日本公衆衛生看護学会誌
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ISSN-L : 2187-7122
総説
幼児・小・中・高・大学生各時期の食習慣・食行動と関連要因の特徴
―先行研究結果の内容分析―
廣瀬 瑠華岡本 玲子
著者情報
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2024 年 13 巻 2 号 p. 75-85

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Abstract

目的:幼児・小・中・高・大学生の各時期について,食習慣・食行動やその関連因子の特徴を比較することで,就労期前に重視されるべき食生活と関連要因の全容を明らかにする.

方法:医学中央雑誌Web Ver.5を使用し,全61件の文献を対象とした.対象者の食習慣・食行動及び関連要因を抽出し,コード化,サブカテゴリ化・カテゴリ化を行った後,時期間での特徴の比較を実施した.

結果:463のコードが抽出され,101のサブカテゴリ,20のカテゴリに分類された.抽出された食習慣・食行動やその関連因子は,各時期の発達段階の特徴が反映されていた.また,20のカテゴリのうち19のカテゴリが複数の時期に共通して見られた.

考察:幼児期から大学生期にかけて全体を捉え,対象者の特に発達段階に合わせて段階的,継続的な介入を行うことが,健康的な食習慣・食行動の効果的な習得のために重要であることが示唆された.

Translated Abstract

Objective: The study’s aim was to clarify the overall picture of childhood and adolescent eating habits, the factors that influence those habits, and the habits that should be emphasized to advance the health of infants, young children, and elementary school, middle school, high school, and college students.

Methods: A total of 61 references were examined in the analysis using Ichushi-Web version 5. Participant eating habits, behaviors, and related factors were extracted, coded, subcategorized, and categorized. The characteristics of the classification were compared by participant.

Results: A total of 463 codes were extracted and classified into 20 categories and 101 subcategories. The extracted eating habits, behaviors, and related factors reflected the characteristics of each participant’s developmental stage. Of the 20 categories, 19 were common to participants across multiple stages.

Discussion: Study results demonstrated the importance of performing a gradual and continuous intervention specifically tailored to each participant’s developmental stage. This intervention should be performed, using a holistic approach, from early childhood to college age in order to achieve healthy eating habits and behaviors effectively.

I. 緒言

わが国の死因は,約半数を生活習慣病の三大疾病である悪性新生物,心疾患,脳血管疾患が占めている(厚生労働省,2020c).特に悪性新生物と心疾患による死亡率の上昇は大きく,生活習慣病による死亡率は年々上昇しており(厚生労働省,2021b),生活習慣病は日本において重要な健康課題である.

生活習慣病は,背景因子として遺伝因子・環境因子・生活習慣があるが,生活習慣は改善可能な因子として生活習慣病の予防に特に重要である(医療情報科学研究所,2020).さらに,栄養・食生活は,多くの生活習慣病との関連が深く,また日々の生活の中でQOLとの関連も深い(健康日本21企画検討会 健康日本21計画策定検討会,2000).以上から,生活習慣病の一次予防において健康的な食生活の実践が特に重要と考えられるため,本研究では生活習慣の中でも食習慣・食行動に焦点を当てることにした.

国民が生涯にわたって健全な心身を培い,豊かな人間性を育むためには,妊産婦や,乳幼児から高齢者に至るまで,多様なライフステージやライフスタイルに対応し,切れ目のない,生涯を通じた食育を推進することが重要である(厚生労働省,2021a).その中でも特に幼児期の食習慣はその後も継続され,肥満をはじめとする生活習慣病のリスクファクターと関連することが報告されている(木田ら,2014).第4次食育推進基本計画(厚生労働省,2021a)の中でも,子供のうちに健全な食生活を確立することは,生涯にわたり健全な心身を培い,豊かな人間性を育んでいく基礎となると言われている.子どもの頃の不健全な食習慣は,成人して働きだしてからも継続され,生活習慣病の発症・悪化に繋がり得る.結婚し親になってからは,次世代にその食習慣が引き継がれていくことになる.この負の連鎖を防ぎ,国民が生涯にわたって健康に生きるために,幼児期からの正しい食習慣の確立・継続,社会に出て自立するまでの段階で正しい食習慣への修正をできるだけ早期に行うことが重要である.現在,成育基本法及び健やか親子21(第2次)(「健やか親子21(第2次)」の中間評価等に関する検討会,2019)に基づいて,学童期・思春期から成人期に向けた保健対策として教育現場での食育が行われているが,先行研究では,対象者を幼児期から大学生のいずれかの時期に限定し,野菜摂取量や朝食摂取頻度などの食に関する特定の項目の影響要因をまとめた論文は散見された一方で,就労期に至るまでの時期全体を通してまとめた文献は見られなかった.そこで本研究では,幼児・小・中・高・大学生の各時期について先行研究の結果から食習慣・食行動やその関連因子を抽出し,各時期の特徴を読み取り,就労期前に重視される食生活と関連要因について全容を明確化する.これはわが国において,幼小児期から正しい食習慣・食行動の確立・継続を目的とした教育を,対象者の特徴に合わせて段階的に行うことに繋がるという点で意義があると考える.

II. 研究方法

1. 対象文献の抽出

本研究ではわが国における食習慣・食行動やその関連因子の抽出を目的とするため,文献のデータベースには医学中央雑誌Web Ver.5を用いた.文献の検索時期は2022年4~5月である.検索キーワードの組み合わせのパターンは,①「子ども」OR「小児」OR「学生」OR「幼児」OR「高校生」OR「青年」,②「食生活」OR「食行動」OR「食事」OR「食習慣」,③「形成」OR「確立」OR「影響」OR「関連」,④「要因」OR「因子」とし,4つの検索式すべてのAND検索をAll Fieldで行った.対象文献は会議録を除き,収載年については食育基本法が制定された2005年以降で,それに基づいた取り組みが地域や教育現場などで確立されたであろう過去10年間(2012~2022年)とした.

文献抽出のプロセスについて,図1に示す.1次スクリーニングとして,医中誌の検索結果として得られた812件の文献について,キーワードや対象データより日本人の幼児,小学生,中学生,高校生,大学生以外を対象とする文献を除外し,410件が抽出された.2次スクリーニングとして,410件の文献の表題と抄録に目を通し,72件の文献を得た.除外条件は,①対象者の食習慣や食行動との関連性について述べていない文献,②発達障害や摂食障害などの対象者の文献,③特定のスポーツをやっているなど対象者の属性を限定している文献,④原著論文でない文献,とした.3次スクリーニングとして,72件の文献の本文を精読し,2次スクリーニングで用いた条件に適さない文献や,データの有意差が示されていない文献を除外した.最終的に全61件,時期別には,幼児14件,小中学生23件,高校生7件,大学生21件の文献を対象とした(中学生・高校生間で3件,高校生・大学生間で1件の重複あり).対象文献一覧を表1に示す.

図1. 

対象文献のプロセス

表1. 

対象文献一覧

対象者時期 番号 表題 著者(発行年) 掲載誌
幼児 1 偏食の観点からみた幼稚園児の食習慣に関するパス解析 灰藤他(2021) 日本家政学会誌
2 幼児の「気になる食べ方」と関連する要因 平元他(2020) 秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻紀要
3 1–2歳児の朝食における野菜摂取の有無に関連する要因について 吉田他(2019) Journal of Life Science Research
4 【未成年】幼児の食行動問題のタイプ別からみた養育環境の検討 志澤他(2019) 厚生の指標
5 保育園児の食べる速さ(速食,遅食)に関する要因について 山梨県における保育園児の食べ方の実態調査(第1報) 鈴木他(2019) 小児歯科臨床
6 幼児期の子供の食行動と養育環境との関連 志澤他(2017) 京都府立医科大学看護学科紀要
7 幼児の食習慣と保護者の食生活意識の関連 田中(2017) 健康レクリエーション研究
8 幼児の咀嚼に関する保護者の認識 咀嚼と子どもの食,生活リズムとの関連を検討する 金城他(2017) 保育と保健
9 Early Bedtime Associated with the Salutary Breakfast Intake in Japanese Nursery School Children Yaginuma et al.(2015) International Medical Journal
10 母親の就業状況別にみた幼児の偏食とその関連要因 木田他(2015) 民族衛生
11 母親の行動変容過程が子どもの食習慣・食生活に与える影響 岡本他(2014) 長崎県立大学看護栄養学部紀要
12 乳幼児の保護者が感じる食行動の問題点と食事の楽しさとの関連 大岡他(2013) 小児保健研究
13 保育園幼児の生活要因(時間)相互の関連性とその課題 佐野他(2013) 保育と保健
14 乳幼児の朝食と夕食の共食頻度とその関連要因 黒川他(2013) 医学と生物学
小学生 15 5歳時の食習慣が小学校4年生の肥満に及ぼす要因 甲州市母子保健長期縦断研究より 古閑他(2012) 臨床栄養
16 学童期におけるゲームに費やす時間と食生活・生活習慣との関連 射場他(2020) 厚生の指標
17 Relationship Between Parental Lifestyle and Dietary Habits of Children: A Cross-Sectional Study Tenjin et al. (2020) Journal of Epidemiology
18 社会的ジェットラグと食習慣・運動習慣に関する検討 小学校5,6年生を対象として 中岡他(2020) 日本女子大学大学院紀要
19 児童の朝食時における野菜摂取状況と食環境要因との関連 酒井他(2019) 愛知学院大学論叢 心身科学部紀要
20 小学校における学校給食の主食及び牛乳の残食に関わる要因 脇本他(2019) 日本健康教育学会誌
21 Relationship between nutrition knowledge and dietary intake among primary school children in Japan: Combined effect of children’s and their guardians’ knowledge Asakura et al. (2017) Journal of Epidemiology
22 小学生の菓子・嗜好飲料からのエネルギー量と1日の栄養素等摂取量との関連 櫻田他(2015) 人間生活学研究
23 小学校高学年の児童における間食頻度と生活習慣・食生活との関連 赤利他(2016) 日本食育学会誌
24 小学校高学年児童における食行動と家族要因との関連 櫻井他(2013) 順天堂醫事雑誌
25 食卓の雰囲気と母親の言葉かけの特徴が児童の偏食におよぼす影響 森下他(2012) 京都女子大学発達教育学部紀要
小・中学生 26 親子調理方式を取り入れた小・中学校の給食の食べ残しと生活要因との関連 小野他(2019) 日本食育学会誌
27 Relationship between screen time and nutrient intake in Japanese children and adolescents: a cross-sectional observational study Tsujiguchi et al.(2018) Environmental Health and Preventive Medicine
中学生 28 中学生のインターネット依存と疲労自覚症状及び学校・家庭生活や食・生活習慣との関連 富山県内某中学校生徒を対象とした横断的研究 藤本他(2021) 北陸公衆衛生学会誌
29 中学生の体型願望と学校給食の食べ残しの関連 坂本他(2020) 日本健康教育学会誌
30 中学生における家族との夕食共食頻度及び食事中の自発的コミュニケーションと習慣的な食物摂取状況との関連 衛藤他(2020) 日本食育学会誌
31 中学校給食の牛乳の飲み残しと生活要因との関連 小野他(2020) 日本食育学会誌
32 中学生の食べ残し行動と家庭での声掛けおよび認知との関連 外山他(2015) 日本健康教育学会誌
33 中学校給食の食べ残しに関連する要因の検討 外山他(2013) 栄養学雑誌
34 Breakfast habits among adolescents and their association with daily energy and fish, vegetable, and fruit intake: a community-based cross-sectional study Sugiyama et al.(2012) Environmental Health and Preventive Medicine
中学生・高校生 35 中学生・高校生におけるメディア利用と生活習慣の関連 佐野他(2020) 日本公衆衛生雑誌
36 A学園女子中学高校生の自己体型認識が及ぼす影響の検討 久松他(2014) 鹿児島純心女子大学看護栄養学部紀要
37 思春期の食行動異常に影響を及ぼす要因 板東他(2013) 日本家政学会誌
高校生 38 秋田県在住の高校生を対象とした食に関する知識と食生活と生活習慣との関連 三井他(2020) 日本家政学会誌
39 インターネット接続端末の使用時間と体調,食物摂取量との関連 性別による特徴 山口(2020) 日本健康教育学会誌
40 高校生の食行動と心身の健康との関連 坂本(2015) 思春期学
高校生・大学生 41 高校生・大学生の食行動に影響を与える食物嗜好及び社会心理的要因に関する研究 笠巻(2013) 日本衛生学雑誌
大学生 42 幼児期における嫌いな食品の変化と偏食との関連 緒方他(2015) 西九州大学健康栄養学部紀要
43 大学生の健康な食生活を送る動機づけと子どもの頃の食生活に対する態度との関係 加藤他(2013) 学校保健研究
44 女子大学生の青少年期の共食状況及び現在の食環境についての検討 稲垣他(2019) 長崎県立大学看護栄養学部紀要
45 高校卒業後の学生にみられる栄養素等摂取状況の変化に影響する要因 食習慣の変化と一人暮らしの期間に焦点を当てて 笠巻他(2020) 日本衛生学雑誌
46 家族との共食と食習慣および親子関係の関連 青年期女子を対象として 横尾他(2020) 田園調布学園大学紀要
47 女子短大生における野菜摂取量と生活習慣・食意識の関連 梅原他(2020) 鈴鹿大学・鈴鹿大学短期大学部紀要
48 学生の糖尿病家族歴の有無と食・生活習慣及び疾患認識との関連 佐々木他(2020) 日本病態栄養学会誌
49 大学生の食行動に影響を及ぼす意識構造 久保他(2020) 日本食育学会誌
50 青年期女子のダイエット経験と食意識の関連 横尾他(2019) 田園調布学園大学紀要
51 大学生と母親の食ライフスタイルと親子関係の関連 小野寺他(2019) 目白大学心理学研究
52 女子大学生の食事摂取パターンの類型化と関連要因の検討 高木他(2019) 日本衛生学雑誌
53 大学生のアルバイトが健康,学習,意識変容に及ぼす影響 山本他(2018) 山口県立大学学術情報
54 青年期女性における体格と食意識の関連性 木下他(2016) 京都女子大学食物学会誌
55 大学生の食生活に関する知識の確信度と食事習慣及び食品群別摂取頻度との関連 三宅他(2016) 日本家政学会誌
56 大学生の食生活からみた家庭科の食生活教育の課題 食生活に対する意識と食事習慣及び食品群別摂取頻度との関連 三宅他(2016) 日本家政学会誌
57 The trends about body image and eating behavior among female college students Suzuki(2016) 神戸女子大学健康福祉学部紀要
58 首都圏における女子大学生の朝食欠食と健康的生活行動との関連 中井他(2015) 日本食育学会誌
59 住まい別にみた大学生の朝食欠食習慣に及ぼす要因 長幡他(2014) 栄養学雑誌
60 女子大生のおしゃれ意識がもたらす痩身願望と健康状況 食行動・運動習慣との関連において 森他(2012) 日本家政学会誌
61 大学新入生の生活習慣とタイプAの諸特徴との関連について 高橋他(2012) CAMPUS HEALTH

2. 分析方法

分析対象となった61件の文献について,対象者の食習慣・食行動と有意な関連が示された要因をそれぞれデータとして取り出し,学識者のスーパーバイズを受けながら,内容の妥当性を確認し信頼性を確保できるようにコード化,サブカテゴリ化・カテゴリ化を行った.また,サブカテゴリ化・カテゴリ化の際は,対象文献の収載年に該当する2012年から2019年にかけての国民健康・栄養調査(厚生労働省,201420152016a2017a2017b20182020a2020b)における身体状況,食生活及び生活習慣に関する項目を参考に実施した.得られた結果から,5つの各時期の特徴を考察し,時期間で得られた結果や特徴の比較を行った.

3. 倫理的配慮

結果を記述する際には,個人名や機関名が特定されないこと,記述内容に忠実な整理統合を行うことに留意した.

4. 用語の定義

本稿の食習慣と食行動の定義は,Mahmood et al.(2021)を引用し,食習慣とは人が意識的かつ反復的に食べる方法,食行動とは単純に食べ物を咀嚼することから食品の購入,調理,意思決定にわたる一連の行動とした.本稿における大学生とは,大学生,大学院生,短期大学生,専門学生を含む.

III. 研究結果

分析の結果,463のコードが抽出され,101のサブカテゴリ,20のカテゴリに分類された.以下,カテゴリを【 】,サブカテゴリを〈 〉,コードを[ ]を用いて表す.分析の結果を表2に示す.

表2. 

61文献より抽出した幼児・小・中・高・大学生の食習慣・食行動と関連要因における各カテゴリ・サブカテゴリに分類されたコード数

食習慣・食行動と関連要因 各時期におけるコード数
カテゴリ サブカテゴリ 幼児 小学生 中学生 高校生 大学生
①属性 基本属性 2 2 2 2 2
体型 4 2 7 2 1
学校種別 0 1 2 2 1
家庭状況 1 2 0 0 0
母親の属性 3 0 0 0 0
居住形態 0 3 0 0 3
大学での専攻 0 0 0 0 2
その他 0 1 1 1 2
②理想の体型 自己体型認識 0 0 2 2 3
体型への不満 0 1 0 0 1
体型願望 0 1 2 1 0
ダイエット行動 0 0 2 2 4
おしゃれ意識 0 0 0 0 3
神経性やせ症 0 0 0 0 3
③朝食摂取状況 朝食欠食状況 4 2 1 1 2
朝食欠食理由 0 0 0 0 1
バランスの良い朝食 3 0 1 0 1
朝食の主食a 0 0 2 0 0
朝食時刻 1 0 0 0 2
朝食を食べるために必要なこと 0 0 0 0 6
④野菜摂取状況 野菜摂取の有無 1 2 0 0 0
野菜摂取頻度 0 1 0 0 1
野菜摂取量 0 1 4 1 2
野菜嗜好性 1 0 0 0 0
⑤間食摂取状況 間食摂取頻度 4 4 2 2 4
間食摂取量 1 3 0 2 2
おやつの与え方 2 1 0 0 0
間食嗜好性 0 0 0 1 1
⑥食品・栄養摂取状況 1群 0 4 5 0 9
2群 0 3 1 1 5
4群:淡色野菜を除く 0 3 2 0 3
5群 0 3 1 2 4
6群 0 1 1 1 3
その他の栄養素摂取状況 1 13 13 0 4
エネルギー摂取量 0 9 7 0 1
食品群摂取パターン 0 0 0 0 5
⑦偏食 本人の偏食 3 1 2 0 0
母親の偏食 1 0 0 0 0
好き嫌い 4 0 1 0 2
親の好き嫌い 0 1 0 0 0
過去の好き嫌い 0 0 0 0 2
好き嫌いの克服 0 0 1 0 1
⑧調理状況 手作りの料理 3 1 1 0 0
調理済み食品・インスタント食品・外食の利用 2 1 2 0 4
ジャンクフード嗜好性 0 3 0 2 1
⑨共食状況 共食頻度 3 3 2 0 3
共食が難しい理由 1 0 0 0 0
共食者の存在 0 0 2 0 3
過去の共食経験 0 0 0 0 1
⑩楽しい食事 楽しい食事 4 0 0 0 1
家族での楽しい食事 1 0 0 0 0
美味しく食べる食事 1 0 2 0 0
食事中の会話 1 4 2 1 2

食習慣・食行動と関連要因 各時期におけるコード数
カテゴリ サブカテゴリ 幼児 小学生 中学生 高校生 大学生
⑪未熟な食べ方 咀嚼・嚥下機能 10 1 0 0 0
口腔状態 4 0 0 0 0
遊び食べ 2 0 0 0 0
食べる速度 4 0 0 0 1
道具の扱い 1 1 0 0 0
その他 2 0 0 0 0
⑫給食状況 給食の食べ残し 0 16 18 0 0
給食残食理由 0 3 3 0 0
給食の献立 0 5 0 0 0
給食供食状況 0 1 3 0 0
給食時間 0 0 3 0 0
給食時間中の食べ残しに関する取り組み 0 0 5 0 0
過去の給食経験 0 2 2 0 0
⑬その他の食事摂取状況 欠食状況 0 0 1 0 5
バランスの良い食事 2 0 0 0 2
主食b 3 1 0 0 0
食事時刻 3 0 0 0 4
食事摂取量 2 0 0 0 1
食事の挨拶 1 1 0 0 0
⑭知識 本人の食知識 0 1 0 1 4
保護者の食知識 0 1 0 0 0
自身の食知識の確信度 0 0 0 0 4
自分に適した食事内容や量の把握 0 0 0 0 2
知識獲得意欲 1 0 0 0 1
母親による情報収集 8 0 0 0 0
その他 0 0 0 0 1
⑮健康への意識 食意識 0 0 0 1 7
食の自己認識 0 0 0 1 2
食生活改善意識 1 0 0 0 1
健康意識 0 1 0 0 0
健康的な食生活を送る動機づけ 0 1 0 0 7
⑯食以外の生活習慣 睡眠時間・質 5 2 1 0 11
運動習慣 0 3 2 0 2
母親の運動習慣 1 0 0 0 0
歯磨き 0 2 0 0 0
生活スタイル 0 0 0 0 3
労働状況 0 0 0 0 2
その他 1 1 0 0 0
⑰親子の関わり 子どもとの関わり方 2 0 0 0 0
食事中の声かけ 1 6 7 1 0
しつけ 4 2 0 0 0
親との関係 0 0 0 0 4
⑱情報機器の使用 食事中の情報機器の使用 1 2 0 1 0
日常での情報機器の使用 0 2 2 1 0
情報機器の使用時間 0 5 0 2 0
⑲心身の状態 精神状態 3 0 1 4 4
自尊感情 0 2 1 2 1
体調 1 0 2 1 7
⑳外的環境 0 1 0 0 0

a,b 朝食時に限定した主食に関するコードはaに,朝食以外での主食や特に食事の場面が限定されていない主食に関するコードはbに分類.

1. 属性

35コード,8サブカテゴリ(〈基本属性〉,〈体型〉,〈学校種別〉,〈家庭状況〉,〈母親の属性〉,〈居住形態〉,〈大学での専攻〉,〈その他〉)から構成された.全時期に共通する特徴的なサブカテゴリとして〈体型〉があり,大学生以外において共通して見られた.小学生と大学生に共通するサブカテゴリとして〈居住形態〉があり,両者で共通する[家族との同居]に加え,大学生では[居住形態]や[一人暮らしの期間]といった,一人暮らしにより焦点を当てたコードが見られた.幼児にのみ〈母親の属性〉が見られた.

2. 理想の体型

20コード,6サブカテゴリ(〈自己体型認識〉,〈体型への不満〉,〈体型願望〉,〈ダイエット行動〉,〈おしゃれ意識〉,〈神経性やせ症〉)から構成された.中学生・高校生・大学生において〈自己体型認識〉が共通しており,対象者が自らの体型をどう認識しているか,や理想体型と実際の体型との乖離に関するコードが共通して見られた.また,同時期間において,〈ダイエット行動〉も共通していた.小学生と大学生は,〈体型への不満〉が共通していた.小学生・中学生・高校生では,[やせ願望]と[太りたい願望]を含む〈体型願望〉が共通していた.[「おしゃれのために痩せたい」という考え]や[「おしゃれのために痩せている方が良い」という考え]などを含む〈おしゃれ意識〉は大学生にのみ見られた.

3. 朝食摂取状況

20コード,6サブカテゴリ(〈朝食欠食状況〉,〈朝食欠食理由〉,〈バランスの良い朝食〉,〈朝食の主食〉,〈朝食時刻〉,〈朝食を食べるために必要なこと〉)から構成された.〈朝食欠食状況〉に分類された[朝食欠食の有無]は全時期に共通していた.また,同サブカテゴリにおいて,[朝食摂取頻度]が幼児・小学生・大学生に共通して見られた.幼児と大学生では〈朝食時刻〉が共通しており,[朝食開始時刻の遅れ]や[朝食時刻が定まっている]などのコードが見られた.大学生にのみ,[早く寝る,よく寝る]や[残業時間の短縮など労働環境の改善]など〈朝食を食べるために必要なこと〉に関連するコードが見られた.

4. 野菜摂取状況

10コード,4のサブカテゴリ(〈野菜摂取の有無〉,〈野菜摂取頻度〉,〈野菜摂取量〉,〈野菜嗜好性〉)から構成された.〈野菜摂取の有無〉の[朝食における野菜摂取の有無]は幼児と小学生に共通していた.小学生と大学生に共通するサブカテゴリとして〈野菜摂取頻度〉があった.幼児を除いたすべての時期において〈野菜摂取量〉が共通しており,さらに中学生・高校生・大学生で[緑黄色野菜摂取量]が共通していた.幼児にのみ〈野菜嗜好性〉が見られ,[緑黄色野菜が嫌い]が分類された.

5. 間食摂取状況

17コード,4サブカテゴリ(〈間食摂取頻度〉,〈間食摂取量〉,〈おやつの与え方〉,〈間食嗜好性〉)から構成された.すべての時期に〈間食摂取頻度〉が共通していた.中学生以外のすべての時期では〈間食摂取量〉が共通していた.幼児と小学生において〈おやつの与え方〉が共通しており,親が子に対しておやつをどのように与えているかに関連するコードが見られた.

6. 食品・栄養摂取状況

64コード,8サブカテゴリ(〈1群〉,〈2群〉,〈4群:淡色野菜を除く〉,〈5群〉,〈6群〉,〈その他の栄養素摂取状況〉,〈エネルギー摂取量〉,〈食品群摂取パターン〉)から構成された.なお,〈1群〉,〈2群〉,〈4群:淡色野菜を除く〉,〈5群〉,〈6群〉は,厚生労働省「六つの基礎食品群」に即して分類を行っている.3群の緑黄色野菜および4群の淡色野菜の摂取状況については,別カテゴリの【野菜摂取状況】に分類した.すべてのサブカテゴリは,それぞれ3つ以上の時期間で共通して該当するコードが分類された.〈食品群摂取パターン〉は大学生にのみ見られ,[少食パターン]や[若者日本食パターン]などのコードが分類された.

7. 偏食

18コード,6サブカテゴリ(〈本人の偏食〉,〈母親の偏食〉,〈好き嫌い〉,〈親の好き嫌い〉,〈過去の好き嫌い〉,〈好き嫌いの克服〉)から構成された.幼児・小学生・中学生に,〈本人の偏食〉が共通していた.幼児・中学生・大学生では,〈好き嫌い〉が共通し,中学生・大学生では〈好き嫌いの克服〉が共通していた.幼児にのみ〈母親の偏食〉が該当し,小学生にのみ〈親の好き嫌い〉が見られた.〈過去の好き嫌い〉は大学生にのみ見られた.

8. 調理状況

19コード,3サブカテゴリ(〈手作りの料理〉,〈調理済み食品・インスタント食品・外食の利用〉,〈ジャンクフード嗜好性〉)から構成された.[料理は一人分ずつ盛り付けている]や[夕食を手作りする頻度]などのコードが分類された〈手作りの料理〉は,幼児・小学生・中学生に共通していた.また,〈調理済み食品・インスタント食品・外食の利用〉は,高校生以外のすべての時期に共通していた.〈ジャンクフード嗜好性〉は,小学生・高校生・大学生で見られた.

9. 共食状況

14コード,4サブカテゴリ(〈共食頻度〉,〈共食が難しい理由〉,〈共食者の存在〉,〈過去の共食体験〉)から構成された.高校生以外のすべての時期に〈共食頻度〉が共通していた.中でも[家族との夕食の共食頻度]は,幼児・小学生・中学生・大学生すべてに共通して見られたコードだった.中学生と大学生に共通するサブカテゴリとして〈共食者の存在〉があった.幼児にのみ〈共食が難しい理由〉が該当した.大学生にのみ〈過去の共食経験〉が見られ,[小学高学年時の夕食の共食頻度]が分類された.

10. 楽しい食事

19コード,4サブカテゴリ(〈楽しい食事〉,〈家族での楽しい食事〉,〈美味しく食べる食事〉,〈食事中の会話〉)から構成された.〈食事中の会話〉はすべての時期に共通しており,[食事中に家族と会話する]や[食事中の会話の内容が楽しい話題である]などのコードを含む.〈楽しい食事〉は幼児と大学生に共通していた.〈美味しく食べる食事〉は幼児と中学生に共通していた.〈家族での楽しい食事〉は幼児に特徴的なサブカテゴリで,[家族が楽しそうに食事をしている]が分類された.

11. 未熟な食べ方

26コード,6サブカテゴリ(〈咀嚼・嚥下機能〉,〈口腔状態〉,〈遊び食べ〉,〈食べる速度〉,〈道具の扱い〉,〈その他〉)から構成された.[食べ物を噛まずに丸飲みする]や[口にいっぱい詰め込んでしまう]などの〈咀嚼・嚥下機能〉,[スプーン,フォークや箸がうまく使えない]と[箸を正しく持てる]が分類された〈道具の扱い〉は,幼児と小学生に共通するサブカテゴリである.[食べるのが遅い]や[時間内に食べ終わらない]などが分類された〈食べる速度〉は,幼児と大学生に共通していた.[歯齢]や[最大咬合圧]などを含む〈口腔状態〉や,[音を出して食べる]と[遊び食べをする]を含む〈遊び食べ〉は,どちらも幼児にのみ見られた.

12. 給食状況

44コード,7サブカテゴリ(〈給食の食べ残し〉,〈給食残食理由〉,〈給食の献立〉,〈給食供食状況〉,〈給食時間〉,〈給食時間中の食べ残しに関する取り組み〉,〈過去の給食経験〉)から構成された.このカテゴリは小学生と中学生のみに見られた.

13. その他の食事摂取状況

25のコード,6サブカテゴリ(〈欠食状況〉,〈バランスの良い食事〉,〈主食〉,〈食事時刻〉,〈食事摂取量〉〈食事の挨拶〉)から構成された.中学生と大学生において,〈欠食状況〉が共通していた.幼児と大学生においては,〈バランスの良い食事〉,〈食事時刻〉,〈食事摂取量〉が共通していた.幼児と小学生では,〈主食〉と〈食事の挨拶〉が共通していた.

14. 知識

24コード,7サブカテゴリ(〈本人の食知識〉,〈保護者の食知識〉,〈自身の食知識の確信度〉,〈自分に適した食事内容や量の把握〉,〈知識獲得意欲〉,〈母親による情報収集〉,〈その他〉)から構成された.小学生・高校生・大学生において〈本人の食知識〉が共通しており,[栄養に関する知識が高い]や[食の知識スコア],[食事バランスガイドを知っている]など,本人の食知識に関するコードが分類された.母親が健康や食に関する情報をどのように収集しているかに関するコードが分類された.幼児と大学生で〈知識獲得意欲〉が共通していたが,幼児では母親の知識獲得意欲,大学生では本人の知識獲得意欲という違いがあった.〈母親による情報収集〉は幼児にのみ見られた.小学生にのみ〈保護者の食知識〉が見られた.大学生にのみ〈自身の食知識の確信度〉や〈自分に適した食事内容や量の把握〉が該当した.

15. 健康への意識

20コード,5サブカテゴリ(〈食意識〉,〈食の自己認識〉,〈食生活改善意識〉,〈健康意識〉,〈健康的な食生活を送る動機づけ〉)から構成された.高校生と大学生に,〈食意識〉と〈食の自己認識〉に関するコードが見られた.〈食意識〉では[食品表示の確認をする]や[食行動と疾病の関連意識得点の平均値]などのコード,〈食の自己認識〉では[食の重要度認識]や[自分の食事状況は良いと思っている]などのコードが分類された.幼児と大学生において〈食生活改善意識〉が共通しており,幼児では母親の食生活改善意識,大学生では対象者自身の生活改善意識というように,両時期で誰が改善意識を持つかに違いがあった.小学生と大学生では,〈健康的な食生活を送る動機づけ〉が共通していた.

16. 食以外の生活習慣

30コード,7サブカテゴリ(〈睡眠時間・質〉,〈運動習慣〉,〈母親の運動習慣〉,〈歯磨き〉,〈生活スタイル〉,〈労働状況〉,〈その他〉)から構成された.〈睡眠時間・質〉は高校生以外のすべての時期に共通していた.〈運動習慣〉は小学生・中学生・高校生に共通していた.幼児にのみ〈母親の運動習慣〉が見られ,小学生にのみ〈歯磨き〉が見られた.〈生活スタイル〉と〈労働状況〉は大学生にのみ該当し,〈生活スタイル〉は[午前中,非常に活発的]や[朝方生活者]などを含み,〈労働状況〉には[アルバイトの有無]と[労働時間が長い]が含まれた.

17. 親子の関わり

20のコード,4サブカテゴリ(〈子どもとの関わり方〉,〈食事中の声かけ〉,〈しつけ〉,〈親との関係〉)から構成された.大学生以外のすべての時期において〈食事中の声かけ〉が共通していた.幼児と小学生で〈しつけ〉が共通しており,[一週間のうちに子供をたたく頻度]や[親が箸教育を行っている]などのコードが分類された.幼児では〈子どもとの関わり方〉で親から子への関わりに関するコードが見られたが,大学生では〈親との関係〉で子から親への関係性に関するコードが見られ,両者で親子の関係性に違いが見られた.

18. 情報機器の使用

12コード,3サブカテゴリ(〈食事中の情報機器の使用〉,〈日常での情報機器の使用〉,〈情報機器の使用時間〉)から構成された.〈食事中の情報機器の使用〉は幼児・小学生・高校生に共通していた.〈日常での情報機器の使用〉は小学生・中学生・高校生に共通していた.〈情報機器の使用時間〉は小学生と高校生に共通していた.

19. 心身の状態

25コード,3サブカテゴリ(〈精神状態〉,〈自尊感情〉,〈体調〉)から構成された.〈精神状態〉は小学生以外のすべての時期に共通していた.同サブカテゴリにおいて,幼児では[気分にむらがある]や[落ち着きがない]などのコードが分類され,高校生では[学校不適応感]や[居場所喪失感]などのコードが見られた.〈自尊感情〉は幼児以外のすべての時期に共通しており,対象者本人の[自尊感情]や[セルフエスティーム(家族)得点]などのコードが分類された.〈体調〉は小学生以外のすべての時期に共通していた.

20. 外的環境

1コードのみから,小学生において,[気温]が抽出された.

IV. 考察

1. 幼児における特徴

多くのカテゴリにおいて,幼児では母親自身や母親の子どもとの接し方に関連するコードが多く抽出される傾向があった.また,家族全体での関わりについても多くのコードが抽出され,特徴的だった.このことから,幼児における食習慣・食行動は,保護者(特に母親)や家族全体での関わりとの関連が強いという特徴が示唆された.

【未熟な食べ方】と【心身の状態】の[気分にむらがある],[落ち着きがない],[イライラしていることが多い]から,幼児の食習慣・食行動は幼児の発達上の特性や精神状態と関連していることがわかった.これらには,心身ともに発達途上であり未熟である幼児の特徴がよく表れていたと考える.

2. 小学生における特徴

幼児と同様に,保護者の属性や食知識,健康意識,子どもへの関わり方といった保護者に関連するコードが多く抽出された.これに加えて,家族全体での関わりに関するコードが多かったことも幼児と共通している傾向であり,小学生の食習慣・食行動においても保護者と家族全体での関わりと強く関連するという特徴が示唆された.

しかし,【楽しい食事】の[食事中に児童から積極的に会話をしている],【知識】の〈本人の食知識〉から,小学生の積極性や知識に関するコードが抽出されたのは幼児と異なる特徴であり,小学校に通うようになり,生活の場や人間関係が広がり,親の手から離れる機会が幼児の時より増えるため,幼児と異なり,小学生の自立性に関するコードが抽出されたのではないかと考える.

また,【知識】の〈本人の食知識〉と【給食状況】に関するコードは,小学生になると学校の給食や授業を通して食に関する知識を学ぶ機会が増えるという背景から抽出された特徴的なコードだと考える.【理想の体型】が小学生で見られたことから,やせ願望や理想的なボディイメージは小学生の頃から培われ,食習慣・食行動に影響を与えるという可能性が示唆された.

3. 中学生における特徴

保護者や家族での関わりとの関連に加えて,【楽しい食事】の[家族での食事中の自発的コミュニケーションが多い]から中学生の自立性との関連があることが特徴的と考える.

中学生においても,小学生と同様に【給食状況】に関連するコードが多く抽出される傾向があり,その他のサブカテゴリにおいても給食に関するコードが多く見受けられた.これは,小学生と同様の背景から抽出された特徴的なコードであると考える.体型やダイエット行動に関するコードが小学生に比べて顕著に見られたことから,中学生ではより食習慣・食行動と体型やダイエット行動との関連に特徴があると示唆された.

4. 高校生における特徴

本研究の対象文献のうち,高校生を対象とした文献が他の時期に比べて非常に少なく,(幼児:14件,小学生:13件,中学生:12件,高校生:7件,大学生:21件)他の時期と比べて研究があまり盛んでないことが窺えた.

【親子の関わり】や【楽しい食事】から,保護者や家族との関わりに関するコードが見られたが,中学生以前と比べると抽出数は非常に少なかった.また,唯一【共食状況】に関するコードが1つも抽出されなかったが,抽出コード数が少ないのは,本研究における高校生を対象者とした対象文献数が他の時期に比べて少なかったことが影響している可能性があると考える.

【知識】の[食の知識スコア],【健康への意識】の[食行動と疾病の関連意識得点の平均値],[食の重要度認識]から,高校生の知識や意識に関するコードが抽出されており,中学生以前と比較し食事に関する詳細な内容に関して調査研究がされていることが窺えた.大学生に向けてより自立性が高まっていく時期である高校生に対しては,高校生の知識や意識により重点を置いた研究が行われている可能性があると考えた.高校生までの間に高校生が正しい食習慣・食行動をある程度身に着けておくことが,自立後も健康的な食生活を維持・増進するために重要になると考える.

中学生とほぼ同数の体型やダイエット行動に関するコードが抽出された.対象文献数が他の時期よりも少ないという背景を鑑みると,高校生において,食習慣・食行動と体型やダイエット行動との関連が特に強いという特徴があると言える.体型に関する考え方は小学生から高校生にかけて強まり,大学生へと受け継がれていくという可能性が示唆された.

また,【心身の状態】では[学校不適応感],[居場所喪失感],[自己不全感]がコードとして抽出されたが,先行研究によると,友人や家族,異性との人間関係や生きがいのなさを「不満・悩み」とする者は,人間的価値観・食意識・食品摂取状況・食の簡便化意識・食行動・ダイエット意識・生活行動ともに,望ましくない意識・行動を構築していることが窺えた(花木,2003)とされており,本研究においても思春期に特徴的な心理社会的因子と高校生の食習慣・食行動との関連性が示唆された.

5. 大学生における特徴

本研究の対象文献では,対象時期のうち大学生を対象とする文献数が最も多かった.一人暮らしに関連したコードやアルバイトに関連したコードが複数のカテゴリで見られたが,大学生は,一人暮らしをしたことによって今まで親がやってくれていた家事を自分一人でやらなければならず,学業・アルバイト・部活動などを両立し,多忙で生活リズムが乱れやすい状況にある.疲労による食事の準備の億劫さや,多忙な生活に合わせた簡便な食事摂取の利用から,欠食や食事量の低下に繋がっているなどのあらゆる影響が推察され,こうした生活状況の変化が,大学生の食習慣・食行動と強く関連していることが示唆された.また,こうした生活の劇的な変化により食生活も一変する時期でもあるため,重要な研究対象として研究が他の時期の対象者よりも盛んに行われていることも推察された.

【知識】や【健康への意識】に分類されたコード数が他の時期と比べて明らかに多かった.より自立した生活を送らなければならない状況にあることや,今後社会人として自立するという段階であることから,自立性に関するコードが多く抽出されたのではないかと考察する.

また,現在と過去の食習慣・食行動を比較するようなコードが他の時期と比べて多く抽出されたことから,現在の食習慣・食行動と過去の食習慣・食行動との関連性を読み取ることができる.対象者により早い段階で介入することが,健康的な食習慣・食行動の形成,さらには生活習慣病の予防に繋がると考える.

中学生や高校生と共通する【理想の体型】に加えて,大学生では〈おしゃれ意識〉,〈神経性やせ症〉が新たなサブカテゴリとして抽出された.〈おしゃれ意識〉では[ファッションにお金をかけるために食費を節約する]というコードが抽出され,このことからやせ願望による食事制限(ダイエット行動)だけではなく,おしゃれ意識による食事制限や,一人暮らしをすることによる経済的な負担に加えてファッションの優先度が高まることによって食費を削らざるを得ない状況を生み出し,食がおろそかになる可能性があると考える.

6. 教育や実践への示唆

幼児の食習慣・食行動は保護者,特に母親と強く関連しているという傾向が示唆された.第4次食育推進基本計画(厚生労働省,2021a)では,「親子料理教室等による食事についての望ましい習慣を学びながら食を楽しむ機会を提供する活動を推進する」や「学校を通じて,保護者に対する食育の重要性や適切な栄養管理に関する知識等の啓発に努める」などとされているように,幼児本人だけではなく乳幼児健診や保育施設などを通して保護者に対する食育を行うことも幼児自身の正しい食習慣・食行動の養成に役立つことが再確認できた.現に幼稚園や保育所では,絵本や紙芝居,クイズやゲームなどを通して,幼児本人が食べ物について学ぶことのできる機会はもちろん,保護者と一緒に畑で野菜などを収穫し,それを調理して食べるという行事などで親子で一緒に学ぶ機会がある.対象者本人のみに向けて食育を行う場面ももちろんあると思うが,幼児から小学生,中学生にかけて,母親と関連する傾向が見られたため,その子どもだけではなく母親についても食行動や食習慣について情報収集及びアセスメントを行う重要性が推察された.また,今回抽出した幼児を対象とする先行文献では,母親との関連性を示す文献が多かったが,幼稚園や保育所に通園している幼児は親以外にも幼稚園や保育所で幼稚園教諭,保育士,養護教諭,他の園児他者との関わりがあり,家族内では母親以外の父親,兄弟,祖父母などとの関わりも考えられる.第4次食育推進基本計画(厚生労働省,2021a)において,「保育所,幼稚園及び認定こども園等において,保護者や地域の多様な関係者との連携・協働により食に関する取組を推進する」とされているように,母親以外の他者との関連についても今後更なる研究が求められる.また地域の取り組みとして,厚生労働省のスマート・ライフ・プロジェクトでは,プロジェクトに参画する企業・団体・自治体と協力・連携しながら運動,食生活,禁煙,健康・検診の受診について具体的なアクションの呼びかけを行い,さらなる健康寿命の延伸の推進を行っている.プロジェクトには2023年現在9500近くもの団体が参画しており,愛知県東郷町では『幼児期から始める「生涯健康習慣」づくり』,京都府京丹波町では『目に見える化を取り入れた学童期の減塩の食育実践』と称した様々な自治体においてのまちぐるみで子供の食育を推進する取り組みが,複数表彰されている(厚生労働省,2016b2017c).今回はどの対象者においても関連するコードは抽出されなかったが,それぞれの地域や団体で健康的な食習慣・食行動をとることができる環境を整備するということも正しい食行動を習慣化させるためには非常に重要な要素だと推察される.

【情報機器の使用】に関連するコードが,大学生において今回1つも抽出されなかったことは意外であったが,総務省の令和3年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書(総務省情報通信政策研究所,2022)によると,インターネットの平均利用時間について,平日では20代の平均利用時間は10代よりも長い.今回,10代に該当する小学生・中学生・高校生では,情報機器の使用に関するコードが抽出されたが,より長時間の利用をしていると推測される大学生においても食習慣・食行動との関連性が予想されるため,大学生の望ましい食習慣・食行動の習得には,この点をふまえて教育・改善を行う必要があると考える.しかし,情報機器の使用を通じて食習慣の改善に繋げられる可能性があるとも考える.現在,スマートフォンでは日々の食事内容を記録するような食事管理アプリも配信されており,PHRを手軽に記録し,後に振り返ることが可能で,中にはAIから記録内容に関する助言を受けられるサービスもある.昨今若い世代を中心に情報機器の活用が日常的になっているため,PHRの記録手段の1つとしてこういったアプリの活用や専門職とのPHR連携に役立てることは,より個人に合った健康情報や指導の提供を可能にする.上記の理由と今回は【情報機器の使用】に関するコードが1つも抽出されなかったことから,このカテゴリについてはより活発に研究が進められることが期待される.

最後に,本研究において,【外的環境】を除く19のカテゴリが複数の時期に共通していた.幼児期から大学生期にかけての食習慣・食行動とその関連因子の全容を捉えたうえで,先を見据えながら継続的に,時期に合わせて段階的に介入を行うことの重要性が示唆されたと考える.

7. 研究の限界

対象文献では,特定の食習慣・食行動と関連因子について有意な相関関係があっても,具体的な因果関係や影響の仕方まで明確に示している文献が少なく,関連因子の列挙に留まった.今後は,因果関係まで明らかにした論文の検討が求められる.

V. 結語

幼児・小・中・高・大学生を対象とした系統的文献検討を行ったところ,幼児では母親自身や母親の接し方,家族全体での関わりとの関連が強く,小・中学生では保護者や家族全体での関わりに加えて給食状況との関連性が特に強いことが示唆された.高校生では保護者や家族に関連する因子よりも,対象者自身の知識や健康への意識との関連が強いことが示唆され,大学生では一人暮らしやアルバイトといった生活状況の変化との関連が強いという可能性が示された.各時期の食習慣・食行動との関連因子には,対象者ごとの発達段階の特徴が表れており,本研究の20のうち19のカテゴリが複数の時期に共通したことから,幼児期から大学生期にかけて全体を捉え,対象者の発達段階に合わせて段階的に継続した介入を行うことが,効果的で健康的な食習慣・食行動の習得において重要であることが示唆された.

本研究に開示すべきCOI関係にある企業・組織及び団体等はありません.

文献
 
© 2024 日本公衆衛生看護学会
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