用機序や副作用について,低血糖について,低血糖時の対応について等クイズを交えながら講義した.クイズは「痩せているので糖尿病にはならない?」「糖尿病の治療は薬だけである?」など「〇」「×」で回答できるものを考えた.

薬局で販売している「もっちり麦®」「マイサイズ®」「養命酒製造の黒酢®」「賢者の食卓®」「ドクターズチョコレート®」など紹介しを試食も用意した(図4).

図4

糖尿病セミナーでの試食メニュー

セミナー開催後実習生から「糖尿病の病態について出来るだけわかりやすいように考えたが,言い回しから誤解を生じる表現になったことは反省すべき点であった.患者さんの中でも知識の差があり,間違った理解をしている人もいることも分かった.このような地域住民へのイベントを通して正しい知識を使えることの重要性も学んだ」と報告してくれた.

これらのセミナーはコロナ前であり,地域住民と一緒に,試食やゲームなど交えたリアルで楽しい健康支援活動が開催できていた.しかし,新型コロナウイルス感染症の感染拡大により4年間は地域住民に対する健康支援イベントを開催することができなかった.

2023年5月に,新型コロナウイルス感染症が2類相当から5類相当へ移行したのを機に,日本コミュニティファーマシー協会等多くの協力も得て,がん防災,糖尿病カフェ,フレイル対策の食事と運動教室,女性のためのヘルスケアカフェなどの様々な健康イベントを盛り込んだ「コミュニティファーマシーフェスタ」を開催したので紹介する.

 演劇 × カフェ型健康教室「糖尿病編」

和歌山県立医科大学薬学部教授岡田浩先生と,プロの劇団「劇団衛星」の俳優の協力を得て,地域の参加者と一緒に糖尿病にまつわる「こんなときどうする?」を一緒に考えるワークショップである.

俳優が「打ち上げに誘ってくれた同僚に自分が糖尿病であることを打ち明けるかどうか悩む」という内容をコント形式で演技する.それを観た参加者が打ち明けるかどうかを各自考えイエス/ノーカードで示し,その理由についてグループで話し合う.その後それぞれのグループで生活の中でどのようなジレンマがあるか話し合い,そのシーンをグループで考え即興演劇で発表した.ワークショップの様子(図5)を劇団責任者の掲載許可の下,紹介する.

図5

演劇 × カフェ型健康教室「糖尿病編」の様子

参加者からは「問いかけに対して,イエスかノーかと自分たちも考えて参加する.その上,劇を見るのではなく参加して色々な状況を考えて演じる.グループワークもあり楽しかった」「初めて会う方と自分達でストーリーを考えて演じる経験は初めてで,とても楽しかった」「多様な考えがあり,常にジレンマに囲まれていることを理解出来た」「側にいた方と,いろいろ情報交換ができて視野が広がったこと.寸劇のテーマは良かった」など楽しくて学びがあったと高く評価された.

 現役世代こそ備えておきたい「がん防災」

一般社団法人がんと働く応援団の代表理事による「がん防災マニュアル大阪版」を用いて「がんは突然やってくる自然災害のようなものとして日頃から備えて,復興再建までの正しい知識と心構えを持つことが大事」といった講義を聴き,参加者と意見交換した.

同時に,アデランス株式会社の協力により,医療用のウイッグの展示や試着会,がんの患者用の下着の紹介,抗がん剤で傷んだ爪を保護するマニュキュアの紹介も行った.

「コミュニティファーマシーフェスタ」は,コロナ禍を経て久しぶりの住民参加型イベントだったこともあり,参加者の活発な情報交換や談笑ありと大盛況に終わった.

 まとめ

地域に根差した薬局が,いつもの馴染みの薬剤師が,地域の顔見知りの住民に対して,正しい健康情報をわかりやすい言葉で丁寧に伝えていくことは,テレビやインターネットなど様々な情報があふれている現在の社会の中で,安全で安心して暮らせる地域づくりに貢献できるのではないかと考える.

「薬剤師は,薬局を舞台として地域のために何をやっても構わない」そのように薬局を位置付け,今後も,健康情報,医薬品の適正使用,セルフメディケーション支援等情報発信に取り組んでいきたい.

実務実習生は薬局実習として健康支援活動を企画開催し,自ら考えた健康情報を地域住民に直接伝え,その感想や意見など住民と対話するという体験から,薬局内だけではわからない住民の悩みや考えを理解し,今後必要とされる地域に密着した健康情報の拠点としての薬局の役割や意義について具体的に理解できたのではないかと考える.

発表内容に関連し,開示すべき利益相反はない.

文献
 
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