日本公衆衛生看護学会誌
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原著
事業実装における保健師の重要度の認識と実施度の実態と課題:全国調査
山本 佳子岡本 玲子小出 恵子下田和 美怜宮本 圭子
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2024 年 13 巻 3 号 p. 167-176

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Abstract

目的:事業実装における保健師の重要度の認識と実施度の実態と課題を明らかにする.

方法:全国の都道府県・保健所設置市の本庁・保健所に勤める保健師を対象とし,事業実装点検シート31項目を用いた郵送自記式質問紙調査を行った.

結果:有効回答数は702であった.重要度・実施度の合計得点の1項目(0–5)当たりの平均は,順に4.2,3.7であった.保健師経験5年以下,6年以上役職無,6年以上役職有の3群比較において,重要度では24項目で有意差がなかった.一方実施度では28項目で有意差が見られ(P<0.05),6年以上役職有群が他の2群より31項目すべてで高値であった.

考察:保健師の事業実装に対する重要度の認識は全体的に高いものの,実施度はそれに比し低く,キャリアレベルによって差がある実態が明らかになった.今後は,キャリアレベルの特徴に応じた能力開発と体制整備が必要であることが示唆された.

Translated Abstract

Objective: This study aimed to clarify the conditions and issues related to recognizing the importance and level of performance of public health nurses in program implementation.

Methods: Public health nurses working in main offices or public health centers in prefectures or cities were surveyed nationwide using a mailed self-administered questionnaire containing 31 items from the Implementation Degree Assessment Sheet for the Health Program.

Results: There were 702 valid responses. The mean score per item (0–5) for the importance and performance was 4.2 and 3.7, respectively. There were no significant differences in the importance of the 24 items among the three groups; those with ≤ 5 years of experience, those with ≥ 6 years of experience without a position, and those with ≥ 6 years of experience with a position. Contrastingly, there was a significant difference in the level of performance for 28 items (P<0.05), and the group with ≥ 6 years of experience had higher values for all 31 items than the other groups.

Discussion: Although public health nurses’ overall recognition of the importance of program implementation was high, their level of performance was low, indicating differences depending on their career levels. These results suggest the need for capacity building and system development according to career-level characteristics.

I. 緒言

近年の健康危機や5大疾病の増加など健康課題の重層化に伴い,それに対応する法制度が多様化している.これを受け,地域の保健事業を担う保健師には,より効果的かつ効率的な事業展開が求められている.

予算や人員など限られた資源を有効に活用し,健康課題の解決に臨むには,根拠に基づく保健医療(Evidence-Based Healthcare; EBHc)の実装が欠かせない(Gray, 1996).しかしながら,実際の事業の実装においては,エビデンス・プラクティスギャップがあるのも事実である(Lau et al., 2016).我が国においても,保健師を対象とした全国調査において,研究成果の吟味・適用・評価の実施度が低いという結果(N=604)があり(岡本ら,2017),EBHcの推進が課題である.

この課題に取り組む学問領域には普及と実装科学(以下D&I,Rabin et al., 2023)があり,アメリカを中心に1990年代より発展し,活動展開の各過程で用いることができる各種指標が開発されている.公衆衛生における実装とは,ポピュレーション/人々の健康課題を改善するために,エビデンスに基づく実践,介入,および政策を日常のヘルスケアと公衆衛生の場に組入れることである(National Cancer Institute, 2022).これより,本邦においても,エビデンスに基づく事業の実装を推進するには,普及と実装科学の知見を活用できる可能性がある.

我が国では,保健師の全就業者のうち,自治体で従事する保健師(以下,保健師)は72.3%(厚生労働省,2020)と多く,地域における保健師の保健活動に関する指針(以下活動指針;厚生労働省,2013)の1番に「地域診断に基づくPDCAサイクルの実施」,自治体保健師の標準的なキャリアラダー(以下キャリアラダー;厚生労働省,2016)における活動の1領域に「事業化・施策化」が示されている.つまり保健師には,地域診断の結果などをエビデンスとして系統的に事業を展開する実装の役割が位置づけられている.しかし,そのような事業の実装を保健師がどの程度行っているかについての実態は調査されていないのが現状である.

そこで本研究の目的は,保健師を対象に,エビデンスに基づく系統的な事業の実装の実施度とその前提となる重要度の認識(以下,重要度)の実態を明らかにし,課題と今後の方向性を検討することとした.本研究の意義は,保健師による事業の実装における課題が実態に基づいて明らかになることで,今後の保健師の能力開発や活動展開の質向上に役立つ基礎資料が得られることである.

II. 方法

1. 用語の操作的定義

本研究において事業実装とは,保健師や保健師の所属組織(以下,保健師等)が新たな事業を採用/導入することとし,採用/導入とは,新規事業の必要性の認識から実施・評価までを含むものとした.事業とは,事業・活動など,保健師等が主催して,対象者(個人・家族,集団・組織・地区などのコミュニティ)に行っている働きかけのこととした.

2. 対象

対象は,全都道府県・保健所設置市の本庁・保健所334か所に所属する保健師とした.保健所は比例分配法による層化無作為抽出を行い,宛名とした保健師代表を含み,1施設6人の協力を依頼した.協力施設と協力者が50%とした場合の回収見込みは約500人であり,母集団の規模を4万人,信頼レベル95%,許容誤差5%,回答比率0.5とした際の十分なサンプルサイズ400を上回るデザインとした.対象選定の理由は,対人保健サービスを主な業務とする市町村に比べ,本庁・保健所の保健師は,事業の企画・調整に関与することが多く,本調査の目的である事業実装の実態と課題を明らかにする対象として妥当と考えたからである.

3. 調査方法

調査方法は,無記名の郵送自記式質問紙調査であり,調査に協力する場合,保健師代表には役職・経験年数・部署に偏りがなく配布し,保健師代表用の用紙に配布数を記入するよう依頼した.回収方法は,同封した個別封筒による返送であり,自由意思による協力を保証した.調査時期は2020年1月であった.

4. 調査内容

調査内容は,基本属性(保健師としての経験年数,役職)と,事業実装点検シート5領域31項目(Implementation Degree Assessment Sheet for Health Program; IDAS, Okamoto et al., 2022)であった(表1).質問は,各項目が新たな事業を採用/導入する際の行動であるという教示のあと,「[重要度]あなたは,このように行動することを重要と思いますか,[実施度]あなたは,このように行動していますか」と,各項目について自己評価を問う内容とした.評定尺度について,[重要度]は「5 非常にそう思う」から「0 全くそう思わない」,[実施度]は「5 常にそうしている」から「0 全くそうしていない」の6件法(1項目の得点範囲:0–5)であった.

表1. 

事業実装点検シートa,b)

領域c) 項目 常にそうしている そうしている 少しそうしている あまりそうしていない そうしていない 全くそうしていない
Ⅰ 事業特性 1 事業の出処確認: その事業がどのように開発されたものかを知る 5 4 3 2 1 0
2 エビデンス確認: その事業がどの程度エビデンスの検証されたものかを知る 5 4 3 2 1 0
3 利点確認: 既存の事業と比較して,利点・欠点を明確にする 5 4 3 2 1 0
4 適用性確認: 現場に適用するためにどこをどう変更/調整すればよいかを明確にする 5 4 3 2 1 0
5 試用確認: 全面的に導入する前に試行的な実施段階を経る 5 4 3 2 1 0
6 諸条件確認: 導入に至る諸条件(手順,範囲,期間など)を明確にする 5 4 3 2 1 0
7 媒体品質管理: 事業の品質を保証する教材・資料を揃える 5 4 3 2 1 0
8 経費確認: 導入に掛かる経費を費目ごとに明確にする 5 4 3 2 1 0
Ⅱ 外的要因 9 課題と事業必要性確認: 健康課題の動向に応じて新たな事業を導入する必要性を明確にする 5 4 3 2 1 0
10 共同可能性確認: 他地域/他機関での実施状況を把握し情報や意見の交換をする 5 4 3 2 1 0
11 先進優良事例把握: 他地域/他機関での先進優良事例とその実施状況を把握する 5 4 3 2 1 0
12 外的インセンティブ把握: 国や都道府県の政策の動向をタイムリーに把握し活かす 5 4 3 2 1 0
Ⅲ 内的要因 13 場・設備の調達・管理: その事業を実施できる空間や設備を確認し準備する 5 4 3 2 1 0
14 合意手段整備: 導入を協議する会議と,メール・電話等のコミュニケーション手段を持つ 5 4 3 2 1 0
15 組織文化考慮: 組織文化(規範・価値・特性など)の影響を考慮する 5 4 3 2 1 0
16 新規受入風土醸成: 組織が新しい事業の導入の優先度・重要性を認識し受容する 5 4 3 2 1 0
17 目標設定・公表: 組織として事業によって到達する目標を設定し公表する 5 4 3 2 1 0
18 上位目標確認: 組織の上位目標(総合計画・基本指針など)との整合性を確認する 5 4 3 2 1 0
19 組織内学習風土整備: 組織として事業に必要な知識と技術を学習する風土と体制を整える 5 4 3 2 1 0
20 リーダーシップ発揮: リーダーとして実施メンバーに事業の詳細・役割を説明し支持する 5 4 3 2 1 0
21 知識と情報へのアクセス: 事業実施メンバーの力量形成環境(研修の機会や教材提供など)を整える 5 4 3 2 1 0
Ⅳ 個人特性 22 知識・信念保有: 自分が事業を遂行する知識と技術,信念を持つ 5 4 3 2 1 0
23 自己効力感保持: 自分が事業実施への自信/自己効力感を持つ 5 4 3 2 1 0
24 段階的展開スキル体得: 事業の各段階を自分で展開できる準備をする(知識/説得/決定/実施/確認) 5 4 3 2 1 0
25 職業アイデンティティ保持: 自分がこの職場で力量を発揮することに誇りを持つ 5 4 3 2 1 0
Ⅴ プロセス 26 計画立案: 組織として綿密に実行可能な実施計画を立てる 5 4 3 2 1 0
27 適材適所配置: 全体統括/実行指揮/実行班に適切な人材を配置する 5 4 3 2 1 0
28 外部との連携・協働: 外部の関係者・関係機関と必要に応じて連携・協働する 5 4 3 2 1 0
29 事業参加者募集: 複数の広報媒体・手段を用いて事業への参加者を募集する 5 4 3 2 1 0
30 実施・展開: 計画に基づいて事業を実施・展開する 5 4 3 2 1 0
31 振り返りと評価: 定期的に実施経過を振り返り,評価,改善する 5 4 3 2 1 0

a)出典:Okamoto R., Kageyama M., Koide K., et al. (2022): Implementation Degree Assessment Sheet for Health Program in Japan by Customizing CFIR: Development and Validation, Implementation Science Communications, 3: 20, 1–12.

b)操作的定義 事業実装:保健師や保健師の所属組織が新たな事業を採用/導入すること.採用/導入とは,新規事業の必要性の認識から実施・評価までを含む.

事業:事業・活動など,保健師や保健師の所属組織が主催して,対象者(個人・家族,集団・組織・地区などのコミュニティ)に行っている働きかけのこと.

c)各領域の説明

Ⅰ 事業特性:事業のエビデンスや利点,手順,現場への適用可能性,経費などを確認・調整する活動

Ⅱ 外的要因:外的インセンティブや先進優良事例,共同の可能性など外部の状況を把握し活かす活動

Ⅲ 内的要因:自組織の文化や風土の影響を考慮し,目標を設定・確認し,事業の導入を推進する活動

Ⅳ 個人特性:自己効力感や職業アイデンティティを持つ,段階的にスキル習得を図るなどの個人の力量

Ⅴ プロセス:関係者と協働し,事業を計画・実施・振り返り・評価する活動

IDASは,D&I研究で最も活用されている(Mazzucca et al., 2018)実装研究統合枠組み(Consolidated Framework for Implementation Research;CFIR, CFIR Research Team, 2022Damschroder et al., 2009, 2013)を日本の保健師等による事業の実装を担当者レベルで点検できるようにカスタマイズされたツールであり,信頼性・妥当性が検証されている.今回の実態調査においては,各々の項目について重要度と実施度の程度を問う形態で用いた.

5. 分析方法

各項目の重要度・実施度について全体の実態を把握するために,平均と標準偏差を求めた.次に,キャリアレベルごとの特徴を把握するために,5年以下役職なしの新任期群(以下,新任期群),6年以上役職なしの役職無群(以下,役職無群),6年以上役職ありの役職有群(以下,役職有群)の3群に分けて集計・分析した.役職ありとは,係長級以上である.これらの3群に分けた理由は,経験年数と役職が保健師の能力に関連することが先行研究で示されており(Saeki et al., 2020鈴木ら,2014),その2変数を根拠にした分類が妥当である,および現任教育の実態を定期的に明らかにしている調査(日本看護協会,2023)において,新任期・中堅期・管理期に分けた設問が用いられていることから,その分類に連動する3群での特徴の検討が有用と考えたからである.

キャリアレベル3群の統計的検定には一元配置分散分析,多重比較にはBonferroni法を用い,有意水準を5%未満とした.統計ソフトはIBM SPSS ver. 28を用いた.3群間の特徴の分析は,操作的に,重要度・実施度それぞれの全項目の平均値を境にした各項目の値の高低と,群間の統計的検定結果に着目して行った.この際,各項目について,群別に重要度・実施度の高低(High: H, Low: L)を表示し,いずれも高値をHH,重要度が高値・実施度が低値をHL,その逆をLH,いずれも低値をLLとしてセグメント化し,考察にて全体と各群の特徴を読み取った.

6. 倫理的配慮

倫理的配慮は送付文書にて説明し,研究計画は大阪大学医学部附属病院倫理審査委員会の承認を受けて実施した(承認番号19285,承認日2019年11月5日).文書にて研究協力の自由,個人情報の保護,データの取扱方針,研究結果の公表等について説明し,質問紙に設けた研究協力の同意欄へのチェックと返送を以て研究協力の承諾を確認した.

III. 結果

1. 回収状況

依頼施設数334のうち協力施設は185(55.4%),配布数966のうち回収は709(73.4%),そのうち有効回答は702(有効回答率72.7%)であった.

保健師としての経験年数の平均(標準偏差)は22.6(±11.6)年であり,キャリアレベル3群は新任期群87人(12.4%),役職無群192人(27.35%),役職有群423人(60.25%)であった.所属は本庁173人(24.9%),保健所529人(75.1%)であった.

2. 事業実装における保健師の重要度と実施度(表2,図1

1) 全体の概要

重要度31項目の全体平均(標準偏差)は4.2(±0.7),実施度31項目の全体平均(標準偏差)は3.7(±0.8)であり,平均以上の項目数はどちらも18,平均未満は13であった.表2に各項目の集計結果,図1にセグメント化した各項目の分布を示した.

表2. 

事業実装における保健師の重要度の認識と実施度(全体とキャリア3群別の実態)

事業実装における行動項目 重要度 実施度 重要度 実施度 セグメント化
全体 全体 全体の平均値を境に高群H・低群Lで表示
Mean±SD Mean±SD 新任期群 役職無群 役職有群 多重比較 新任期群 役職無群 役職有群 多重比較 新任期群 役職無群 役職有群
(平均値4.2) (平均値3.7) 5年以下役職なし 6年以上役職なし 6年以上役職あり P-value 有意差ありのみ記載 5年以下役職なし 6年以上役職なし 6年以上役職あり P-value 有意差ありのみ記載 5年以下役職なし 6年以上役職なし 6年以上役職あり
N=702 N=702 n=87 n=192 n=423 P<0.05* n=87 n=192 n=423 P<0.05* 重要度・実施度の順で記載
Ⅰ 事業特性 1 事業の出処確認 4.32 ± 0.7 3.89 ± 0.8 4.29 4.27 4.35 0.377 3.57 3.78 4.00 <0.001* ③>①
③>②
HL HH HH
2 エビデンス確認 4.30 ± 0.7 3.64 ± 0.9 4.32 4.21 4.34 0.100 3.23 3.46 3.80 <0.001* ③>①
③>②
HL HL HH
3 利点確認 4.33 ± 0.7 3.72 ± 0.9 4.28 4.33 4.35 0.634 3.29 3.60 3.86 <0.001* ③>① ②>①
③>②
HL HL HH
4 適用性確認 4.42 ± 0.6 3.92 ± 0.8 4.43 4.38 4.43 0.603 3.52 3.78 4.06 <0.001* ③>① ②>①
③>②
HL HH HH
5 試用確認 3.64 ± 0.8 2.86 ± 1.1 3.75 3.66 3.62 0.367 2.55 2.75 2.97 0.001* ③>①
③>②
LL LL LL
6 諸条件確認 4.32 ± 0.6 3.85 ± 0.8 4.29 4.28 4.34 0.485 3.60 3.70 3.97 <0.001* ③>①
③>②
HL HH HH
7 媒体品質管理 3.90 ± 0.8 3.56 ± 0.8 3.93 3.79 3.95 0.059 3.40 3.42 3.65 0.001* ③>①
③>②
LL LL LL
8 経費確認 4.16 ± 0.7 3.85 ± 0.9 4.05 4.10 4.20 0.101 3.44 3.65 4.03 <0.001* ③>①
③>②
LL LL HH
Ⅱ 外的要因 9 課題と事業必要性確認 4.54 ± 0.6 4.04 ± 0.8 4.60 4.44 4.58 0.014* ③>② 3.83 3.94 4.12 0.001* ③>①
③>②
HH HH HH
10 共同可能性確認 4.13 ± 0.7 3.73 ± 0.8 4.31 4.05 4.12 0.007* ①>②
③>②
3.70 3.67 3.77 0.349 HH LL LH
11 先進優良事例把握 4.11 ± 0.7 3.68 ± 0.8 4.22 4.09 4.10 0.265 3.57 3.58 3.74 0.040* HL LL LH
12 外的インセンティブ把握 4.22 ± 0.7 3.68 ± 0.9 4.09 4.15 4.27 0.043* 3.25 3.60 3.81 <0.001* ③>① ②>①
③>②
LL LL HH
Ⅲ 内的要因 13 場・設備の調達・管理 4.16 ± 0.7 3.95 ± 0.8 4.11 4.13 4.17 0.637 3.74 3.90 4.02 0.003* ③>① LH LH LH
14 合意手段整備 4.18 ± 0.7 4.01 ± 0.7 4.15 4.13 4.22 0.322 3.91 3.94 4.06 0.067 LH LH HH
15 組織文化考慮 3.92 ± 0.8 3.58 ± 0.9 3.84 3.89 3.94 0.457 3.30 3.47 3.70 <0.001* ③>①
③>②
LL LL LH
16 新規受入風土醸成 4.21 ± 0.7 3.81 ± 0.8 4.13 4.23 4.22 0.451 3.54 3.79 3.88 0.001* ③>① ②>① LL HH HH
17 目標設定・公表 4.06 ± 0.7 3.50 ± 0.9 3.99 4.05 4.09 0.482 3.39 3.41 3.57 0.088 LL LL LL
18 上位目標確認 4.33 ± 0.7 3.88 ± 0.8 4.18 4.32 4.37 0.043* ③>① 3.53 3.73 4.02 <0.001* ③>①
③>②
LL HH HH
19 組織内学習風土整備 4.12 ± 0.7 3.54 ± 0.8 4.13 4.06 4.15 0.250 3.08 3.35 3.72 <0.001* ③>①
③>②
LL LL LH
20 リーダーシップ発揮 4.27 ± 0.7 3.71 ± 0.9 4.31 4.20 4.29 0.203 2.93 3.39 4.01 <0.001* ③>① ②>①
③>②
HL HL HH
21 知識と情報へのアクセス 4.17 ± 0.7 3.56 ± 0.9 4.16 4.04 4.22 0.006* ③>② 2.82 3.28 3.84 <0.001* ③>① ②>①
③>②
LL LL HH
Ⅳ 個人特性 22 知識・信念保有 4.50 ± 0.6 3.94 ± 0.7 4.51 4.46 4.52 0.559 3.69 3.80 4.05 <0.001* ③>①
③>②
HL HH HH
23 自己効力感保持 4.25 ± 0.7 3.66 ± 0.8 4.25 4.17 4.29 0.138 3.45 3.46 3.78 <0.001* ③>①
③>②
HL LL HH
24 段階的展開スキル体得 4.25 ± 0.7 3.89 ± 0.7 4.33 4.27 4.22 0.318 3.72 3.79 3.97 0.002* ③>①
③>②
HH HH HH
25 職業アイデンティティ保持 4.02 ± 0.8 3.51 ± 0.9 3.94 3.90 4.10 0.009* ③>② 3.30 3.29 3.66 <0.001* ③>①
③>②
LL LL LL
Ⅴ プロセス 26 計画立案 4.32 ± 0.7 3.82 ± 0.8 4.47 4.22 4.33 0.011* ①>② 3.67 3.67 3.92 <0.001* ③>①
③>②
HL HL HH
27 適材適所配置 4.31 ± 0.7 3.44 ± 1.0 4.23 4.27 4.34 0.271 2.98 3.14 3.67 <0.001* ③>①
③>②
HL HL HL
28 外部との連携・協働 4.41 ± 0.6 4.00 ± 0.8 4.39 4.39 4.43 0.703 3.84 3.88 4.09 0.001* ③>①
③>②
HH HH HH
29 事業参加者募集 4.04 ± 0.7 3.59 ± 0.9 3.95 4.02 4.07 0.359 3.45 3.42 3.69 0.001* ③>①
③>②
LL LL LL
30 実施・展開 4.31 ± 0.6 4.00 ± 0.7 4.34 4.26 4.32 0.493 3.94 3.87 4.07 0.003* ③>② HH HH HH
31 振り返りと評価 4.53 ± 0.6 3.95 ± 0.8 4.60 4.47 4.53 0.206 3.85 3.77 4.05 <0.001* ③>② HH HH HH

質問内容:各項目は新たな事業を採用/導入する際の行動を示しています.[重要度]あなたは,このように行動することを重要と思いますか/[実施度]あなたは,このように行動していますか

評定尺度:[重要度]5 非常にそう思う,4 そう思う,3 少しそう思う,2 あまりそう思わない,1 そう思わない,0 全くそう思わない

[実施度]5 常にそうしている,4 そうしている,3 少しそうしている,2 あまりそうしていない,1 そうしていない,0 全くそうしていない

群間の統計的検定:一元配置分散分析(多重比較はBonferroni法)を行い,有意水準を5%未満とした.

セグメント化:分析のため,操作的に,実施度,重要度の全体の平均値(順に4.2,3.7)を境として,各項目の得点を高群H・低群Lにセグメント化した.読み取りやすいように,表中の低値には網掛けをした.

図1. 

事業実装における保健師の重要度の認識と実施度(全体の平均値を境にしたキャリア3群別のセグメント化)

重要度は,キャリアレベル3群間の比較において7項目に有意差(P<0.05)がみられたものの,他の24項目には有意な差が見られなかった.

実施度では,3項目を除き,28項目においてキャリアレベル3群間で有意差がみられた(P<0.05).実施度の平均値は,全項目で役職有群が他の2群より高値であり,6項目を除き,新任期群より役職無群,役職無群より役職有群の順で高値であった.

2) キャリアレベル3群の重要度・実施度の実態

(1) 3群とも実施度がLowの項目

3群ともにLLは5項目:〈Ⅰ5 試用確認〉,〈Ⅰ7 媒体品質管理〉,〈Ⅲ17 目標設定・公表〉,〈Ⅳ25 職業アイデンティティ保持〉,〈Ⅴ29 事業参加者募集〉,HLは,〈Ⅴ27 適材適所配置〉1項目であり,実施度においてⅢ17を除いて役職有群が他の2群より有意に高値であった.

(2) 2群の実施度がLowの項目

役職無群・新任期群がともにLLが5項目:〈Ⅰ8 経費確認〉,〈Ⅱ12 外的インセンティブ把握〉,〈Ⅲ15 組織文化考慮〉,〈Ⅲ19 組織内学習風土整備〉,〈Ⅲ21 知識と情報へのアクセス〉,役職無群LL・新任期群HLが2項目:〈Ⅱ11 先進優良事例把握〉,〈Ⅳ23 自己効力感保持〉両群ともにHLが4項目:〈Ⅰ2 エビデンス確認〉,〈Ⅰ3 利点確認〉,〈Ⅲ20 リーダーシップ発揮〉,〈Ⅴ26 計画立案〉,であり,実施度においてすべて3群間に有意な差がみられた.

(3) 1群の実施度がLowの項目

役職無群のみがLLは1項目:〈Ⅱ10 共同可能性確認〉,新任期群のみがLLは2項目:〈Ⅲ16 新規受入風土醸成〉,〈Ⅲ18 上位目標確認〉であった.新任期群のみHLが4項目:〈Ⅰ1 事業の出処確認〉,〈Ⅰ4 適用性確認〉,〈Ⅰ6 諸条件確認〉,〈Ⅳ22 知識・信念保有〉であった.実施度においてⅡ10を除き,すべて3群間で有意な差が見られた.

(4) 3群とも実施度がHighの項目

3群ともにHHが5項目:〈Ⅱ9 課題と事業必要性確認〉,〈Ⅳ24 段階的展開スキル体得〉,〈Ⅴ28 外部との連携・協働〉,〈Ⅴ30 実施・展開〉,〈Ⅴ31 振り返りと評価〉,役職有群HH・他の2群LHが1項目:〈Ⅲ14 合意手段整備〉,3群ともにLHが1項目:〈Ⅲ13 場・設備の調達・管理〉であり,実施度においてⅢ14を除いて3群間に有意な差が見られた.

IV. 考察

1. 全体の概要について

回収数は想定を上回る702,3群比較の最小数も87と十分なサンプルサイズを得られた.

全体的な重要度と実施度の特徴について,重要度全体の平均は,その行動の重要性について「そう思う」レベルであり,キャリアレベル3群間の差があまり見られなかった.しかし,実施度については,その行動について「少しそうしている」と「そうしている」の間であり,3群間では,ほとんどの項目で役職有群が他の2群より有意に高値を示していた.役職有群の実施度が高いのは,経験年数や役職に係る責任を反映しているものと考えられる.ただし,セグメント化の結果を見ると(表2,図1),役職有群にもLLやHLの項目があったことから,役職有群に関わる課題と,役職無群あるいは新任期群に関わる課題についてそれぞれ考察する必要があると考えられた.また,重要度に比し実施度が低い結果は,保健師の事業評価に関する重視度と実施度を調査した先行研究(森鍵ら,2022)においても同様であった.同研究では新任期・中堅期・管理期別に有効な研修内容が異なっていたことから,本研究においても,3群の課題の特徴別に今後の方向性を検討することが重要と考えられた.

2. キャリアレベル3群の課題と今後の方向性について

1) 役職有群について

3群ともにLowがあった項目は,最も職責が高い役職有群に焦点をあてて,この群の課題を解決する優先順位が高いと考えた.重要度・実施度が共に低いLLの5項目は,まず役職者自身が重要度を再認識するとともに,役職者として責任をもって全体の重要度と実施度を引き上げるべく,その力量を高める必要のある項目と考えられた.

とりわけ,組織として事業の到達目標を設定し公表する〈Ⅲ17 目標設定・公表〉は,3群間に実施度の有意差がなかったことから,職場全体でその重要性を確認し,組織的に取り組む必要のある内容と考えられた.活動指針(厚生労働省,2013)とキャリアラダー(厚生労働省,2016)を見ると,目標という言葉は若干書かれているものの「公表」という言葉は書かれておらず,これは国が,自治体として説明責任を果たすところまでを保健師の役割として明示していないということであり,国による指針の示し方の課題を示唆する結果と考えられた.

その他のLLは,事業の全面導入に先立って試行的に実施を図る〈Ⅰ5 試用確認〉や,適切な教材や資料を作成したり調達する〈Ⅰ7 媒体品質管理〉,事業のターゲットを明確にして広報等で参加者を募る〈Ⅴ29 事業参加者募集〉であり,HLであった〈Ⅴ27 適材適所配置〉も加えると,これらは提供する事業の品質に直接関係する内容であった.役職者による統括的な役割の遂行が期待されるこれらの項目が低値であった背景には,役職有群でも,職場で力量を発揮することに誇りを持つ〈Ⅳ25 職業アイデンティティ保持〉が低いことが影響を及ぼしている可能性がある.先行研究(堀井ら,2018)では,管理的立場にある保健師に求められる能力を獲得する研修の不十分さが指摘されていることから,役職有群の能力開発においては,まずは管理期専用の研修を充実させること,およびその目的の第一に職業アイデンティティの形成を置くことを優先する必要があると考える.

2) 役職無群について

次に役職無群・新任期群の2群両方にLowがある,あるいは役職無群にLowのあった12項目は,役職無群に焦点をあてて,その課題を解決する優先順位が高いと考え,以下に今後の方向性を考察する.

この群の到達目標は,キャリアラダー(厚生労働省,2016)のA3,「地域の健康課題を明らかにし,評価に基づく事業の見直しや新規事業計画を提案できる,および係内の事業の成果や評価等をまとめ,組織内で共有することができる」レベルが想定される.12項目の中で,このレベルに求められる内容には,事業化の根拠となる〈Ⅰ2 エビデンス確認〉,次に計画を提案するための〈Ⅴ26 計画立案〉,〈Ⅰ8 経費確認〉,およびそれを組織内で推進するための〈Ⅲ15 組織文化考慮〉があると考えられる.しかし,これらの項目の実施度は新任期との差がなく,しかも〈Ⅴ26 計画立案〉は,重要度が新任期よりも低い状況であった.役職無群では,まずこれらの能力を高める方策を講じることが欠かせないと考えられた.

エビデンスに基づく系統的な公衆衛生実践の展開が重要である(Brownson, et al., 2017b)ことはラダーにも示されているとおり周知のことである.しかし,今回役職無群においては,〈Ⅰ2 エビデンス確認〉,他の事業との比較検討を要する〈Ⅰ3 利点確認〉,他地域/他機関の情報把握や交流を要する〈Ⅰ8 経費確認〉,〈Ⅱ10 共同可能性確認〉,〈Ⅱ11 先進優良事例把握〉,および国や都道府県の動向把握を要する〈Ⅱ12 外的インセンティブ把握〉の実施度が低かった.これは,広い視野でエビデンスを収集する段階に課題があることを示唆しており,今後は,エビデンス収集段階からの活動展開に重点を置いた能力開発が必要と考えられた.

また,役職無群がLLであった項目には〈Ⅳ23 自己効力感保持〉があり,自分が事業実施への自信/自己効力感を持てないことが,先述の実施度の低さに影響している可能性がある.よって役職無群の能力開発においては,例えば,自己効力感向上に有効な研修プログラム(堀井ら,2018)を活用することや,この時期に生じる可能性があるキャリア・プラトーに対する職場での支援体制を整える(髙山ら,2021)などして,エビデンスに基づく事業展開への意欲が醸成される機会を設けることが望まれる.

加えて,【Ⅲ内的要因】に該当する〈Ⅲ20 リーダーシップ発揮〉や,組織として学習体制を整備する〈Ⅲ19 組織内学習風土整備〉,職員の力量形成環境を整える〈Ⅲ21 知識と情報へのアクセス〉は,管理職の主導が求められる内容と考えられるため,役職無群は管理職の補佐的役割を担いながら,これらの能力を高められるよう,組織内で調整する必要があると考えられた.

3) 新任期群について

そして残る新任期群のみにLowがあった6項目は,新任期群に焦点をあてて,その課題を解決する優先順位が高いと考えた.この群の到達目標は,キャリアラダー(厚生労働省,2016)のA1・A2レベルが想定される.それは「A1:所属自治体の施策体系や財政のしくみについて理解できる.担当事業の法的根拠や関連政策について理解し事業を実施できる」,「A2:担当地域の健康課題を把握し,施策と事業との関連性について理解したうえで,事業計画立案に参画することができる.担当事業の進捗管理ができる」である.これらから考えると,まずは,新任期保健師自身が事業遂行に必要な知識や技術と信念を持つ〈Ⅳ22 知識・信念保有〉に取り組むことが優先される.その次は,【Ⅰ事業特性】に該当する3項目,事業がどのように開発されたものかを知る〈Ⅰ1 事業の出処確認〉,現場に適用するための変更/調整点を明確にする〈Ⅰ4 適用性確認〉,事業の導入に至る手順や範囲,期間などを明確にする〈Ⅰ6 諸条件確認〉という具体的な事項について,学習目標を明確にして,経験知を積み上げる必要があると考える.この際,実施度の低い新任期群は,先輩保健師と経験を共にしながら学ぶ,あるいは実際に経験する機会がなくても,シミュレーションによる疑似体験を活用して主体的に力量形成を図る(松田ら,2021)ことができると考える.

また,自身の組織内の【Ⅲ内的要因】において,新規事業導入の優先度や重要性の認識を高める〈Ⅲ16 新規受入風土醸成〉,および総合計画など組織の上位目標との整合性を確かめる〈Ⅲ18 上位目標確認〉は,管理職や先輩保健師のリーダーシップのもと共同で実施しながら学んでいける可能性がある.新人看護職研修ガイドライン保健師編では,新人保健師を支える組織体制の例のひとつに,様々なチームに参画しながら学ぶチーム支援型が挙げられており(厚生労働省,2011),実際に事業を展開する複数のチームに入って指導を受けながら経験知を増やす学び方が有用と考えられる.

一方で,新任期群のみが重要度がHighであった2項目〈Ⅱ10 共同可能性確認〉,〈Ⅱ11 先進優良事例把握〉がある.それらは【Ⅱ外的要因】に該当し,事業実装に有用な情報収集を対外的かつ横断的に行う行動であった.新任期保健師は.情報化社会へと時代が変遷する中で,その重要性を養成校等で学んできた可能性があり,これらについては,管理職や先輩の指導のもと,新任期保健師に実施を委ねることを検討できる項目ではないかと考える.

4) 3群全体に渡ることについて

最後に,3群ともに実施度がHighであった7項目は,実践現場において,概ね定着している項目と考えられ,現在の到達度を確認して実装を維持し,さらなる向上を志向する必要のある項目と考えられた.うち,〈Ⅴ28 外部との連携・協働〉,〈Ⅴ30 実施・展開〉,〈Ⅴ31 振り返りと評価〉の3項目は【Ⅴプロセス】に該当し,PDCA展開の骨子となる部分であり,〈Ⅱ9 課題と事業必要性確認〉に続く一連の活動展開について,一定の質が担保されている現状があることが示唆された.また,事業の実施準備にあたる〈Ⅲ13 場・設備の調達・管理〉や,会議の場の設定や様々な伝達手段を用いた〈Ⅲ14 合意手段整備〉,事業の各段階を自身が実施するための〈Ⅳ24 段階的展開スキル体得〉は,事業の実装における基本的な事項であり,キャリアレベルに依らず実行されていることが示唆された.課題としては,【Ⅰ事業特性】に属する項目には,3群とも実施度がHighという項目が1つもなかったことである.IDASの【Ⅰ事業特性】はEBHcを推進する項目で構成されているが,先行研究(下田和ら,2024)では,保健師の事業化・施策化能力に関する4つの総説を分析し,それらに示された項目には,【Ⅰ事業特性】のうち3項目(Ⅰ-2・5・7)が含まれておらず,現場におけるEBHcの課題が指摘されていた.これは,今回の調査における【Ⅰ事業特性】の実施度が低いという結果を裏付けるものであり,保健師全体として,EBHcの推進を図るために,事業のエビデンスや利点,手順,現場への適用可能性,経費などを確認・調整する力量を高める必要があることが明瞭になったと考える.

3. 保健師全体の課題と方向性について

上記の結果より,ここでは保健師全体として【Ⅰ事業特性】に関する能力を高めるにはどうすればよいかについて考えたい.Brownson et al.(2017a)は,公衆衛生でエビデンスを使うには十分な能力が必要であり,個人が組織を形成し,組織が個人の成長の場を与えることから,能力の開発は個人と組織の両方に必要と述べている.このことから,能力開発においては,〈Ⅲ19 組織内学習風土整備〉や〈Ⅲ21 知識と情報へのアクセス〉といった組織内部の学習環境の整備が同時に推進される必要があると考える.

今回課題が明らかになった【Ⅰ事業特性】にあたる能力は,エビデンスに基づく事業実装の根幹を成すものであり,基礎教育から現任教育へと継続して高めていく必要があると考えられる.その能力の高め方についても,成人学習で推奨されているように(Bryan et al., 2009),学習者の学習目的の認識を確認,学習意欲の根底にある動機を活用,経験を尊重しその上に構築,学習者の背景と多様性に合わせた学習方法をデザイン,学習プロセスへの積極的参加を促進するといった系統的な方法が求められる.今後は,基礎教育から現任教育へと段階的に力量を形成するためのプログラム開発や,効果的・効率的な実践の根拠となるガイドラインの開発が必須と考える.

本研究の限界は,対象に市町村の保健師を含めていないこと,キャリアレベル以外の属性別検討を行っていないことであり,今後その実態と課題についてもさらに検討する必要がある.加えて,キャリアレベル3群の構成割合が,既調査(日本看護協会,2023)より算出した推計値より新任期群が約14%少なく,役職無群が約5%,役職有群が約19%多かったことにより,実施度の全体平均の値が実際より高かった可能性がある.これによる影響についても本研究の限界と考える.

V. 結語

事業実装における保健師の重要度・実施度の実態は,重要度の認識については全体的に高く,これに比し実施度は低かった.重要度では,新任期・役職無・役職有の3群比較において24項目で有意差がなかった.一方実施度は,3群比較において28項目で有意差が見られ,役職有群が他の2群より31項目すべてで高値を示した.

課題としては,役職有群では3群すべてで重要度・実施度が低かった項目に対して,自身と組織全体に対する力量形成の取り組みの強化,役職無群ではキャリア発達に留意した業務体制の整備,新任期群では【Ⅰ事業特性】を中心とする経験を積みながらの力量形成の必要性が示唆された.

謝辞

本研究にご協力くださいました保健師の皆様に心から感謝申し上げます.

本研究はJSPS科研費JP19H03961の助成を受けたものです.また,本研究に関連して開示すべきCOI関係にある企業・組織および団体等はありません.

文献
 
© 2024 日本公衆衛生看護学会
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