2018 年 7 巻 3 号 p. 110-118
目的:高齢者にとっての地域活動への参加の意味を記述し,ソーシャル・キャピタルを醸成する地域活動の背景にある,社会的文脈を探究することとした.
方法:エスノグラフィーを用いて,A村B地域の高齢者12人への半構造化インタビュー,参加観察,地区踏査,インフォーマルインタビューによりデータを収集し分析した.
結果:B地域の高齢者にとっての地域活動への参加は〖日常が変わり,これまでと違う自分になる〗ことであり,〖地域の人とのつながりを取り戻す〗ことであった.そして,そのことにより〖安らぎのなかで生きる力が湧いてくる〗ことであった.
考察:地域活動への参加の意味には社会的文脈が関連しており,高齢者は「結い」を追憶し,失われたものを再生する共同行為により信頼や互酬性を取り戻し,安寧や生きる力を得られるものと考えられた.また,共同経験を通して社会的性格が変えられ,高齢者に変化がもたらされたと考えられた.