日本公衆衛生看護学会誌
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7 巻, 2 号
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巻頭言
研究
  • ~中小規模市町村における検討~
    渡部 瑞穂, 荒木田 美香子
    原稿種別: 研究
    2018 年 7 巻 2 号 p. 60-71
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/27
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    目的:中堅保健師の実践能力向上を目指して中堅保健師実践能力尺度を開発し,中小規模市町村でその信頼性と妥当性を検証することを目的とした.

    方法:自記式質問紙調査を実施した.中堅保健師実践能力に関する81の調査項目を作成し,全国の中小規模市町村816か所の保健衛生部門で働く保健師経験6~10年(前期中堅期)・11~20年(後期中堅期)各1名の保健師に行った.

    結果:回収率は50.9%で,有効回答率は44.6%だった.尺度項目すべてに回答した593件を分析に用いた.回答に偏りのあった健康危機管理等に関する項目を除き75項目を因子分析し,【地区活動能力】【地域ケアコーディネーション能力】【後輩支援・育成能力】【事例対応能力】【行政能力】【業務管理能力】【計画的人材育成能力】【自己研鑽能力】の8因子62項目が得られた.尺度全体のCronbach’s α係数は0.96であった.

    考察:行政中堅保健師実践能力尺度は,中小規模市町村では中堅保健師の実践能力を測定するものとして一定の信頼性,妥当性が確認された.

  • ―親の国籍による比較―
    鈴木 良美, 森山 ますみ, 五味 麻美, 持田 恵理
    原稿種別: 研究
    2018 年 7 巻 2 号 p. 72-79
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/27
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    目的:本研究の目的は,発達障害を有する外国人小児への保健師による早期発見と支援や,その活動上の困難を,親の国籍による違いも踏まえて明らかにすることである.

    方法:外国人人口の多い上位100市区町村保健センター241ヵ所へ,無記名自記式質問紙を郵送した.

    結果:48ヵ所から回答を得た.健診での外国語版質問紙や公的通訳の活用は,外国人人口の多い本調査の対象自治体でも6割程度であった.発達障害を有する外国人小児への保健師活動の困難は,言葉や文化の違いを背景に,情報収集や判断という支援の初期段階からすでに生じていた.また南米よりもアジア系外国人が多い自治体の方が,保健師が活動上の困難を感じる割合が高い項目が多かった.

    考察:今後,発達障害を有する外国人小児の早期発見と切れ目ない支援のためには,さらなる言語的支援体制の整備や,保健師と外国人双方の理解の促進とそのための情報源の体系化などが求められる.

  • 高橋 和子, 大森 純子, 田口 敦子, 齋藤 美華, 酒井 太一, 三森 寧子
    原稿種別: 研究
    2018 年 7 巻 2 号 p. 80-90
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/27
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    目的:今後の保健事業での活用に向けて,向老期世代の“地域への愛着”と健康関連QOLとその他の要因との関連性を明らかにする.

    方法:首都圏近郊のA県B市に在住する50~69歳の住民1,000人を対象に,郵送法による自記式質問紙調査を行った.調査内容は,“地域への愛着”の他,属性や地域との関わり・交流等を把握した.分析方法は,各変数と“地域への愛着”尺度の合計点および4つの下位尺度得点との関連性を検討した.

    結果:“地域への愛着”は,性別,居住形態,居住年数,地域住民との付き合いの程度,地域のサークル等での趣味活動の経験,望ましい地域住民との付き合いの程度,地域の活動への参加意向,ソーシャル・サポート,健康関連QOLとの関連があり,下位尺度では異なる関連性も認められた.

    考察:住民同士の交流を図り,下位尺度に関する地域への愛着を育むことで他の関連要因と相乗的に作用し,向老期の健康維持に寄与する可能性が示唆された.

  • 東 美鈴, 松田 宣子
    原稿種別: 研究
    2018 年 7 巻 2 号 p. 91-99
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/27
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    目的:成果創出に至った保健活動における保健師の役割の類型化を行うことである.

    方法:先行研究及び5名の保健師への面接調査より抽出した30項目からなる質問紙を用い,全国の保健所統括保健師に選出を依頼し,事例に係わった保健師から回答を得た.分析は記述統計及び主因子法,バリマックス回転による探索的因子分析を用いた.

    結果:235名のうち30項目に回答のあった205名(有効回答率41.5%)を分析対象とした.成果創出役割項目は4点満点中2.58点から3.71点で,探索的因子分析の結果,25項目6因子に精錬され,「戦略と政策提言」「生活実態の把握」「地域連携の推進」「変革への課題の判断」「住民等の主体性の醸成」「モニタリングと継続支援」に類型化された.

    考察:類型化された6つの役割により,健康課題に対し地域の変革を図るという変革の促進者の役割が示唆され,この役割を発揮することが保健師本来の役割の発揮に繋がると考える.

活動報告
  • 岡 順子
    原稿種別: 活動報告
    2018 年 7 巻 2 号 p. 100-107
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/27
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    目的:子どもの頃からの高血糖予防対策のため効果的な媒体の開発を通じて,地域との連携を強化することである.

    方法:保健所管内の高血糖に関するデータ分析,管内自治体の取組調査を実施し,その結果から,主たるターゲットを決め,目的を達成するための具体的な内容,予算確保方法等によって計画的に事業化を行った.また,保健所が有する既存の会議体を通じ,高血糖予防推進体制構築のための検討を行った.

    結果:主たるターゲットは幼児期から学童期とし,地域振興局の重点プロジェクトと位置付け,高血糖予防の啓発媒体の開発を行った.啓発媒体の制作や利活用に地域の人材の活用や既存の組織との連携を重視するソーシャルキャピタルの視点を取り入れたことによって連携が強化された.

    考察:ターゲットを明確にし,高血糖予防をキーワードに媒体の開発・活用を通じ,高血糖予防の理解が進み,地域全体での高血糖予防対策が加速することが確認できた.

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