日本公衆衛生看護学会誌
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研究
市町村保健師が行う保健推進員への支援内容
渥美 綾子安齋 由貴子
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2022 年 11 巻 1 号 p. 27-36

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Abstract

目的:市町村保健師(以下,保健師)が行う保健推進員への支援内容を明らかにする.

方法:保健推進員への支援経験がある保健師13名に半構造化インタビューを行い,質的帰納的に分析した.

結果:保健師が行う保健推進員への支援内容は,[保健推進員の活動方針や活動内容への理解を促すための支援],[保健推進員活動への意欲を高め,活動を継続できるための支援],[保健推進員が活動を主体的に行えるための支援],[保健推進員の活動環境を整えるための支援]であった.

考察:住民が保健推進員として就任した後,保健師は保健推進員活動を理解して活動ができるように支援していた.そして,保健推進員が活動を意欲的に行い,最終的に保健推進員が主体的に組織として自立して活動ができるように支援していた.また,地域の関係者や行政組織内の調整を行い,保健推進員の活動が円滑にできるように支援していることが示唆された.

Translated Abstract

Purpose: This study aimed to understand the support provided by public health nurses (PHNs) to community health promotion workers.

Methods: Semi-structured interviews were conducted of 13 PHNs with experience in supporting community health promotion workers. The interview data were analyzed qualitatively and inductively.

Results: The support provided by the PHNs included “support in understanding the policies and details of the activities of community health promotion workers” “support of the work by improving workers motivation to perform health promotion activities” “support of community health promotion work performed independently” and “support to create an environment for the work of community health promotion workers”.

Discussion: After residents are appointed as community health promotion workers, PHNs help them engage in and perform their activities by ensuring that they understand the work expected of community health promotion workers. They also provide active support to help workers independently perform their activities within the organization. The findings confirm the support provided by PHNs to community health workers and the importance of such support in ensuring smooth performance of their activities.

I. 緒言

日本における保健推進員の活動は,1949(昭和24)年の「国保保健施設拡充強化に関する通知」により,市町村における保健指導のための住民組織として,「保健補導員」の設置を求めたことにより始まった(厚生省,1949).これは組織活動を通じて自らの健康意識を高めていくことを目的とし,地域に広め,地域全体で健康な社会を築きあげようとする組織である(厚生省,1949).名称は保健補導員,保健委員,保健推進員,健康推進員,健康づくり推進員,衛生指導員等地域により異なる(和田ら,2010)(以下,保健補導員,保健委員,保健推進員,健康推進員,健康づくり推進員,衛生指導員を保健推進員とする).近年では,都市化の進展や住民の生活スタイルの変化に対応した共助の体制の再構築を目指して,その核となる人材の育成等に関し,国,都道府県,市町村が取り組むことがさらに求められている(厚生労働省,2012).2012(平成24)年3月に取りまとめられた地域保健対策検討会報告書では,今後の地域保健対策のあり方として,地域に根ざした信頼関係や社会規範,ネットワークといった社会関係資本等(以下,ソーシャルキャピタル)の核となる人材の育成等を通じて地域住民の共助活動の活性化を図ることが重要であるとされている(地域保健対策検討会,2012).以上の背景により,これまでに増して,保健推進員等のソーシャルキャピタルの核となる人材により,地域における健康づくりに関する共助の取組が進められている.

保健推進員は近隣関係を核に同一行政区内で,地域の生活や健康課題へ対処するために組織されている(小山,2006).その活動内容は健康診査の受診勧奨や健康診査場面での協力,行政区長・民生委員等と連携を図りながら地区の実情にあった活動計画を立て,地区活動の実践等を行っている(大森,2015佐藤ら,2013).これらの活動を展開している保健推進員への支援は,主に市町村保健師(以下,保健師)が担っている.保健師は,保健推進員の育成や研修,相談支援等を行い,保健推進員の活動経験者を増やし,地域への波及効果をねらい地域全体の健康のレベルアップを志向している(檀原ら,2010).

保健推進員の有用性に関する研究により,以下のことが明らかにされている.保健推進員経験者は望ましい健康行動を獲得すること(林ら,2018),未経験者と比較し入院医療費の発生者割合および発生した医療費ともに低いこと(今村ら,2017),保健推進員の家族もまた,食事や食生活の習慣を改めることが報告されている(山本ら,2002).これらのことより,保健推進員自身や家族の生活習慣の改善,ひいては医療費の削減にも貢献できる可能性があると考えられる.

また,保健師が行う保健推進員への支援に関する研究では,保健推進員への活動の説明内容,保健推進員の主体的な活動のために保健師のサポートや話し合いの重要性等の結果が示されている(檀原ら,2010中田ら,2013山谷ら,2016).

一方,地域保健に関わる住民組織には,保健推進員以外に食生活改善推進員,健康づくり推進員,母子保健推進員,愛育班等がある(田口ら,2019).しかし,田口ら(2019)は,これら4つの組織の中で,市町村において育成・支援マニュアルがある組織の割合が最も低いのが,保健推進員であることを報告している.さらに,住民が保健推進員に就任してから保健推進員として活動できるようになるための具体的な保健師の支援について明らかにする研究は行われていない.

そこで,本研究では,住民組織の中でも保健推進員に焦点をあて,保健師が行う保健推進員への支援内容について明らかにすることを目的に行った.保健師の保健推進員への支援内容を明らかにすることにより,保健師が保健推進員への支援を行う際に,具体的な支援内容の理解に基づく意図的な支援が可能となる.それは保健師の保健推進員支援への力量を高めること,ひいては保健推進員への効果的な支援によって,保健推進員自身や家族,地域への波及効果を高めることにつなげられると考える.

II. 研究方法

1. 研究デザイン

半構造化面接調査による質的記述的研究とした.

2. 用語の定義

保健推進員:市町村長から委嘱状の交付を受け,地域住民の健康の保持および増進を推進することを目的として活動する者とする.保健推進員は,市町村長から委嘱がある市町村と委嘱のない市町村がある.委嘱があることで保健推進員は市町村職員に準じることとなり,保健推進員の責任が生じ,その責任に対する保健師の支援が行われていることが推測され,委嘱がない保健推進員とは異なる可能性があることから,本研究においては委嘱のある保健推進員とした.

保健師:市町村に勤務する保健師とする.

支援内容:保健推進員に行われた保健師による支援の内容とする.保健推進員に直接的に支援している内容だけでなく,保健推進員に間接的に支援している内容も含める.

3. 研究協力者

市町村に保健推進員を設置しており,保健推進員に委嘱状を交付している市町村に勤務する保健師とした.この市町村に勤務する経験年数3年以上の保健師で,保健推進員を支援した経験が1年以上あり,研究の主旨に同意した者とした.まず,施政方針に保健推進員の活動を掲げており,保健推進員の活動を雑誌等で紹介している自治体に勤務している保健師に協力依頼をした.その後のリクルートは機縁法とした.

4. データ収集

2017年3月から11月に,研究協力者に,半構造化インタビューを1名につき1回,1時間程度の時間で行った.インタビューの内容は,研究協力者の許可を得てICレコーダーに録音した.

データ収集内容は,属性として,年齢,性別,保健師経験年数,保健推進員の支援年数,研究協力者の所属する市町村の概要として市町村の人口を設定した.保健推進員については,選出方法,任期制の有無と年数,会員数,保健推進員への支援内容,保健推進員を支援するうえで大切にしていることとした.保健推進員への支援内容については,住民が保健推進員に任命され,活動していくプロセスを追いながら自由に語ってもらった.

5. 分析方法

録音データから作成した逐語録を繰り返し読み込み,語りの中から,保健師の保健推進員への支援内容に焦点をあて,コードとして抽出した.その際,保健推進員に直接的に支援している内容だけでなく,保健推進員に間接的に支援している内容もコードとして抽出した.コードの意味内容の類似性や差異性に着目し,比較検討を繰り返しながら,サブカテゴリー,カテゴリーへと抽象度をあげた.さらに,それぞれのカテゴリー間の関連を検討しながら,上位の概念である主要カテゴリーを抽出した.分析の際,データ,コードに戻ることを繰り返しながら分析を進めた.

分析は,信用性,確実性を確保するため,公衆衛生看護学の研究者及び質的研究に精通した研究者1名,保健推進員に関する研究を行いかつ保健推進員の活動を支援している研究者1名にスーパーバイズを受けた.また,研究協力者13名中,退職および産休等を除いた10名に郵便で分析結果を送付し,メンバーチェッキングを実施した.7名の研究協力者より返送があり,保健師の支援内容としての表現がわかり難い等のコメントがあった支援について検討し,修正した.

6. 倫理的配慮

本研究は,宮城大学研究倫理専門委員会の承認を得て実施した(承認番号宮城大第1331号,2017年2月).

研究協力者と所属部署の責任者に,研究の概要や個人情報の取り扱い等について文書と口頭にて説明し,同意書への署名をもって同意とした.インタビューは,プライバシーが確保できる個室で行った.また,逐語録等の研究に係るデータのうち個人の特定につながる情報は全て記号に変換した.

III. 研究結果

1. 研究協力者の概要(表1
表1  研究協力者の概要
性別 年齢 保健師経験年数 保健推進員の支援年数(通算) 市町村別 市町村の人口(※) 保健推進員の選出方法 保健推進員の任期 会員数
A 女性 55 32 12 1~5万人 推薦 3 73
B 女性 38 13 2
C 女性 51 30 9 1万人未満 推薦 3 44
D 女性 51 30 15 1~5万人 推薦 3 205
E 女性 55 28 8
F 女性 35 10 9 1万人未満 推薦 2 49
G 女性 49 28 22 1~5万人 推薦 3 126
H 女性 55 33 21
I 女性 47 21 5 1~5万人 推薦 2 314
J 女性 51 26 16 1万人未満 推薦 3 87
K 女性 54 32 11 1~5万人 推薦 2 142
L 女性 30 6 3 1万人未満 推薦 2 15
M 女性 54 32 20 1~5万人 推薦 2 154

※市町村の特定がされることを避けるため,市町村の人口の表記を実数にしていない

研究協力者は,東北のA県およびB県内の10市町村13名で,研究協力者の年齢は30歳代~50歳代で,性別は全て女性,平均年齢は48.1歳であった.保健師の経験年数は6~33年で,平均経験年数は24.7年であった.保健推進員の通算支援年数は2~22年で,平均支援年数は11.8年であった.市町村の人口は,1万人未満であったのは4か所,1~5万人であったのは6か所であった.保健推進員の選出方法はすべて自治会長等による推薦制で任期は2~3年,会員数は15~314名であった.

2. 保健師が行う保健推進員への支援内容(表2
表2  市町村保健師が行う保健推進員への支援内容
主要カテゴリー カテゴリー サブカテゴリ―
保健推進員の活動方針や活動内容への理解を促すための支援 保健推進員活動の趣旨や意義を説明する 市町村における保健推進員の位置づけを保健推進員に説明する
保健推進員のあり方について保健推進員に伝える
保健推進員の活動の意義を保健推進員に説明する
保健推進員活動への姿勢と方法について説明する 活動の基本的姿勢を保健推進員に説明する
保健推進員が担う役割を保健推進員に説明する
住民への関わり方を保健推進員に説明する
年間の活動計画を保健推進員に説明する
保健推進員活動に必要な情報や健康知識を提供する 市町村の事業や住民の健康状態を保健推進員に伝える
活動に必要な健康に関する情報や知識を保健推進員に説明する
保健推進員としての成長の目安を保健推進員に説明する
保健推進員の活動に必要な知識・技術の研修を企画する 活動に役立つような研修内容の組み立てをする
ライフステージを網羅できるような研修内容の組み立てをする
保健推進員活動に対する理解の状況を把握する 保健推進員が活動内容や方針等を理解できているか確認する機会を作る
保健推進員活動への意欲を高め,活動を継続できるための支援 保健推進員個人の状況に応じた活動ができるように支援する 無理のない範囲で活動を行ってほしいことを保健推進員に伝える
保健推進員の個々の特性に合わせた対応をする
保健推進員の都合を考慮して活動の調整をはかる
経験年数が浅い保健推進員が活動で困らないような配慮をする
就労している保健推進員が活動から置き去りにならないようなフォローをする
行政側が支援することを明示して保健推進員の負担感を軽減する 活動は保健師も一緒に行っていくことを保健推進員に伝える
保健師として支援できることを保健推進員に提示する
保健推進員が提供した情報は自治体が管理することを保健推進員に伝える
保健師がともに活動し,保健推進員活動を支える 活動の企画や進め方を保健推進員と共に考え行う
保健師として活動の中で協力できることがないか保健推進員に尋ねる
活動の支援を直接担当する保健師と保健推進員をつなぐ
保健推進員の活動や地域に対する思いを引き出す 保健推進員が住民として地域に対して感じていることを情報収集する
保健推進員の活動に対する思いを様々な場面で聞く機会を設ける
保健推進員の活動上の困難を解消する 活動で困った時は,いつでも保健師に相談してほしいことを保健推進員に伝える
活動を行っていて,困っていることや不安がないか保健推進員に確認する
保健推進員が対応できないことは保健師がフォローすることを保健推進員に伝える
活動の中で,保健推進員が迷っていることを共に考える
保健推進員活動の中での保健推進員の困りごとを解消する
保健推進員活動の意義を実感できる機会を設ける 活動が自分にとってメリットがあると保健推進員が実感できる機会をつくる
保健推進員が活動を自分事として考える機会をつくる
保健推進員が自身の活動を振り返る
活動が住民の健康にどう貢献したのかを住民に伝える
保健推進員が活動で学んだ成果を住民に公表する機会をつくる
活動に対する感謝の言葉を保健師以外から保健推進員に伝えてもらう
保健推進員が活動を主体的に行えるための支援 保健推進員が活動しやすい方法で活動できるように支援する 地区の状況に応じて保健推進員が活動をやりやすい方法にまかせる
保健推進員が活動をやりやすくなるような工夫をする
保健推進員としての活動の幅を広げる機会を作る 他の保健推進員が活動するうえで工夫していることを情報交換する機会をつくる
他の市町村の保健推進員と交流できる機会をつくる
保健推進員の要望を聞き,実現を図る 保健推進員の活動に関する要望や意見を保健師に伝えてほしいことを保健推進員に伝える
保健推進員の要望を踏まえた研修内容を企画する
活動計画や内容を考えるときは,保健推進員の意見や希望を尊重する
保健推進員の活動に対する要望が実現できるようにできる限り応じる
保健推進員同士のつながりを深める機会を作る 保健推進員同士で活動を分かち合う機会をつくる
保健推進員同士で活動に対する思いや意欲に気づける場をつくる
保健推進員同士が交流を深める機会をつくる
保健推進員の組織として自立した活動へ導く 保健推進員が自分たちで活動内容や方法を考えていくことができる機会をつくる
保健推進員が自分たちで活動内容を決めることができる機会をつくる
保健推進員が自分たちの活動を検討できるような材料を準備する
保健推進員同士の話し合いが円滑に進む手助けをする
保健推進員が人的・物的資源を活用できるように環境を整える
保健推進員のリーダーが活動を先導しているようにリーダーを支える
保健推進員の活動環境を整えるための支援 保健推進員と地域住民・地区組織をつなぐ 保健推進員の役割や活動を住民に周知する
地区担当の保健推進員を保健推進員に関わる住民に紹介する
保健推進員が住民に関わる前に保健推進員と住民のつながりをつくる
保健推進員と地域の他の役員とのつながりをつくる
活動をする際,行政より委嘱を受けた保健推進員であることを明示することを伝える
行政組織内で保健推進員への支援の質向上を図る 保健推進員の状況について保健師間で共有する
保健推進員を適切に支援できているか,保健師間で振り返る
保健推進員の支援の方向性を保健師間で検討し統一させる
保健推進員の必要性について保健師以外の職種から評価してもらう
行政組織内で保健推進員への理解を求め予算・物品を準備する 保健推進員活動の必要性を予算担当に説明し,活動に必要な予算を獲得する
活動に必要な物品をあらかじめ準備する

保健推進員への保健師の支援内容として,558のコード,65のサブカテゴリー,19のカテゴリー,4の主要カテゴリーが抽出された.以下,主要カテゴリーを[ ],カテゴリーを【 】で示す.

保健推進員への保健師の支援内容は,[保健推進員の活動方針や活動内容への理解を促すための支援][保健推進員活動への意欲を高め,活動を継続できるための支援][保健推進員が活動を主体的に行えるための支援][保健推進員の活動環境を整えるための支援]であった.

1) 保健推進員の活動方針や活動内容への理解を促すための支援

この主要カテゴリーは,保健推進員が保健推進員活動の役割や活動に必要な知識や技術,活動方法について理解するための支援である.これは,5つのカテゴリーより構成された.

保健師は,【保健推進員活動の趣旨や意義を説明する】ことによって,保健推進員に任命された住民が保健推進員について理解するための支援を行っていた.例えば,保健推進員は市町村から任命を受けて地域の人々の健康生活のために活動すること等,市町村における保健推進員の位置づけを保健推進員に説明していた.

また,【保健推進員活動への姿勢と方法について説明する】ことにより,保健推進員が住民への関わり方が理解できるように支援していた.例えば,保健推進員は地区から選出されるが,担当地区のことだけでなく地域全体の住民に目を向けた活動を行うこと等,活動の基本的姿勢を保健推進員に説明していた.そして,保健推進員が健康について住民に声をかける際にはその必要性も含めて伝えること等,住民への関わり方を説明していた.

さらに【保健推進員活動に必要な情報や健康知識を提供する】ことで,活動に必要である基本的な知識を踏まえて,住民に合った活動をしていくための支援をしていた.例えば,保健推進員が住民の健康状態を踏まえ,地域の健康づくりを考えられるように,市町村の事業や住民の健康状態に関する情報を伝えていた.加えて,保健推進員が活動をするうえで必要な健康に関する知識を説明していた.

これらの説明を行うために,保健師は,【保健推進員の活動に必要な知識・技術の研修を企画する】ことをしていた.市町村特有の健康課題や保健推進員が住民に接する時に必要となる健康に関する知識等,保健推進員活動に役立つような研修内容を組み立てていた.また,保健推進員の活動対象は乳幼児から高齢者までのあらゆるライフステージであるため,ライフステージを網羅できるような研修内容の組み立てをしていた.

そして,説明を行うだけでなく,【保健推進員活動に対する理解の状況を把握する】ことにより保健推進員が活動を理解できているかの評価を行っていた.例えば,研修の際に,グループワークやアンケート等の方法を用いて,保健推進員が活動内容等を理解できているかを確認する機会を作っていた.

2) 保健推進員活動への意欲を高め,活動を継続できるための支援

この主要カテゴリーは,保健推進員が活動を負担に思わず,無理なく活動を続けるための配慮や調整を行う支援である.これは,6つのカテゴリーより構成された.

保健師は,保健推進員の生活状況や個々の特性を踏まえ,【保健推進員個人の状況に応じた活動ができるように支援する】ことをしていた.例えば,保健推進員は,就労や農業を営む等,一人ひとりの生活の様相が異なる.個々の保健推進員の状況を把握しながら,保健推進員自身の生活に支障なく,無理なく活動ができるように保健推進員の活動を調整していた.

そして,保健推進員の活動を負担が大きいと感じないように,【行政側が支援することを明示して保健推進員の負担感を軽減する】支援をしていた.具体的には,活動は保健師も一緒に行っていくことや,保健師として支援できることを保健推進員に伝えていた.さらに,活動の企画や進め方を保健推進員とともに考え行う等【保健師がともに活動し,保健推進員活動を支える】ことを行っていた.

また,保健師は【保健推進員の活動や地域に対する思いを引き出す】ことで保健推進員の活動や住んでいる地域への思い等を把握していた.例えば,保健推進員が住民として地区に住み感じていることや住民の状況等を把握していた.また,新任の保健推進員に保健推進員の活動に対して感じていることや考えていることを尋ねる等保健推進員の活動に対する思いを聞く機会を設けていた.

このように保健師は保健推進員の活動に対する思いを引き出し,そして【保健推進員の活動上の困難を解消する】ことで保健推進員が活動を続けられるように支援していた.具体的には,困ったときはいつでも保健師に相談してほしいことを伝えたり,保健推進員に困っていることがないかを確認する等,保健師に相談しやすい環境を作っていた.そして,保健推進員が迷っていることを一緒に考え,保健推進員の困りごとに対応していた.

さらに,【保健推進員活動の意義を実感できる機会を設ける】ことで,保健推進員が活動に積極的に取り組むことができるような支援をしていた.例えば,健康に関心を持った,食生活を見直すようになった等保健推進員活動によって得たメリットをアンケート結果として保健推進員に示す等で保健推進員の活動が自身にとってメリットがあると実感できるようにしていた.加えて,健康診断の受診率向上の結果を示す等,地域住民の健康に具体的にどのように貢献したのかを伝えていた.

3) 保健推進員が活動を主体的に行えるための支援

この主要カテゴリーは保健推進員同士が仲間意識をもち,保健推進員が自分達で活動を考え実施していくための支援である.これは,5つのカテゴリーより構成された.

保健師は,全地区が一律に同じ方法で活動するのではなく,【保健推進員が活動しやすい方法で活動できるように支援する】ことにより,地区それぞれの特徴を踏まえて活動できるように支援していた.例えば,保健推進員の担当地区に集会所等がなく健康教室の開催が困難な地区では,地区だよりを活用した方法に変更する等,物理的な環境の違いを考慮した活動を支援していた.

また,保健推進員が活動を発表する機会を設け,他地区の保健推進員の活動の工夫を知る等【保健推進員としての活動の幅を広げる機会を作る】支援をしていた.他にも他市町村の保健推進員との交流の機会を設け,保健推進員の活動に関する情報交換をする機会を作っていた.他の保健推進員の活動を知ることにより,保健推進員の活動の幅を広げることができるように保健師は支援していた.

加えて,【保健推進員の要望を聞き,実現を図る】ことで,保健推進員が活動で行いたいことを引き出し,保健推進員が望む活動ができるような支援をしていた.例えば,保健推進員が活動をしていて不便に感じていることや学びたいこと等,保健推進員の活動で気づいたことを保健師に伝えるように保健推進員に伝えていた.そして,保健推進員から出された要望を尊重し,実現できるようにしていた.

さらに保健師は,保健推進員同士がお互いの交流を深め,協力して活動を進めることができるように,【保健推進員同士のつながりを深める機会を作る】ことをしていた.例えば,保健推進員の研修の機会等を活用し,保健推進員の互いの活動を共有したり,活動に対する意欲に気づけるような場を作っていた.

そして,保健推進員が自分達で活動を考え行っていくことができるように,【保健推進員の組織として自立した活動へ導く】ことをしていた.まず保健師は,保健推進員が自分達の活動内容や方法を保健推進員達で考えられるような機会を設けていた.そして,自分たちで活動内容を決められるように活動の案等の資料を提示したり,話し合いが円滑に進むような支援も行っていた.さらにリーダーが活動を進めることができるようにリーダーを支える支援も行っていた.

4) 保健推進員の活動環境を整えるための支援

この主要カテゴリーは,保健推進員が地域で活動をしやすくなるように環境を整える支援である.また,行政組織内における保健推進員への理解を図るとともに支援の質を高めるための支援である.これは,3つのカテゴリーより構成された.

保健師は,住民の中には保健推進員の存在を知らない人もいることから,【保健推進員と地域住民・地区組織をつなぐ】ことで保健推進員が地域での活動をしやすくしていた.例えば,市町村のホームページに保健推進員の活動場面を掲載する,保健事業や自治会長の会議の場で保健推進員の活動を紹介する等により.保健推進員の活動等を住民に周知していた.

また,保健推進員に対する保健師の支援を充実させることができるように【行政組織内で保健推進員への支援の質向上を図る】ことをしていた.具体的には,保健推進員の支援を担当する保健師間で保健推進員の状況について情報を共有していた.加えて,保健推進員への保健師の支援の評価を行ったうえで,保健推進員に対する支援の課題について検討し,支援の方向性を保健師間で共有していた.

さらに,保健推進員の活動を行うためには物や資金が必要であることから,【行政組織内で保健推進員への理解を求め予算・物品を準備する】ことを行っていた.例えば,市町村の予算部門の担当者に保健推進員活動による住民の健康に対する効果を示し,活動に必要な経費を獲得していた.このように保健師は,保健推進員が地域で活動を円滑にできるように間接的な支援も行っていた.

IV. 考察

本研究により,保健師が行う保健推進員への支援内容が明らかになった.保健師が行う保健推進員への支援内容の特徴について,考察を述べる.

1. 保健推進員活動への理解を促す支援

保健師は,保健推進員が保健推進員として活動ができるように[保健推進員の活動方針や活動内容への理解を促すための支援]を行っていた.保健推進員は地区の中で順番制や推薦制により選ばれることが多く(横森ら,2000),保健推進員の役割や活動内容を前任者から引き継ぎを受けた人は少ないという報告もある(中田ら,2013).このような状況から,保健推進員の活動について十分な理解がなく保健推進員になっていることが多いと推察される.本研究においても,保健師は【保健推進員活動の趣旨や意義を説明する】ことにより,保健推進員に任命された住民が保健推進員について理解するための支援を行っていた.保健推進員は市町村長による任命の特徴を踏まえ,保健師は,保健推進員とはどのようなもので,どのような活動をするのか保健推進員が理解できるような支援をすることにより,保健推進員の活動に対する心構えを持てるように支援していたと考えられる.

また,保健師は,【保健推進員活動への姿勢と方法について説明する】として,自分の担当地区だけでなく市町村単位で地域全体の住民に目をむけた活動をすること,保健推進員が住民に健康について伝える際には,その根拠を踏まえて伝える等,保健推進員活動への姿勢と方法を具体的に説明していた.緒言でも述べたように保健推進員の支援に関する研究は少ないが,檀原ら(2010)は,保健師の保健推進員への役割説明の内容とその構造を明らかにしている.その中で,保健師の保健推進員の役割説明として「地域の健康づくりの担い手となること」を挙げている.本研究において,保健師が説明する保健推進員の役割の内容として,担当地区だけでなく市町村全体の住民に目をむけた活動をすること等,さらに具体的な内容を示すことができたと考えられる.保健推進員の活動の目的は,自らの健康意識を高めていくことを目的とするとともに地域に広め,地域全体で健康な社会を築くことである(厚生省,1949).保健師は,保健推進員の活動目的を踏まえ,保健推進員が市町村全体の健康も考えることができるように保健推進員の活動について説明していくことが重要であると考えられた.

2. 保健推進員活動への意欲を高め主体的な活動をするための支援

保健師は,保健推進員の活動を始めた保健推進員に,[保健推進員活動への意欲を高め,活動を継続できるための支援]をしていた.その支援の一つとして保健師は,就労や農業を営む等保健推進員の生活を把握し,保健推進員個人の状況に応じた活動ができるように支援していた.歴史的に保健推進員は主婦であることが多かったが,現代では就労しながら活動を行っている保健推進員が増えている(荒川ら,2012).保健推進員が活動を継続する要因の一つとして,ボランティア活動のしやすさがある(藤井ら,2012).このような保健推進員の背景を踏まえ,保健推進員が活動を負担に思わず,無理なく活動を続けていくことができるように,保健師は配慮や調整を行っていると考えられた.

また,【保健推進員活動の意義を実感できる機会を設ける】ことによって,保健推進員自身のメリットや住民の健康への貢献が実感できる支援をしていた.松井ら(2018)は,保健推進員の意欲向上にかかわるのは,「活動の必要性を認識すること」,「活動を評価し効果を実感する」等であると明らかにしている.保健師は,保健推進員自身と住民にとって活動が有益であり,活動の必要性を感じることができるような支援を行うことで,保健推進員の意欲を高めていたと考えられる.

さらに,保健師は保健推進員の意欲への支援と同時に保健推進員が自分達で活動を考え,自ら活動を行っていくことができるように[保健推進員が活動を主体的に行えるための支援]を行っていた.この支援の【保健推進員の要望を聞き,実現を図る】は,保健推進員自身が行いたいと考える活動を引き出し,保健推進員が望む活動ができるような支援である.保健推進員が行いたいと考える活動が実現することで,保健推進員の活動へのやる気を高め,自分たちで活動をしていくことにつながると推察される.加えて【保健推進員同士のつながりを深める機会を作る】ことによって,保健推進員同士がお互いを仲間に思い,協力して活動を進められるような支援をしていた.藤浪ら(2008)は,保健推進員活動の過程には参加者が相互に話し合い学びあう場が多く存在しており,この場を通じて,地域の健康問題を共有しながら相互理解を深め,仲間意識を高めることができれば,保健推進員組織は主体的な活動が可能な組織になると述べている.保健師は,保健推進員の仲間意識を高めながら,【保健推進員の組織として自立した活動へ導く】支援を行っていた.保健推進員の仲間意識を高める支援は,保健推進員が主体性をもって活動ができるようになるための支援として重要な支援であることが示唆された.

そして,保健師は,【保健推進員の組織として自立した活動へ導く】支援として,保健推進員が自分たちで自らの活動を考え,決めることができるような機会を意図的に設けていた.また,保健推進員の話し合いが進まない等の様子が見受けられた際には,保健推進員同士の話し合いが円滑に進む手助けをし,保健師主導で活動を進めるのでなく,あくまで保健推進員たちで活動を進められるように支援していた.山田ら(2014)は,保健師は住民組織が形骸化することなく,主体的に活動を継続・発展できるように支援する方法論と技術を獲得する必要があると述べている.本研究において,保健推進員が主体性を持って活動できるようになるための保健師の具体的な支援内容を明らかにできた.

これまで述べてきた【保健推進員同士のつながりを深める機会を作る】や【保健推進員の組織として自立した活動へ導く】支援内容には,保健推進員同士で協力して活動を進められるようにする支援や保健推進員が自分たちで自らの活動を考え決めることができるような支援が含まれていた.山田ら(2010)は住民組織に対する保健師の支援内容を明らかにしている.この研究において,メンバー間が相互に交流を深める機会をつくる等の「メンバーシップの形成」が抽出されている.また,メンバーに決定権を与える等,メンバーが自主的に活動できるようにするための支援として,「主体性の喚起」が抽出されている(山田ら,2010).これらの結果は本研究において抽出された,【保健推進員同士のつながりを深める機会を作る】【保健推進員の組織として自立した活動へ導く】と類似していた.保健師が行う保健推進員への支援内容として,保健推進員個々への支援のみならず,組織として活動していくための支援内容も含まれていることが示唆された.

3. 保健推進員の活動環境を整える支援

保健師は,保健推進員が地域での活動を円滑にできるように[保健推進員の活動環境を整えるための支援]を行っていた.【保健推進員と地域住民・地区組織をつなぐ】ことによって,保健師は,保健推進員の存在や活動を住民に知ってもらうための支援をしていた.また,保健推進員が地域の他の組織や役員等と協力しながら活動を進めていくことができるような支援もしていた.中山(2009)は,住民組織活動が地域づくりに発展するための保健師の支援内容の特徴として,住民組織以外の住民に活動の理解を得る等の地域住民の活動への理解を促す支援をしていたことを明らかにしている.さらに住民組織による活動と地域のキーパーソンになる住民を結びつける等の支援をしていることも明らかにしている(中山,2009).本研究においても地域住民の保健推進員活動への理解を促す支援および地域の他の組織や役員等と協力して活動ができるような支援をしており,この支援は保健師が保健推進員等の住民組織を支援する際には重要な支援であることが示された.

また,保健師は,今後の保健推進員への支援を考えるために,【行政組織内で保健推進員への支援の質向上を図る】【行政組織内で保健推進員への理解を求め予算・物品を準備する】ことにより,行政組織内での保健推進員へ理解が進むような働きかけを行っていた.このように保健師は地域での環境を整えるだけでなく,行政組織内における環境を整えることをしていたことが明らかになった.[保健推進員の活動環境を整えるための支援]は,直接,保健推進員に働きかける支援ではない.しかし,保健推進員が活動をしやすくするために,地域の関係者や行政組織内における調整をすることも保健推進員への支援の特徴であることが示唆された.

V. 本研究の限界と今後の課題

本研究では,保健推進員への支援経験を持つ保健師に研究協力を依頼し,インタビューと分析を同時進行で行い,新たな保健推進員への支援が見い出せないことを確認した上で分析を終了した.しかし,研究協力者の保健師は,数県と限定的で比較的小規模な市町村の保健師であった.そのため,全国または大都市での保健推進員への支援においては一般化ができない可能性がある.今後は大都市の保健師の保健推進員への支援を明らかにしていく必要がある.また,本研究では保健推進員を推薦制で選出する市町村に勤務する保健師へのインタビュー結果となった.保健推進員の選出は,推薦制以外にも公募制もある.そのため,保健推進員の選出方法が推薦制以外の方法による市町村における保健師の保健推進員への支援についても明らかにしていくことが必要である.

VI. 結語

保健推進員を支援している保健師の保健推進員への支援内容を質的帰納的に分析し,4つの主要カテゴリーが抽出された.保健師は,[保健推進員の活動方針や活動内容への理解を促すための支援],[保健推進員活動への意欲を高め,活動を継続できるための支援],[保健推進員が活動を主体的に行えるための支援],[保健推進員の活動環境を整えるための支援]を行っていた.

謝辞

本研究を行う上で調査にご協力いただきました市町村の責任者様,保健師の皆様に深く感謝申し上げます.

本研究は,令和元年度宮城大学大学院看護学研究科に提出した博士論文の一部を加筆修正したものである.

この研究は,平成29年度宮城県公衆衛生研究振興基金の助成を受けて実施した.なお,本研究は,第54回宮城県公衆衛生学会学術総会(2018)で発表後に再分析した.本研究に開示すべきCOI状態はない.

文献
 
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