日本公衆衛生看護学会誌
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研究
行政中堅保健師実践能力尺度の開発
~中小規模市町村における検討~
渡部 瑞穂荒木田 美香子
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2018 年 7 巻 2 号 p. 60-71

詳細
Abstract

目的:中堅保健師の実践能力向上を目指して中堅保健師実践能力尺度を開発し,中小規模市町村でその信頼性と妥当性を検証することを目的とした.

方法:自記式質問紙調査を実施した.中堅保健師実践能力に関する81の調査項目を作成し,全国の中小規模市町村816か所の保健衛生部門で働く保健師経験6~10年(前期中堅期)・11~20年(後期中堅期)各1名の保健師に行った.

結果:回収率は50.9%で,有効回答率は44.6%だった.尺度項目すべてに回答した593件を分析に用いた.回答に偏りのあった健康危機管理等に関する項目を除き75項目を因子分析し,【地区活動能力】【地域ケアコーディネーション能力】【後輩支援・育成能力】【事例対応能力】【行政能力】【業務管理能力】【計画的人材育成能力】【自己研鑽能力】の8因子62項目が得られた.尺度全体のCronbach’s α係数は0.96であった.

考察:行政中堅保健師実践能力尺度は,中小規模市町村では中堅保健師の実践能力を測定するものとして一定の信頼性,妥当性が確認された.

I. 緒言

行政で働く保健師(以下,行政保健師)は,住民の健康の保持増進を目指して住民の健康課題に対応した保健活動を行っている.住民の健康課題は少子高齢化や経済状況の悪化など社会の変化,生活習慣に起因する生活習慣病の蔓延,新興感染症や災害時の健康管理など多岐にわたっている.また地域には,児童・高齢者虐待などの複雑化した健康問題が増加している.行政保健師が複雑多様化した健康課題に対応するには専門能力を向上させていく必要がある.

行政保健師の現任教育については,「日々進展する保健,医療,福祉,介護等に関する知識及び技術,連携及び調整に係る能力,行政運営や評価に関する能力を養成する」ことに努め,体系的な人材育成が必要(厚生労働省,2013)とされている.しかしながら,現在の行政保健師の人材育成に向けた研修は必ずしも系統的でない(厚生労働省,2016).

一方,中堅期の行政保健師(以下,中堅保健師)には,「基本的能力,行政能力,専門能力」を備え,「理念やマインド」を後輩に伝承する力や指導力が求められ(日本公衆衛生協会,2007),保健師業務の実践能力に加え,新任者教育の指導者の役割,更には次期リーダーとして管理的な役割を担う能力の習得が期待されている.しかしながら,中堅保健師を対象とした実態調査によれば,管理職を望む者は11%と少ない(永江,2012)と報告されている.中堅保健師が管理的能力を含めた専門能力を十分発揮していくための総合的な実践能力を明確にし,これを備えた次期リーダーを育成していくことは喫緊の課題である.

行政保健師の実践能力を測定する尺度には「行政機関に働く保健師の専門職務遂行能力」尺度(佐伯ら,2003)がある.この尺度は「地域および管理能力」と「対人支援能力」の2因子12項目で行政保健師活動を遂行する上で中核となる能力を測定しているが,具体的な実践活動レベルまでは表現していない.また,「公衆衛生基本活動遂行尺度」(岩本ら,2008),「事業・社会資源の創出に関する保健師のコンピテンシー評価尺度」(塩見ら,2009),「保健師の専門性発展力尺度」(岡本ら,2010),「保健活動の成果をみせる行動実践尺度」(鳩野ら,2014),「保健活動の必要性を見せる行動尺度」(岡本ら,2015),「行政保健師の施策化能力評価尺度」(鈴木ら,2014)があるが,保健師の部分的な実践能力を検討した尺度となっており,現在,中堅保健師の実践能力を総合的に評価する指標はない.そこで,本研究は,総合的に実践活動レベルの能力が測定できる中堅保健師実践能力尺度を開発することを目的とする.

行政保健師の活動は,活動の場(都道府県,市町村,大規模市,中小規模市町村)によって組織内において保健師各々に任される業務裁量が異なることが考えられる.特に中小規模市町村の保健師数は少なく,中でも中堅保健師が総合的かつ多面的に活動しなければ,保健福祉制度が目まぐるしく変化する中で,質の高い保健活動を住民に提供することができない.そこで,総合的に実践活動レベルを測定する本尺度の信頼性・妥当性の検討を中小規模市町村に働く中堅保健師に焦点をあてる.この尺度を開発することにより,中堅保健師の総合的な実践能力を把握することができ,行政保健師の自己研鑽や人材育成に活用できると考える.

II. 研究方法

1. 用語の操作的定義

「中堅保健師」とは先行研究(佐伯ら,2003)を参考とし,前期中堅期(以下,前期)は行政保健師経験6~10年,後期中堅期(以下,後期)は行政保健師経験11~20年であり,かつ係長などの管理的立場にある者を除くとした.

「中小規模市町村」とは,人口10万人未満の市町村とした.

2. 行政中堅保健師実践能力尺度案の作成プロセス

中堅保健師に求められる能力について「中堅保健師の人材育成に関するガイドライン」(永江,2012)及び「地域保健従事者の資質の向上に関する検討会」(厚生労働省,2003)において整理された「地域保健従事者に求められる能力」を参考に,対人援助力,業務管理能力,健康危機管理能力,地域診断能力,ケアコーディネーション能力,行政能力・組織横断的対処能力,人材育成能力,自己研鑽能力の8つの能力を抽出し,能力ごとに具体例を検討した.具体例は,行政保健師経験のある大学院教員及び大学院生7人にブレインライティングの手法を用いて抽出した.ブレインライティングは,メンバーで机を囲み,シートにアイデアを書き込み左隣の人に書き込んだシートを回していくという方法である(高橋,2007).項目ごとに「何ができていたら中堅期に求められる能力が備わっていると思うか」尋ね,発想の出る限りアイデアを書き込んでもらい,シートが1周したところで終了とした.抽出された中堅保健師に必要な能力の具体例について研究者が吟味し,①対人援助力,②地域診断能力,③業務管理能力,④地区管理能力,⑤ケアコーディネーション・地域ネットワーク化能力,⑥健康危機管理能力,⑦行政能力,⑧人材育成能力,⑨自己研鑽能力の9項目に再分類し,具体例の内容から質問項目を作成した.質問項目の内容は先行文献(平野,2006永江,2012佐伯ら,2003岩本ら,2008塩見ら,2009岡本ら,2010大倉,2004井伊ら,2013厚生労働省医政局看護課,2013)を参考とし,中堅保健師に求められるものに焦点化した.その後,共同研究者である公衆衛生看護の専門家と質問項目の検討を重ね,81項目の中堅保健師実践能力尺度案(以下,尺度案)とした.

3. 調査方法

1) 調査方法及び対象者

対象は,全市町村のうち人口動態統計(総務省,2012)より人口10万人未満で,職員数が保健師活動領域調査(厚生労働省,2011)において市町村所属別常勤保健師数が5人以上である816か所の保健衛生部門で働く中堅保健師で,各市町村から前期・後期各1名とした.

調査は郵送法による自記式質問紙調査を実施した.該当者がいない場合は該当者なしと記載した調査票の返信を求めた.調査期間は2014年6月から7月であった.

2) 調査項目

尺度案について,項目の回答方法は4段階リッカ―ト法で,「1.全くできない」「2.あまりできない」「3.概ねできる」「4.十分できる」とした.⑥健康危機管理能力については永江らの行った全国調査(永江,2012)によれば,地域保健福祉活動の展開のうち健康危機管理に関する項目で,取り組みを行っていないと認識しているものの割合が36.6~65.9%であり,経験のない者が多いと想定したため,「1.経験がなくわからない」を加え「2.全くできない」「3.あまりできない」「4.概ねできる」「5.十分できる」の5段階とした.

構成概念妥当性を検討する項目として,「現任教育の状況,職場体制,人材育成経験,業務経験」(以下,経験や体制)について尋ねた.現任教育は「職場外研修,職場内研修,ジョブローテーション,自己啓発」(厚生労働省,2003)と整理されていることから,職場外研修として「中堅保健師研修の受講」「厚生労働省による研修の受講」,職場内研修として「プリセプターから指導を受けた経験」,ジョブローテーションとして「他部署への異動の経験」,自己啓発として「自費研修の受講」「学会参加」,また,現任教育を促す職場体制として,「スーパーバイズを受ける機会」「統括保健師の配置」の有無を尋ねた.人材育成経験が中堅期に求められる後輩指導力に関連していると考え,「プリセプターとしての指導経験」「学生実習担当経験」について尋ねた.業務経験は実践能力の向上につながると考え,「地区住民との課題の共有経験」「事例検討会の企画経験」「保健計画策定担当経験」の有無を尋ねた.また,保健師の中核となる能力は「問題解決過程を遂行できる能力」(平野,2006)であり,問題解決方法の自己決定能力は実践能力を測る基準となると考え,「保健師活動で問題が生じた時,解決方法を自己決定できますか」の自作項目(以下,基準項目)を「1.全くできない」「2.ほとんどできない」「3.あまりできない」「4.少しできる」「5.概ねできる」「6.いつもできる」といった6段階リッカ―ト法で尋ねた.

3) 分析方法

項目分析として,平均値および標準偏差による天井効果,床効果の検討を行い項目の除外を検討した.次いでスクリープロットによる因子数の検討を行い,8因子と設定した.保健師の能力は相互に関係しあっていると仮定し,斜交回転を採用し重み付けのない最小二乗法を用いプロマックス回転による探索的因子分析を行った.項目の因子負荷量0.4以上を示し,かつ複数の因子に0.4以上の因子負荷量を示さないことを条件として項目を採用した.抽出された因子については,項目内容に基づき因子名を命名した.

信頼性についてはCronbach’sのα係数を求め検討した.

構成概念妥当性の検討については,保健師の専門能力の獲得は経験年数と関連し(佐伯ら,2004),経験年数が長いほど中堅保健師実践能力得点が高くなると予測し,前期・後期の平均の比較を行った.また,尺度の合計得点及び各因子に該当する項目の得点の合計を,経験や体制の有無により比較し,経験や体制があると,得点は高くなると予測した.現任教育として,介護保険分野への異動といった「他部署への異動の経験」はケアコーディネートに関する実践能力得点の向上につながり,「自費研修の受講」「学会参加」といった項目は自己研鑽に関する実践能力得点が高くなると予測した.中堅保健師に特徴的な項目として「新任教育としてのプリセプター」経験が保健師自らの育ちにつながり(永江,2012),「プリセプターとしての指導経験」や「学生実習担当経験」といった後輩の育成の経験により人材育成に関する実践能力得点が高くなると予測した.保健師の専門能力は経験とともに発達する(佐伯ら,2004)ことから,「地区住民との課題の共有経験」では地区活動に関する実践能力得点が,「事例検討会の企画経験」では事例対応に関する実践能力得点が,「保健計画策定担当経験」では計画策定に関する実践能力得点が高くなると予測した.検定方法はデータの正規性を確認し,分布によりt検定またはマンホイットニーU検定(P<0.05)を使用した.基準関連妥当性の検討では,基準項目の回答状況と尺度得点の相関係数を求めた.

更に,得られた尺度が保健師の全般的能力や管理職への準備段階の能力を測定できる内容となっているかを検証するため「自治体保健師の標準的なキャリアラダー」(以下,キャリアラダー)(厚生労働省,2016)と項目内容の類似性から比較検討を行った.検討は共同研究者のスーパービジョンを受け,研究者が行った.キャリアラダーには「専門的能力に係るキャリアラダー」(以下,専門的キャリアラダー)と「管理職保健師に向けた能力に係るキャリアラダー」(以下,管理的キャリアラダー)が示されている.また活動領域ごとのキャリアレベルが明示されており,専門的キャリアラダーのキャリアレベルはA-1からA-5の5段階に区分され数が多くなるほどキャリアレベルが高く設定されている.管理的キャリアラダーのキャリアレベルはB-1~B-4の4段階であり,B-1は「係長への準備段階」B-2は「係長級」B-3は「課長級」B-4は「部局長級」と区分されている.

分析にはSPSS Statistics 23を使用した.

4. 倫理的配慮

本研究は,国際医療福祉大学倫理審査委員会の承認を得て行った.(承認番号 13-Io-212 2014年3月26日承認)

質問紙は無記名とした.研究対象者に対し,調査協力依頼書と共に研究の主旨・研究参加への自由意志の尊重・匿名性の保証・研究結果の公表を明示し,回答をもって同意が得られたと判断した.

III. 結果

該当者なしと回答のあったものを除く1547件を対象とし,787件(前期352件・後期435件)の回答が得られた.回収率は50.9%であった.有効回答は690件で有効回答率は44.6%だった.そのうち,尺度項目すべてに回答した593件を分析に用いた.

1. 対象者の基本属性

年齢は,前期では30歳代で76.2%と最も多く,後期では30歳代で53.1%,40歳代で44.9%と30歳代から40歳代でその大半を占めた.保健師免許取得機関は,前期では大学が57.7%と最も多く,後期では専門学校が73.4%と最も多かった.所属する自治体の人口は5万人未満が61.7%,所属する自治体の保健師数は10人以上20人未満が57.8%であった.人材育成計画は計画策定が全くないものが69.5%であった(表1).

表1  対象者の基本属性(N=593)
属性 前期中堅期 後期中堅期 合計
人数 (%) 人数 (%) 人数 (%)
中堅前後期別人数 239​ 40.3 354​ 59.7 593​ 100.0
性別 男性 6​ 2.5 2​ 0.6 8​ 1.3
女性 233​ 97.5 352​ 99.4 585​ 98.7
年齢 20歳代 43​ 18.0 0​ 0.0 43​ 7.3
30歳代 182​ 76.2 188​ 53.1 370​ 62.4
40歳代 14​ 5.9 159​ 44.9 173​ 29.2
50歳代 0​ 0.0 7​ 2.0 7​ 1.2
卒後年数 10年以下 148​ 61.9 0​ 0.0 148​ 25.0
11–15年 83​ 34.7 128​ 36.2 211​ 35.6
16–20年 7​ 2.9 190​ 53.7 197​ 33.2
21–25年 1​ 0.4 29​ 8.2 30​ 5.1
26–30年 0​ 0.0 6​ 1.7 6​ 1.0
31年以上 0​ 0.0 1​ 0.3 1​ 0.2
保健師免許取得機関 専門学校 59​ 24.7 260​ 73.4 319​ 53.8
専攻科 41​ 17.2 45​ 12.7 86​ 14.5
4年制大学 138​ 57.7 47​ 13.3 185​ 31.2
未回答 1​ 0.4 2​ 0.6 3​ 0.5
最終学歴 専門学校 56​ 23.4 243​ 68.6 299​ 50.4
短大専攻科 43​ 18.0 53​ 15.0 96​ 16.2
4年制大学 135​ 56.5 54​ 15.3 189​ 31.9
大学院修士 5​ 2.1 3​ 0.8 8​ 1.3
未回答 0​ 0.0 1​ 0.3 1​ 0.2
所属する自治体の人口 1万人未満 13​ 5.4 11​ 3.1 24​ 4.0
1万人台 29​ 12.1 57​ 16.1 86​ 14.5
2万人台 42​ 17.6 52​ 14.7 94​ 15.9
3万人台 37​ 15.5 59​ 16.7 96​ 16.2
4万人台 28​ 11.7 38​ 10.7 66​ 11.1
5万人台 28​ 11.7 43​ 12.1 71​ 12.0
6万人台 19​ 7.9 37​ 10.5 56​ 9.4
7万人台 15​ 6.3 17​ 4.8 32​ 5.4
8万人台 18​ 7.5 26​ 7.3 44​ 7.4
9万人台 10​ 4.2 13​ 3.7 23​ 3.9
不明 0​ 0.0 1​ 0.3 1​ 0.2
所属する自治体の保健師数 5–9 人 60​ 25.1 94​ 26.6 154​ 26.0
10–19人 143​ 59.8 200​ 56.5 343​ 57.8
20–29人 26​ 10.9 46​ 13.0 72​ 12.1
30人以上 10​ 4.2 13​ 3.7 23​ 3.9
不明 0​ 0.0 1​ 0.3 1​ 0.2
人材育成計画 新任期のみ作成 55​ 23.0 83​ 23.4 138​ 23.3
新任・中堅期は作成 1​ 0.4 4​ 1.1 5​ 0.8
各期に対して作成 2​ 0.8 7​ 2.0 9​ 1.5
計画作成なし 169​ 70.7 243​ 68.6 412​ 69.5
未回答 12​ 5.0 17​ 4.8 29​ 4.9

2. 尺度案の回答状況と項目分析

尺度案の平均値は1.7点から3.1点の間であった.床効果がみられた1項目を因子分析から除いた.回答項目の分布状況は,健康危機管理に関する項目については,「最新の災害対応など健康危機管理の先進事例を理解し市町村計画の見直し(提案を含む)に活用する.」「平常時に,担当地区において災害時のリスク対応について関係者と協議する.」など感染症の発生や災害時の対応について平時からの危機管理に関する内容の5項目であったが,「経験がなくわからない」の回答が28.5%から37.1%と約3割を占め,「まったくできない」「あまりできない」としたものが50.7%から58.1%と過半数であり,回答に偏りがあると判断し因子分析から除いた.

3. 因子分析

項目分析により6項目を削除した尺度案75項目を対象とし,探索的因子分析を行った.因子の選定条件に従って検討した結果,複数の因子に負荷量が高かった1項目及び,因子負荷量の特に低かった12項目を除外し,最終的に8因子62項目を採用し尺度項目とした.本調査の593件の合計得点の平均値は160.1点(±19.7),中央値は159点で最低70点から最高246点に分布した.

中堅保健師実践能力を示す因子について,第1因子【地区活動能力】,第2因子【地域ケアコーディネーション能力】,第3因子【後輩支援・育成能力】,第4因子【事例対応能力】,第5因子【行政能力】,第6因子【業務管理能力】,7因子【計画的人材育成能力】,第8因子【自己研鑽能力】と命名した(表2).

表2  行政中堅保健師実践能力尺度の因子構造および尺度項目と保健師活動領域と各キャリアレベルとの比較
項目番号と項目 Cronbach’sのα係数 第1因子 第2因子 第3因子 第4因子 第5因子 第6因子 第7因子 第8因子 平均値±標準偏差 保健師の活動領域a キャリアレベルb
第1因子 地区活動能力 0.92
23 地域診断の結果を活動計画に活用する. 0.85 –0.02 –0.06 –0.05 0.06 –0.23 0.01 0.10 2.3±0.60 2-1地域診断・地区活動 A-3
21 地域診断により導き出された課題の背景要因について分析的に検討する. 0.82 –0.04 –0.02 0.05 0.07 –0.23 –0.02 0.05 2.3±0.57 2-1地域診断・地区活動 A-2
35 担当している地区(または市町村)組織の課題を把握する. 0.76 –0.03 0.02 0.01 0.01 0.01 –0.07 –0.02 2.5±0.57 2-2地区組織活動
18 地域の健康に関する情報を常に多角的に収集する. 0.75 0.02 0.04 0.00 0.05 –0.11 –0.10 0.05 2.4±0.58 2-1地域診断・地区活動
20 日常的な保健師活動を行う中で,地域の潜在ニーズを把握する. 0.75 0.02 0.05 0.00 –0.04 0.04 –0.13 –0.02 2.5±0.56 2-1地域診断・地区活動
36 担当している地区(または市町村)の地区組織の課題解決のための方策を住民とともに考える. 0.72 –0.08 0.01 0.03 –0.05 0.09 0.12 –0.10 2.3±0.58 2-2地域組織活動
22 地域診断の結果をわかりやすく図式化して説明する. 0.69 0.05 –0.07 0.01 0.12 –0.23 0.03 0.09 2.2±0.60 2-1地域診断・地区活動
37 担当している地区(または市町村)の課題解決のために,住民が主体的に取り組めるような情報を提供する. 0.68 0.02 –0.04 –0.03 –0.13 0.21 0.07 –0.03 2.4±0.61 2-2地域組織活動
38 健康課題の解決に向けたグループ活動の組織化に向けて支援する. 0.56 0.06 –0.05 –0.05 –0.09 0.20 0.16 –0.08 2.3±0.60 2-2地域組織活動 A-5
15 健康教育で,参加者の自立を促す支援を行う. 0.52 –0.02 0.06 0.01 0.00 0.14 –0.10 0.08 2.7±0.58 1-2集団への支援 A-2
19 地域の情報を得やすいように日頃から地区組織や関連職種,他部門の職員などと情報交換する. 0.52 0.07 0.01 0.06 –0.04 0.05 –0.03 0.05 2.5±0.61 2-1地域診断・地区活動
16 健康教育にグループワークなどの方法を取り入れ支援する. 0.45 –0.01 0.12 0.03 –0.09 0.13 –0.11 0.11 2.7±0.61 1-2集団への支援 A-2
34 住民の健康の保持増進のために必要な専門的な意見を上司や組織に提案する. 0.45 0.08 0.10 –0.12 0.12 0.15 –0.01 –0.08 2.4±0.57 管理的活動1政策策定と評価 B-1
3 日頃の住民組織(民生委員など)との関わりから潜在化しているケースを発見する. 0.43 –0.04 –0.02 0.29 –0.08 0.02 0.06 –0.03 2.5±0.58 1-1個人及び家族への支援
17 グループ支援を行う際,ファシリテーターの役割を担う. 0.41 0.00 0.08 0.04 –0.07 0.21 –0.05 0.05 2.6±0.63 1-2集団への支援 A-2
第2因子 地域ケアコーディネーション能力 0.92
47 ネットワークが効果的に活用できるよう,運用方法を提案する. 0.06 0.83 0.00 –0.06 –0.05 –0.01 0.08 –0.08 2.3±0.59 2-2地域組織活動
46 ケアコーディネーションにおける事例の支援にあたってネットワークの課題とその要因を把握する. –0.01 0.83 0.11 –0.03 –0.03 –0.03 –0.06 –0.05 2.4±0.59 2-3ケアシステムの構築 A-3
45 ネットワーク化したい関連機関と課題を共有化する. –0.04 0.75 –0.03 0.01 –0.15 0.14 –0.03 0.10 2.6±0.59 2-3ケアシステムの構築 A-3
49 改善が必要と判断されたネットワークについては,再構築するための適切な行動をとる. 0.12 0.74 –0.05 –0.11 –0.02 –0.06 0.19 –0.08 2.2±0.59 2-3ケアシステムの構築 A-3
42 ネットワーク化したい関連部署の機能,強みや弱みを理解している. –0.10 0.72 –0.05 0.09 0.01 0.05 –0.08 0.08 2.5±0.57 2-3ケアシステムの構築 A-3
48 地域ケアシステムとして,ネットワークが効果的に運用できているかモニタリング・評価する. 0.12 0.71 –0.09 –0.04 –0.07 –0.03 0.24 –0.10 2.1±0.56 2-3ケアシステムの構築
43 地域の実態を踏まえ,ネットワーク化の実現可能性(限界を含む)を判断する. 0.04 0.70 0.02 0.03 0.00 0.05 –0.06 –0.01 2.4±0.56 2-2地域組織活動 A-3
44 ネットワークを活用するために,キーパーソンやキー組織に働きかける. 0.02 0.69 –0.02 0.00 –0.05 0.09 –0.02 0.04 2.6±0.57 2-2地域組織活動 2-3ケアシステムの構築
41 健康課題の解決に必要なネットワークを判断できる(見立てる). –0.09 0.64 0.00 0.13 0.06 0.08 –0.17 0.10 2.7±0.54 2-2地域組織活動 2-3ケアシステムの構築
50 地域ケアシステムを構築するための具体的な事務手順を知っている. 0.01 0.54 –0.02 0.03 0.09 –0.13 0.19 0.02 2.2±0.69 2-3ケアシステムの構築
40 自身の役割(立ち位置)を関連機関に明示する. –0.08 0.49 0.09 0.12 0.04 0.07 –0.17 0.15 2.8±0.55 2-3ケアシステムの構築 A-3
第3因子 後輩支援・育成能力 0.89
64 後輩の業務達成状況に合わせて助言する. 0.01 0.04 0.94 –0.06 0.10 –0.06 –0.11 –0.10 2.7±0.57 5-3人材育成
63 後輩の困難事例の相談を受け指導できる. –0.03 0.10 0.79 0.13 –0.01 –0.03 –0.06 –0.15 2.7±0.57 5-3人材育成 1-1個人及び家族への支援
65 後輩の状況に合わせた課題の設定をする. 0.07 0.04 0.72 –0.01 0.06 –0.12 0.14 –0.11 2.4±0.62 5-3人材育成
71 後輩の精神状況を把握し,支援的に対応する. –0.03 –0.08 0.67 –0.07 –0.10 0.12 0.13 0.09 2.8±0.58 5-3人材育成
72 後輩が相談しやすくなるような工夫をする. –0.03 –0.12 0.67 –0.03 –0.11 0.16 0.09 0.12 2.8±0.57 5-3人材育成
66 後輩の状況に合わせた能力向上の機会を提供する. 0.10 –0.01 0.61 –0.05 –0.02 –0.09 0.21 0.05 2.5±0.60 5-3人材育成 A-4
73 目標に向かって仕事に意欲的に取り組む姿を後輩に見せる. 0.00 –0.01 0.49 0.07 0.01 0.15 0.00 0.13 2.7±0.62 5-3人材育成 A-2
第4因子 事例対応能力 0.84
5 困難な事例に継続的に関わる. –0.08 –0.04 –0.01 0.77 –0.01 0.02 0.05 0.00 3.0±0.48 1-1個人及び家族への支援 A-3
4 困難な事例であっても,躊躇せずに関わる. 0.02 0.06 0.05 0.70 –0.03 –0.18 0.05 0.06 2.8±0.57 1-1個人及び家族への支援 A-3
1 継続的にフォローの必要な対象者を選定する. 0.03 –0.16 –0.09 0.69 0.01 0.20 0.07 –0.05 3.1±0.39 2-1地域診断・地区活動 A-2
2 ケース対応の際,支援の優先度を考え対応する. 0.11 –0.13 –0.03 0.63 0.04 0.17 0.02 –0.15 3.0±0.38 1-1個人及び家族への支援
6 攻撃的な事例であっても,受容的な態度で接する. 0.06 0.04 –0.02 0.52 –0.02 –0.06 0.06 0.00 2.8±0.55 1-1個人及び家族への支援
9 困難事例に必要なサービス(インフォーマルサービス・フォーマルサービスなど)を提供するための調整をする. –0.04 0.27 –0.03 0.50 –0.01 0.01 –0.01 0.07 2.8±0.53 1-1個人及び家族への支援 A-3
7 困難事例の支援計画を作成する. 0.14 0.19 0.01 0.50 0.06 –0.15 0.06 –0.08 2.6±0.58 1-1個人及び家族への支援
10 事例対応の際に,必要に応じてケースカンファレンスを開催する. –0.04 0.25 0.06 0.47 0.03 –0.06 –0.08 0.00 2.9±0.57 1-1個人及び家族への支援 A-3
第5因子 行政能力 0.87
57 予算を獲得するために必要な情報を効果的に提示する. –0.04 –0.11 –0.02 0.04 0.93 0.00 0.02 –0.05 2.6±0.63 3-1事業化・施策化 A-3
56 予算を獲得するために必要な情報の収集する. –0.02 –0.14 0.03 0.02 0.87 –0.04 –0.03 0.01 2.8±0.59 3-1事業化・施策化 A-1
59 業務に関連する計画策定に主体的に関与する. 0.07 0.05 –0.05 0.00 0.61 0.03 0.03 0.05 2.6±0.60 3-1事業化・施策化 A-5
58 担当する業務に関連する国の動きや最新情報をよく理解し先の見通しを立てる. 0.09 0.05 –0.10 –0.06 0.58 0.15 0.03 0.04 2.6±0.61 3-1事業化・施策化
60 適切なデータや資料をタイミングよく上司に提供する. 0.04 0.07 0.04 –0.06 0.56 0.12 0.03 –0.03 2.5±0.58 3-1事業化・施策化
61 関連する部署との連携を円滑に行える仕組みづくりに積極的に関わる. –0.06 0.15 0.09 0.04 0.48 0.06 0.09 0.08 2.5±0.62 2-3ケアシステムの構築
第6因子 業務管理能力 0.82
31 事業を実施する際,事業に関わる他職種と話し合い,共に企画・実施・評価する. –0.01 0.10 –0.04 –0.07 –0.03 0.70 0.07 –0.01 2.8±0.56 5-1PDCAサイクルに基づく事業・施策評価 A-4
30 担当している事業に参加しているスタッフの意見を吸い上げることができる. –0.06 –0.06 0.08 0.00 –0.01 0.66 –0.01 0.05 3.0±0.45 5-1PDCAサイクルに基づく事業・施策評価 A-2
29 担当している事業の関連部署とスムーズな連携が行える. –0.18 0.08 0.01 0.07 0.03 0.60 0.04 0.00 2.9±0.50
32 担当事業の実施でトラブルを事前に予測し対応する. 0.09 0.19 –0.02 –0.03 0.14 0.44 –0.08 –0.09 2.6±0.55
33 担当する事業に携わるスタッフの人材管理(業務配分や人材育成計画など)ができる. 0.14 0.11 –0.07 –0.01 0.11 0.43 0.13 –0.13 2.4±0.62 3-1事業化・施策化 A-2
28 担当している事業評価の結果を事業の見直しに活用する. 0.16 –0.05 0.01 0.01 0.10 0.42 0.03 0.06 2.8±0.51 5-1PDCAサイクルに基づく事業・施策評価 A-2
27 担当している事業を評価し,課題を明確化する. 0.22 –0.03 0.07 0.10 0.09 0.41 –0.13 0.00 2.8±0.55 3-1事業化・施策化 A-3
第7因子 計画的人材育成能力 0.85
67 人材育成計画の策定に参画する. –0.05 0.03 0.07 –0.05 0.13 –0.04 0.70 0.01 2.0±0.63 管理的活動 3.人事管理 B-1
70 職場の計画的な人材育成のプログラム実施について,チーム員として遂行に参画する. –0.08 –0.03 0.08 0.07 –0.03 0.06 0.70 0.07 2.2±0.70 管理的活動 3.人事管理 B-1
69 計画的に人材育成を行っていくための方法を理解をする.(OFF-JT・OJT・ジョブローテーションなど) –0.01 –0.07 0.00 0.21 –0.08 0.06 0.68 0.11 2.2±0.68 5-3人材育成 A-1
68 職場の人材育成の課題を把握し改善の提言をする. –0.02 0.11 0.09 –0.03 0.05 0.03 0.68 0.02 2.1±0.65 5-3人材育成 管理的活動 3.人事管理 A-3 B-1
第8因子 自己研鑽能力 0.75
78 自己の課題の解決のために適切な研修を選択し参加する. 0.10 0.02 –0.11 –0.06 –0.01 0.02 0.06 0.75 2.9±0.68 5-3人材育成 管理的活動 3.人事管理 A-2 B-1
77 同僚や後輩に自己研鑽の場を紹介するなど,共に学ぶ姿勢を持っている. 0.05 0.04 –0.01 –0.03 –0.03 –0.08 0.11 0.72 2.9±0.70 5-3人材育成
79 職場の保健師同士の交流を積極的に持つ. –0.08 –0.10 0.08 0.01 0.07 0.19 0.09 0.47 3.1±0.65
76 最新情報を得るための手段を知っている. 0.14 0.08 0.03 0.00 0.06 –0.02 –0.05 0.46 3.1±0.57
合計 0.96
回転後の因子寄与 13.68 13.09 10.75 9.10 9.76 10.74 7.22 5.71
因子間相関 第1因子 1.00 0.60 0.46 0.42 0.54 0.54 0.48 0.34
第2因子 1.00 0.46 0.53 0.50 0.47 0.41 0.29
第3因子 1.00 0.46 0.46 0.61 0.46 0.42
第4因子 1.00 0.36 0.49 0.15 0.40
第5因子 1.00 0.50 0.35 0.34
第6因子 1.00 0.31 0.42
第7因子 1.00 0.15
第8因子 1.00

注)因子抽出法:重みなし最小二乗法

回転法:Kaiserの正規化を伴うプロマックス法

a 保健師の活動領域:「自治体保健師の標準的なキャリアラダー」(厚生労働省,2016)の専門的能力に係るキャリアラダーおよび管理職保健師に向けた能力に係るキャリアラダーにおける保健師の活動領域

b キャリアレベル:A-1~A-5は専門能力に係るキャリアラダーにおけるキャリアレベルでA-1からA-5に向けてレベルが上がるB-1~B-4は管理職保健師に向けた能力に係るキャリアラダーでB-1からB-4に向けてレベルが上がる

4. 信頼性の検討

尺度合計得点のCronbach’s α係数は0.96であった.また,各因子のCronbach’s α係数は,順に0.92,0.92,0.89,0.84,0.87,0.82,0.85,0.75であった(表2).

5. 妥当性の検討

各因子合計得点の平均は,全てにおいて後期が前期を上回った.第4因子【事例対応能力】,第8因子【自己研鑽能力】を除くすべての因子および尺度合計得点で有意差が見られた(表3).

表3  因子ごとの前期中堅期と後期中堅期の能力の差(N=593)
因子名 得点範囲 平均値 P
前期中堅期 後期中堅期
第1因子 地区活動能力 15–60 35.4 37.1 **
第2因子 地域ケアコーディネーション能力 11–44 25.9 27.5 **
第3因子 後輩支援・育成能力 7–28 18.0 19.0 **
第4因子 事例対応能力 8–32 22.8 23.1
第5因子 行政能力 6–24 15.1 15.8 **
第6因子 業務管理能力 7–28 19.0 19.4 *
第7因子 計画的人材育成能力 4–16 8.1 8.8 **
第8因子 自己研鑽能力 4–16 12.0 12.1
尺度合計得点 62–248 156.3 162.8 **

注)尺度合計得点は正規分布のためt検定.

他は正規性が確認されなかったためマンホイットニーU検定

* P<0.05 ** P<0.01

経験や体制の有無による比較では,中堅保健師実践能力合計得点は「プリセプターから指導を受けた経験」「統括保健師の配置」を除き,経験や体制のある群の得点が有意に高かった.「現任教育の状況」のうち「他部署への異動の経験」は第2因子【地域ケアコーディネーション能力】,「自費研修の受講」「学会参加」は第8因子【自己研鑽能力】において経験や体制のある群の得点が有意に高かった.人材育成経験の項目では,第3因子【後輩支援・育成能力】,第7因子【計画的人材育成能力】において経験や体制のある群で得点が有意に高かった.業務経験の項目では,「地区住民との課題の共有経験」と「事例検討会の企画経験」は全ての因子及び合計得点で経験や体制のある群で得点が有意に高かった.「保健計画策定担当経験」のある群では,第1因子【地区活動能力】,第5因子【行政能力】,第6因子【業務管理能力】といった計画策定に関係ある能力得点が有意に高かった(表4).

表4  現任教育の状況・職場体制・人材育成経験・業務経験の有無による尺度合計得点および各因子ごとの合計得点の比較 (N=593)
項目 選択肢 尺度合計得点 第1因子
【地区活動能力】
第2因子
【地域ケアコーディネーション能力】
第3因子
【後輩支援・育成能力】
第4因子
【事例対応能力】
第5因子
【行政能力】
第6因子
【業務管理能力】
第7因子
【計画的人材育成能力】
第8因子
【自己研鑽能力】
n 平均値 SD P 中央値 四分位範囲 P 中央値 四分位範囲 P 中央値 四分位範囲 P 中央値 四分位範囲 P 中央値 四分位範囲 P 中央値 四分位範囲 P 中央値 四分位範囲 P 中央値 四分位範囲 P
現任教育の状況 中堅保健師研修の受講 あり 297 164.0 4.8 ** 37.0 33.0~42.0 ** 27.0 24.0~31.0 ** 20.0 17.0~21.0 ** 24.0 22.0~24.0 ** 16.0 14.0~18.0 * 20.0 18.0~21.0 * 8.0 8.0~10.0 ** 12.0 11.0~14.0
なし 295 156.4 35.0 32.0~39.0 26.0 23.0~29.0 19.0 16.0~20.0 23.0 21.0~24.0 15.0 14.0~17.0 19.0 17.0~21.0 8.0 7.0~9.0 12.0 11.0~13.0
厚生労働省による研修の受講 あり 224 164.2 3.9 ** 37.0 32.0~41.0 28.0 24.0~32.0 ** 20.0 17.0~21.0 ** 23.0 22.0~24.0 ** 17.0 14.0~18.0 ** 20.0 18.0~21.0 ** 8.5 8.0~10.0 ** 12.0 11.0~14.0 **
なし 366 157.7 36.0 32.0~40.0 26.0 23.0~30.0 19.0 17.0~21.0 23.0 21.0~24.0 15.0 13.0~17.0 19.0 17.0~21.0 8.0 8.0~9.0 12.0 11.0~13.0
プリセプターから指導を受けた経験 あり 177 160.0 –0.1 36.0 32.0~40.0 27.0 24.0~30.0 19.0 17.0~21.0 23.0 22.0~24.0 16.0 13.0~18.0 19.0 17.5~21.0 8.0 8.0~10.0 12.0 11.0~13.0
なし 412 160.2 36.0 32.0~40.0 27.0 23.0~31.0 19.0 17.0~21.0 23.0 21.0~24.0 16.0 14.0~18.0 20.0 18.0~21.0 8.0 8.0~10.0 12.0 11.0~13.0
他部署への異動の経験 あり 222 163.6 3.4 ** 37.0 32.0~41.0 28.0 24.0~32.0 ** 20.0 17.0~21.0 ** 23.0 22.0~24.0 * 16.0 14.0~18.0 * 20.0 18.0~21.0 * 8.0 8.0~10.0 ** 12.0 11.0~13.0
なし 370 158.1 36.0 32.0~40.0 26.0 23.0~30.0 19.0 17.0~21.0 23.0 21.0~24.0 15.0 13.0~17.0 19.0 17.0~21.0 8.0 8.0~9.0 12.0 11.0~13.0
自費研修の受講 あり 452 161.3 2.5 * 36.0 33.0~41.0 * 27.0 23.3~30.0 19.0 17.0~21.0 23.0 22.0~24.0 16.0 14.0~18.0 19.0 18.0~21.0 8.0 8.0~10.0 12.0 11.0~14.0 **
なし 141 156.5 35.0 32.0~39.5 27.0 23.5~30.0 19.0 16.0~21.0 23.0 21.0~24.0 15.0 13.0~18.0 19.0 17.0~21.0 8.0 6.5~10.0 11.0 10.0~12.0
学会参加 あり 216 164.9 4.5 ** 38.0 33.0~42.8 ** 27.0 24.0~31.8 20.0 18.0~21.0 ** 23.0 22.0~24.0 16.0 14.0~18.0 * 20.0 18.0~21.0 * 9.0 8.0~11.0 ** 12.0 11.0~14.0 **
なし 375 157.4 35.0 32.0~39.0 26.0 23.0~30.0 19.0 16.0~21.0 23.0 21.0~24.0 15.0 13.0~17.0 19.0 17.0~21.0 8.0 7.0~9.0 12.0 11.0~13.0
職場体制 スーパーバイズを受ける機会 あり 384 162.3 3.7 ** 37.0 33.0~41.0 ** 27.0 24.0~31.0 * 19.0 17.0~21.0 * 23.0 22.0~24.0 ** 16.0 13.3~18.0 20.0 18.0~21.0 * 8.0 8.0~10.0 ** 12.0 11.0~13.0 *
なし 208 156.1 35.0 32.0~39.0 26.0 23.0~30.0 19.0 16.0~21.0 23.0 21.0~24.0 15.0 14.0~18.0 19.0 17.0~21.0 8.0 7.0~9.0 12.0 11.0~13.0
統括保健師の配置 あり 201 162.4 1.9 37.0 33.0~37.0 27.0 24.0~31.0 19.0 17.0~21.0 23.0 22.0~24.0 * 16.0 14.0~18.0 20.0 18.0~21.0 8.0 8.0~10.0 12.0 11.0~13.0
なし 387 159.1 36.0 32.0~40.0 27.0 23.0~30.0 19.0 17.0~21.0 23.0 21.0~24.0 15.0 14.0~18.0 19.0 18.0~21.0 8.0 8.0~10.0 12.0 11.0~13.0
人材育成経験 プリセプターとしての指導経験 あり 191 164.7 4.0 ** 37.0 33.0~42.0 * 27.0 24.0~31.0 20.0 18.0~21.0 ** 24.0 22.0~24.0 ** 16.0 14.0~18.0 ** 20.0 18.0~21.0 ** 9.0 8.0~11.0 ** 12.0 11.0~14.0 *
なし 399 157.9 36.0 32.0~40.0 26.0 23.0~30.0 19.0 16.0~21.0 23.0 21.0~24.0 15.0 13.0~17.0 19.0 17.0~21.0 8.0 7.0~9.0 12.0 11.0~13.0
学生実習担当経験 あり 360 162.0 2.9 ** 37.0 33.0~40.8 * 27.0 24.0~31.0 20.0 17.0~21.0 * 23.0 22.0~24.0 16.0 14.0~18.0 20.0 18.0~21.0 * 8.0 8.0~10.0 ** 12.0 11.0~13.0
なし 232 157.3 35.0 32.0~40.0 26.0 23.0~30.0 19.0 16.3~21.0 23.0 21.0~24.0 15.0 13.0~17.0 19.0 17.0~21.0 8.0 7.0~9.0 12.0 11.0~13.0
業務経験 地区住民との課題の共有経験 あり 400 163.6 6.4 ** 37.0 33.0~42.0 ** 27.0 24.0~31.0 ** 20.0 17.0~21.0 ** 23.0 22.0~24.0 ** 16.0 14.0~18.0 ** 20.0 18.0~21.0 ** 8.0 8.0~10.0 ** 12.0 11.0~13.8 *
なし 187 152.7 33.0 31.0~37.0 25.0 23.0~29.0 18.0 16.0~20.0 23.0 21.0~24.0 15.0 13.0~17.0 19.0 17.0~20.0 8.0 7.0~9.0 12.0 11.0~13.0
事例検討会の企画経験 あり 291 165.2 6.5 ** 37.0 33.0~41.0 ** 28.0 25.0~32.0 ** 20.0 17.0~21.0 ** 24.0 23.0~25.0 ** 16.0 14.0~18.0 * 20.0 18.0~21.0 ** 8.0 8.0~10.0 ** 12.0 11.0~14.0 **
なし 299 155.1 35.0 32.0~39.0 25.0 22.0~28.0 19.0 17.0~20.0 22.0 21.0~24.0 15.0 13.0~17.0 19.0 17.0~21.0 8.0 7.0~9.0 12.0 11.0~13.0
保健計画策定担当経験 あり 458 162.1 4.5 ** 36.0 33.0~41.0 ** 27.0 24.0~31.0 19.0 17.0~21.0 ** 23.0 22.0~24.0 16.0 14.0~18.0 ** 20.0 18.0~21.0 ** 8.0 8.0~10.0 ** 12.0 11.0~13.0
なし 134 153.5 33.0 31.0~39.0 26.0 23.0~30.0 18.0 16.0~20.0 23.0 21.0~24.0 14.0 12.0~16.0 19.0 17.0~20.0 8.0 6.0~9.0 12.0 11.0~13.0

注)尺度合計得点は正規分布のためt検定,他は正規性が確認されなかったためマンホイットニーU検定

* P<0.05 ** P<0.01

本尺度項目とキャリアラダー(厚生労働省,2016)の内容の類似性に着目して,活動領域およびキャリアレベルを照らし合わせ,表2に示した.このうち本尺度は,専門的キャリアラダーでは「個人及び家族への支援」「集団への支援」「地域診断・地区活動」「地域組織活動」「ケアシステムの構築」「事業化・施策化」「PDCAサイクルに基づく事業・施策評価」「人材育成」,管理的キャリアラダーでは「政策策定と評価」及び「人事管理」の活動領域の能力を含んでいた.専門的キャリアラダーのキャリアレベルと内容の類似性の確認ができた本尺度項目数は,A-1で2項目,A-2で10項目,A-3で14項目,A-4で2項目,A-5で2項目だった.管理的キャリアラダーのキャリアレベルと内容の類似性の確認ができた本尺度項目数は,B-1で5項目だった.また,内容の類似性の確認のできなかったものは表現内容が違うためキャリアレベルの判断ができなかった.

基準項目との相関係数は尺度全体0.39,第1因子0.30,第2因子0.35,第3因子0.29,第4因子0.40,第5因子0.24,第6因子0.30,第7因子0.22,第8因子0.20(Spearmanの順位相関係数P<0.01)であり,全て統計的に有意な相関がみられた.

IV. 考察

本研究の目的は中堅保健師の実践能力を測定する尺度を開発し,中小規模市町村行政保健師を対象とした調査により尺度の妥当性と信頼性を検討することであった.これまでにも,「行政機関に働く保健師の専門職務遂行能力」尺度(佐伯ら,2003)など,行政保健師の実践能力を測定する尺度はあったが,本尺度の特徴は中堅保健師の実践活動を自己評価できる具体的な項目となっていることと8因子から総合的に中堅保健師の実践能力を測定するという点である.

1. 対象者の基本属性

現在の所属組織における保健師経験年数を尋ねた全国調査(日本看護協会,2015)(以下,全国調査)では6から10年目は全体の15.5%,11から20年目は21.2%との結果であった.これを中堅前後期別の割合とすると,前期で42.4%後期は57.6%であった.本調査における前期は40.3%,後期は59.7%であり全国の中堅前後期別の割合とほぼ同じであった.年齢構成は全国調査と比較すると前期で30歳代の割合が約9%多く40歳代の割合が約6%少なかった.後期では30歳代の割合が約16%多く40歳代の割合が約12%少なかった.これは,経験年数としては中堅期であっても,管理職である者は調査から除いたことが関係していると推測され,本調査は中堅期の中でも管理的立場にない行政保健師の特徴を示していると考えられる.

あらかじめ中小規模市町村と定義した市町村の状況は保健師数20人未満が87.3%,人口6万人未満が78.3%(厚生労働省,2011)で,再度,調査市町村を分類してみると所属する自治体の保健師数は20人未満が83.8%,自治体の人口については6万人未満が73.7%であった.これらの割合は回答者とほぼ同様であり,ある程度全国の中堅保健師を代表していると言える.

2. 尺度の信頼性・妥当性の検討

尺度の信頼性については尺度全体のCronbach’s α係数が0.96,各因子においても0.75から0.92であり,内的整合性が確保されていた.

因子分析による検討では,尺度案の作成当初に中堅保健師に必要な実践能力を①対人援助力,②地域診断能力,③業務管理能力,④地区管理能力,⑤ケアコーディネーション・地域ネットワーク化能力,⑥健康危機管理能力,⑦行政能力,⑧人材育成能力,⑨自己研鑽能力の9 項目に整理したが,回答に偏りのあった「健康危機管理能力」を除き,探索的因子分析を行った結果,【地区活動能力】【地域ケアコーディネーション能力】【後輩支援・育成能力】【事例対応能力】【行政能力】【業務管理能力】【計画的人材育成能力】【自己研鑽能力】の8因子からなる中堅保健師実践能力尺度の構成概念妥当性を確認した.因子分析の結果と抽出過程において設定した9項目のうち①対人援助力は【地区活動能力】5項目と【事例対応能力】8項目に分かれた.更に【地区活動能力】には②地域診断能力および④地区管理能力が加わって構成されていた.また,⑧人材育成能力は【後輩支援・育成能力】と【計画的人材育成能力】に分かれて構成され,【地域ケアコーディネーション能力】【行政能力】【業務管理能力】【自己研鑽能力】は抽出段階で想定した項目と同様の内容で選定された.本尺度は中堅前後期別の合計得点および各因子得点は後期が前期を上回り,経験年数が長いと実践能力が高く,行政機関に働く保健師の専門職務遂行能力尺度(佐伯ら,2004)と同様の傾向がみられた.

経験や体制の有無による比較では,「プリセプターから指導を受けた経験」以外は,経験や体制のある群で尺度合計得点が高かった.市町村(保健所設置市を除く)では特別区や保健所設置市といった大規模自治体と比べてプリセプターから指導を受けた経験のある者が少ない傾向(日本看護協会,2010)であることが報告されている.本調査が対象とした中小規模市町村においても職場の新任教育体制が確立されていなかった可能性があり,このことが関係したと推測できる.また,「地区住民との課題の共有経験」「事例検討会の企画経験」のある者において,すべての因子得点が有意に高かった.また,「保健計画策定担当経験」のある者は【地区活動能力】【行政能力】【業務管理能力】といった計画策定に関係のある因子得点が有意に高かった.つまり,本尺度における中堅保健師実践能力は,能力に関係すると仮定した経験や体制がある者の方が高く,構成概念は妥当であると考える.

本尺度項目と専門的キャリアラダーとの関係性においては,キャリアレベルと内容の類似性が確認できた30項目のうちA-2及びA-3であった項目は80%の項目であった.A-2・A-3はキャリアレベルの中間付近にあたり,本尺度で定義した経験年数6~20年の中堅期の能力と同程度と推測できる.また,中堅保健師に求められる能力は「個から集団へ,事業化へネットワーク化へと発展する力」「地域ネットワークの構築」「新たな資源開発へ」(永江,2012)と表現されるように発展的に課題を解決する能力が求められている.本尺度においても,地域の課題を主体的に把握し,住民や関連職種と直接関わりながら資源開発や施策化を実現していくといった発展的な課題解決の実践能力の内容を含んでおり,概ね中堅期の能力を表しているといえる.また,本尺度項目を管理的キャリアラダーのキャリアレベルと比較すると,行政保健師の活動領域の「危機管理」を除く「政策策定と評価」および「人事管理」で「係長級への準備段階」に当たるキャリアレベル項目を含んでいた.これは,本尺度項目では「住民の健康の保持増進のために必要な専門的な意見を上司や組織に提案する」「職場の人材育成の課題を把握し改善の提言をする」などと表現され,組織の発展に向けての中堅期の能力を含んでおり,管理的な役割を担える能力の習得状況についても自己評価できる項目となっている.

一方,専門的キャリアラダーのキャリアレベルに,内容の類似性が確認できなかった本尺度項目32項目は,「担当している地区(または市町村)の地区組織の課題解決のための方策を住民とともに考える」「日頃の住民組織(民生委員など)との関わりから潜在化しているケースを発見する」などで,具体的な活動レベルの能力を表している項目であった.これらの項目には,協働や連携,エンパワメント,潜在ニーズを顕在化するなど,行政保健師活動に重要な能力が含まれている.これは,キャリアラダーの「保健師の活動基盤」における「保健師の活動の理念である社会的公正性・公共性について理解し,活動を倫理的に判断する能力」に相応する内容を持つと考えられる.また,専門的キャリアラダーにおける「情報管理」能力も本尺度項目では質問項目として表現されていない.「情報管理」は行政保健師業務の全般にわたって考慮すべき事項であるが,本尺度の開発にあたって,保健師業務ごとに項目を開発していった経緯から項目としてあがらなかったことが考えられる.

以上のことより,本尺度の項目はキャリアラダー(厚生労働省,2016)の活動領域項目と内容において類似性があり,「情報管理」以外の,概ね全般的な行政保健師能力を抽出していると考える.

3. 本研究の限界と課題

本調査の回収率は50.9%であり,回答した中堅保健師は意欲の高い者であることを考慮すると,実態より良い結果を導き出している可能性がある.また中堅保健師の実践能力尺度の開発に当たっては中小規模市町村で検証を行ったため,大規模自治体や極小規模自治体での検証は行っていない.自治体規模における中堅保健師実践能力の測定可能性については,今後の課題としていきたい.

また,尺度案の作成にあたり再テスト信頼性を確認していない点では再現性に課題がある.本尺度の基準項目との関係性では,尺度得点に有意な弱い正の相関が認められたのみであり,1項目の自作の基準項目であったため基準としての適切性で課題が残った.

さらに「健康危機管理能力」については「経験がなくわからない」との回答が多く,今回の探索的因子分析には含めることができなかった.しかし健康危機管理は新任期から必要とされる能力であることから,今後質問内容や表現を再検討し,尺度に組み込んでいくよう検討したい.

V. 結論

中堅保健師の実践能力を測定する尺度を開発し,中小規模市町村に勤務する保健師を対象とした調査により尺度の妥当性と信頼性を検討し,以下の結論を得た.

因子分析の結果,【地区活動能力】【地域ケアコーディネーション能力】【後輩支援・育成能力】【事例対応能力】【行政能力】【業務管理能力】【計画的人材育成能力】【自己研鑽能力】の8つの因子からなる62項目の中堅保健師実践能力尺度を開発した.

尺度全体および各因子において,内的整合性が確保され信頼性を確認した.また,内容妥当性,構成概念妥当性が確認されたが,基準関連妥当性については十分な確保とまではいかなかった.以上により本尺度は,中堅保健師の実践能力尺度として限界はあるものの,一定の信頼性・妥当性を有すると考える.今後は大規模・極小規模自治体の保健師を対象とした検討が必要である.

謝辞

本研究を実施するにあたり調査にご協力いただきました全国の中小規模市町村保健師の皆様に深く感謝申し上げます.

本研究は国際医療福祉大学医療福祉学研究科に提出した修士論文の一部を再分析しまとめたものである.第4回日本公衆衛生看護学会学術集会及び19th EAST Asian Forum of Nursing Scholarsでその一部を発表した.

文献
 
© 2018 日本公衆衛生看護学会
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