2020 年 9 巻 2 号 p. 91-100
目的:子育て中の母親の情報活用の実践力と小児救急医療受診の関連を検討することを目的とした.
方法:A県内の3歳児健診を受診する母親615人を対象に情報活用の実践力,小児救急医療受診に関して,質問紙調査を実施した.情報活用の実践力を独立変数,小児救急医療受診を従属変数とし,基本属性,教育歴,子どもの出生順位等の変数で調整した重回帰分析を行った.
結果:615人に調査票を配布し405人から回収した.最終解析対象者数は360人であった.情報活用の実践力合計得点が小児救急医療受診に関連しているかについて分析を行った結果,合計得点,6つの下位尺度は,いずれも有意な関連はみられなかった.
考察:情報活用の実践力と小児救急医療受診の関連は明らかではなく,母親の不安や子どもの状態の判断,病気の対処方法に関する知識や経験など,本研究で検証していない他の要因が,小児救急医療受診につながっている可能性が考えられる.
Objective: To examine the relation between mothers’ competency regarding their practical skills of Information Use and their children’s clinical emergency visits.
Methods: We recruited 615 mothers, from nine municipalities across a western prefecture of Japan, who brought their three-year-old children to regular health checkups. They were asked to complete questionnaires regarding how well they make practical skills of Information Use, how frequently they brought their children to clinical emergency visits from birth to the date of their health checkup (i.e., until age 3), and sociodemographic characteristics including educational attainment, order of children, family structure, and childrearing support. We used a multiple regression model to evaluate the relationship between mothers’ competency regarding their practical skills of Information Use and their children’s emergency clinical visits, and we also calculated beta coefficients and 95% confidence intervals.
Results: Of 615 participants, 405 completed the questionnaire, and 360 were included in the final analysis. On the basis of both total scores and six subscale scores, we found no clear association between mothers’ competency regarding practical skills Information Use and pediatric clinical emergency visits. Educational attainment (graduate school) and the presence of support for childrearing were associated with fewer clinical emergency visits.
Discussion: Despite the perceived importance of information literacy, mothers’ competency regarding practical skills of Information Use was not found to be associated with their children’s clinical emergency visits. This suggests that other factors, such as maternal anxiety and knowledge and practice concerning their children’s urgent conditions affect pediatric clinical emergency visits.
わが国ではインターネットが急激に普及しており,インターネットの人口普及率は83.5%と増加傾向で,いつでも簡単にインターネットが利用できる環境へと変化した(総務省,2017).教育現場においても,情報活用能力を学校教育で育成することの重要性が示されている(文部科学省,2010).情報教育の1つである情報活用の実践力は今後社会を担う子どもたちだけでなく,現代社会で生活している人々にも必要な能力である.
情報の多様化は,子育て世代の母親にも広がっている.育児の情報源についての先行研究では,親や友人が中心であるが,育児雑誌や本,インターネットも活用され,母親は,育児書やインターネットを頼りながら子育てを行っている現状であり(杉村ら,2016;田中ら,2017;草野ら,2015;横山ら,2017),子育て中の母親にとってこれらの情報源は欠かせないものである.しかしながら,何を信用したらいいのかわからない等,情報収集に困難を感じている母親は7割以上存在し(田中ら,2017),多様で膨大な量の育児情報に混乱する母親は育児不安をより感じている(坂間ら,2009).多様な情報源から必要な情報を収集し,活用していく能力は,子育て中の母親にも求められる.保護者を対象に調査した研究では,子育てに自信がある人,インターネットの利用頻度がほぼ毎日の人は,収集力,判断力,処理力で定義した基礎的情報能力が高いことを明らかにしている(住吉ら,2015).しかし,情報活用の実践力と母親の育児行動の関連性を検証した報告はない.
子育てに関する情報の中でも,行政の取り組みには,子どもの急病時の対応や小児救急医療に関するものがある.例えば,子ども医療電話相談事業#8000(厚生労働省,2004)に関する報告では,相談件数は年々増加しているが(厚生労働省,2004),一方で,#8000を知っている人は約30%であったと報告している研究もあり(松井ら,2016),子育て中の母親に十分に周知されていない.小児救急医療受診では,受診のタイミング,要否がわからないといった不安を抱えていることが報告されている(丹,2007).このように,小児救急医療については,様々なところで情報提供がされているが,これらの先行研究は,提供している情報が適切に子育て中の親子に伝わっているのか,小児救急医療受診にうまく活用できているのかについて明らかにしていない.よって,本研究では,子育てに関する情報の中でも小児救急医療に焦点を当て,子育て中の母親の情報活用の実践力と,小児救急医療受診の関連性を検討することを目的として実施した.小児救急医療受診は,当番医制度や時間外のかかりつけ医の利用も含まれる.しかし,子どもの急病時の時間外受診のうち,当番医・かかりつけ医への受診は,母親が日頃から子どもの病状について受診相談をしやすい環境を整えているなど救急時に対する準備性があり,情報活用能力以外の知識・行動力などが,当番医・かかりつけ医を除いた小児救急医療の受診と異なることが考えられる.そのため,本研究では,小児救急医療受診を当番医・かかりつけ医受診以外の受診と区分して,情報活用の実践力と小児救急医療受診の関連性について検証し,当番医・かかりつけ医受診との関連性についても補足的に分析し検証した.これにより,母親の情報活用の実践力に応じて保健指導や情報提供の方法を検討するための示唆を得ることができ,予防や急病時の対応等の小児救急医療受診に関わる必要な支援の提供を検討できる.
情報活用の実践力とは,情報及び情報手段を主体的に選択し活用していくための個人の基礎的な資質であり,必要な情報を主体的に収集・判断・表現・処理・創造し,受け手の状況などを踏まえて発信・伝達できる能力と定義した(文部科学省,2010).
小児救急医療受診とは,24時間の診療体制であり,救急搬送等も含まれているが,本研究における小児救急医療受診は,小児を対象とした救急医療の中で,休日や夜間等の通常診療時間外に医療機関を受診することと定義した.また,当番医・かかりつけ医受診は,休日や夜間等の通常診療時間外に当番医・かかりつけ医を受診することと定義し,本研究で定義する小児救急医療受診と区分した.
2. 対象者および調査方法調査開始前にA県内の3歳児健康診査の実施主体である27市町村の中から,2018年7月から10月の健診開催日を確認し,重複している場合は自治体をランダムに抽出し,13市町村へ調査協力を依頼した.承諾の得られた9市町村で開催される3歳児健康診査を受診予定の母親615人を対象とした.対象となった9市町村は,人口規模が1万2千人前後の町から,10万人前後の市が含まれており,A県内の中でも北部,南部問わず,沿岸部,山間部も含んだ自治体であった.また,年少人口1万人当たりの小児科医数は県全体の平均が11.6人であるのに対し,今回対象となった9市町村は,二次保健医療圏ごとに見ると,小児科医数平均以上の二次保健医療圏に属するものが3市町村と小児科医数平均以下の医療圏に属するものが6市町村含まれていた.
研究デザインは量的観察的横断研究で,無記名自記式質問紙調査を実施した.調査票の配布方法は実施機関の3歳児健康診査実施状況に応じて直接配布または郵送の2通りの方法を採用した.1つ目の方法は,承諾後に市町村の協力を得て,健康診査会場で研究者が直接対象者に研究目的や回答をもって同意を得ること等の倫理的配慮について説明したのち,質問紙を配布した.2つ目の方法は,実施機関が対象者に送付する3歳児健康診査の案内に説明文書と調査票を同封して配布し,文書にて倫理的配慮について説明した.回収は,当日会場にて研究者が研究への同意の確認をした上で直接対象者から手渡しで行った.
3. 調査内容調査内容は情報活用の実践力,小児救急医療受診,基本属性,社会経済状況等の項目を尋ねた.
情報活用の実践力は,高比良らによって作成され,信頼性,妥当性が確認されている,情報活用の実践力尺度を用いた(高比良ら,2001).この尺度は,文部科学省が示す,情報活用の実践力に焦点を当て開発されたものである.収集力,判断力,表現力,処理力,想像力,発信・伝達力の6因子54項目から構成され,「まったくあてはまらない」から「非常に当てはまる」の7件法で尋ねる.全54項目の合計得点(54点~378点の得点範囲)と各6因子の得点を算出した.各6因子の得点は,収集力,想像力,発信・伝達力は10~70点の得点範囲をとり,判断力,表現力,処理力は8~56点の得点範囲をとる.得点が高いほど,情報活用の実践力が高いと判断した.
小児救急医療受診は,当番医・かかりつけ医受診を除き,出生から3歳児健康診査までの期間に利用した回数を尋ねた.併せて,当番医・かかりつけ医受診の回数も尋ね,それぞれの受診回数に対して入院を要するような重症であると診断された回数も尋ねた.
基本属性,社会経済状態等の項目は,先行研究結果をもとに,年齢,配偶者の有無,同居家族(親と夫と子ども/夫と子ども/子ども/その他),最終学歴(中学校/高等学校/専門学校/短期大学/大学/大学院),職業(無職/専業主婦/フルタイム/パートタイム),医療・保育系資格の有無,健診対象の子どもの出生順位,育児における相談相手の有無,当番医の認知,かかりつけ医の有無,慢性疾患の有無,時間外に受診できる医療機関までの所要時間(自家用車),#8000の認知と利用経験(知らない/知っているが利用したことはない/利用したことがある)について尋ね,交絡変数とした.
4. 分析方法まず,各項目の記述統計を行った.次に,独立変数を情報活用の実践力(連続量)とし,主な従属変数を小児救急医療受診(連続量),補足的な従属変数を当番医・かかりつけ医受診(連続量)とした2つの単回帰分析を粗モデルとして解析した.続いて,年齢,配偶者の有無,同居家族,最終学歴,職業,医療・保育系資格の有無,健診対象の子どもの出生順位,育児における相談相手の有無,当番医の認知,かかりつけ医の有無,慢性疾患の有無,時間外に受診できる医療機関までの所要時間を交絡変数として調整した重回帰分析を調整モデルとして統計解析を行い,偏回帰係数(B)と95%信頼区間を算出した.
配偶者の有無,同居家族は,子育ての情報源となり,救急受診の判断にも影響を与えるとされており(石井ら,2002),子どもの急病時,同居家族などすぐに相談できる相手の有無は母親の情報収集から受診判断に影響があることが考えられる.学歴や職業などの社会経済状態は,健康の社会的決定要因でもあり(永田,2014;田中ら,2006),医療・保育関係資格の有無は,子どもの発達や疾患について知識があることにより健康関連の情報収集能力が強化される可能性があることから,これらは健康行動に関する重要な要因である.また,出生順位が低いほど救急受診率が下がること(渡部ら,2006),ひとりっ子は軽症受診の傾向があること(祖父江ら,2012)から,子どもの数が多く子育ての経験を積んでいる母親は,子育て情報や医療機関の受診に関する情報収集において,子どもを1人しか持たない母親に比べて違いがあると考えられる.育児における相談相手については,育児の情報源となり得る.かかりつけ医の有無,慢性的な病気の有無は,医療へのかかりやすさに影響を及ぼすことが想定される.当番医の認知は,救急医療体制の理解や適切な相談先の有無に関係する.時間外に受診できる医療機関までの所要時間は,受診のしやすさに影響する.これらの調整変数は,相関係数が0.7未満であることを確認し,モデルに投入した.
記述統計においては,情報活用の実践力合計得点を平均値 ±10点,6下位因子得点を平均値 ±5点のカットオフ値でそれぞれ3群に区分し,平均値付近の得点の人を中群とし,得点高群,低群を設けた.得点の幅の広い情報活用の実践力合計得点においては平均値 ±10点,6下位因子得点においては平均値 ±5点を統一したカットオフ値とした.小児救急医療受診,当番医・かかりつけ医受診においては,先行研究を参考に,各受診回数を0回,1~3回,4回以上の3群に分けてクロス集計に用いた(田中ら,2008;福井ら,2007a).単回帰および重回帰分析では,回数を連続量でモデルに投入した.統計学的分析は,SPSS ver. 20を用いた.
5. 倫理的配慮対象者には,自由意思に基づく任意の調査であること,対象者の同意の下に実施され,同意をしない場合にも不利益を被ることはないこと,健診受診とは関係のない調査であること,調査票への回答をもって同意を得たこととみなすこと,無記名で実施すること,調査の結果は学術的な研究に使用し,公表の際にもプライバシーは保護されること,データの分析中および研究終了後のデータ保管期間中,関連する資料やデータは厳重に保管されること,岡山県立大学倫理審査委員会の承認を得て実施すること等を説明文書に記載し,説明を行った.直接配布の場合には,研究者が直接文章と口頭で説明を行った.郵送の場合には,説明文書を調査票とともに同封し,文書にて説明を行い,回収時には文書を読んだことと口頭で同意方法の確認をした上で,直接回収した.本研究は岡山県立大学倫理審査委員会の承認を得て実施した(受付番号18-08,承認年月日2018年6月4日).
承諾の得られた9市町村で3歳児健診を受診予定の母親615人のうち,実際に3歳児健康診査を受診したのは554人であり,そのうち405人から調査票を回収した(回収率65.8%).小児救急医療受診と当番医・かかりつけ医受診の回数と情報活用の実践力尺度に欠損のあった45人を除いた360人を最終解析対象とした(有効回答率58.5%).
対象者の年齢は,平均33.6(±5.0)歳で,クロス集計を行った結果,年齢の分布を見ると,31~35歳が143人(39.7%)と最も多かった(表1).同居家族では夫,子どもと同居が252人(70.0%)であった.最終学歴は,中学校/高等学校が128人(35.6%),専門学校/短期大学が143人(39.7%),大学/大学院が89人(24.7%)であり,大学/大学院卒業が最も少なかった.調査時に3歳児健康診査を受診した子どもの出生順位は1人目179人(49.7%)と約半数が1人目であった.育児における相談相手も,355人(98.6%)がいると回答し,4人(1.4%)がいないと回答した.かかりつけ医については351人(97.5%)が持っている,8人(2.5%)は持っていなかった.
Total | 小児救急医療受診 | 当番医・かかりつけ医受診 | |||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
0回 | 1~3回 | 4回以上 | 0回 | 1~3回 | 4回以上 | ||||||||||
n | n | % | n | % | n | % | n | % | n | % | n | % | |||
年齢 | |||||||||||||||
平均(±標準偏差) | 33.6(±5.03) | ||||||||||||||
25歳以下 | 23 | 11 | (47.8) | 5 | (21.7) | 7 | (30.4) | 8 | (34.8) | 10 | (43.5) | 5 | (21.7) | ||
26~30歳 | 66 | 35 | (53.0) | 24 | (36.4) | 7 | (10.6) | 29 | (43.9) | 27 | (40.9) | 10 | (15.2) | ||
31~35歳 | 143 | 82 | (57.3) | 47 | (32.9) | 14 | (9.8) | 59 | (41.3) | 64 | (44.8) | 20 | (14.0) | ||
36~40歳 | 95 | 58 | (61.1) | 33 | (34.7) | 4 | (4.2) | 37 | (38.9) | 45 | (47.4) | 13 | (13.7) | ||
41~45歳 | 25 | 12 | (48.0) | 10 | (40.0) | 3 | (12.0) | 11 | (44.0) | 14 | (56.0) | 0 | (0.0) | ||
46歳以上 | 3 | 1 | (33.3) | 2 | (66.7) | 0 | (0.0) | 0 | (0.0) | 1 | (33.3) | 2 | (66.7) | ||
無回答 | 5 | 4 | (80.0) | 1 | (20.0) | 0 | (0.0) | 3 | (60.0) | 1 | (20.0) | 1 | (20.0) | ||
配偶者の有無 | |||||||||||||||
いる | 342 | 190 | (55.6) | 118 | (34.5) | 34 | (9.9) | 139 | (40.6) | 155 | (45.3) | 48 | (14.0) | ||
いない | 18 | 13 | (72.2) | 4 | (22.2) | 1 | (5.6) | 8 | (44.4) | 7 | (38.9) | 3 | (16.7) | ||
同居家族 | |||||||||||||||
親/夫/子ども | 80 | 48 | (60.0) | 26 | (32.5) | 6 | (7.5) | 35 | (43.8) | 33 | (41.3) | 12 | (15.0) | ||
夫/子ども | 252 | 135 | (53.6) | 90 | (35.7) | 27 | (10.7) | 100 | (39.7) | 116 | (46.0) | 36 | (14.3) | ||
子ども | 16 | 10 | (62.5) | 5 | (31.3) | 1 | (6.3) | 4 | (25.0) | 9 | (56.3) | 3 | (18.8) | ||
その他 | 11 | 9 | (81.8) | 1 | (9.1) | 1 | (9.1) | 7 | (63.6) | 4 | (36.4) | 0 | (0.0) | ||
無回答 | 1 | 1 | (100.0) | 0 | (0.0) | 0 | (0.0) | 1 | (100.0) | 0 | (0.0) | 0 | (0.0) | ||
職業 | |||||||||||||||
無職 | 4 | 4 | (100.0) | 0 | (0.0) | 0 | (0.0) | 4 | (100.0) | 0 | (0.0) | 0 | (0.0) | ||
専業主婦 | 111 | 73 | (65.8) | 35 | (31.5) | 3 | (2.7) | 55 | (49.5) | 45 | (40.5) | 11 | (9.9) | ||
フルタイム | 121 | 62 | (51.2) | 44 | (36.4) | 15 | (12.4) | 42 | (34.7) | 56 | (46.3) | 23 | (19.0) | ||
パートタイム | 122 | 63 | (51.6) | 42 | (34.4) | 17 | (13.9) | 46 | (37.7) | 59 | (48.4) | 17 | (13.9) | ||
無回答 | 2 | 1 | (50.0) | 1 | (50.0) | 0 | (0.0) | 0 | (0.0) | 2 | (100.0) | 0 | (0.0) | ||
最終学歴 | |||||||||||||||
中学校/高等学校 | 128 | 71 | (55.5) | 44 | (34.4) | 13 | (10.2) | 51 | (39.8) | 60 | (46.9) | 17 | (13.3) | ||
専門学校/短期大学 | 143 | 86 | (60.1) | 46 | (32.2) | 11 | (7.7) | 61 | (42.7) | 58 | (40.6) | 24 | (16.8) | ||
大学/大学院 | 89 | 46 | (51.7) | 32 | (36.0) | 11 | (12.4) | 35 | (39.3) | 44 | (49.4) | 10 | (11.2) | ||
医療・保育系の資格の有無 | |||||||||||||||
持っている | 92 | 56 | (60.9) | 29 | (31.5) | 7 | (7.6) | 42 | (45.7) | 36 | (39.1) | 14 | (15.2) | ||
持っていない | 264 | 145 | (54.9) | 91 | (34.5) | 28 | (10.6) | 104 | (39.4) | 124 | (47.0) | 36 | (13.6) | ||
無回答 | 4 | 2 | (50.0) | 2 | (50.0) | 0 | (0.0) | 1 | (25.0) | 2 | (50.0) | 1 | (25.0) | ||
子どもの出生順位 | |||||||||||||||
1人目 | 179 | 95 | (53.1) | 63 | (35.2) | 21 | (11.7) | 76 | (42.5) | 79 | (44.1) | 24 | (13.4) | ||
2人目 | 128 | 70 | (54.7) | 46 | (35.9) | 12 | (9.4) | 55 | (43.0) | 53 | (41.4) | 20 | (15.6) | ||
3人目以上 | 53 | 38 | (71.7) | 13 | (24.5) | 2 | (3.8) | 16 | (30.2) | 30 | (56.6) | 7 | (13.2) | ||
育児相談相手 | |||||||||||||||
いる | 355 | 201 | (56.6) | 119 | (33.5) | 35 | (9.9) | 145 | (40.8) | 161 | (45.4) | 49 | (13.8) | ||
いない | 4 | 2 | (50.0) | 2 | (50.0) | 0 | (0.0) | 1 | (25.0) | 1 | (25.0) | 2 | (50.0) | ||
無回答 | 1 | 0 | (0.0) | 1 | (100.0) | 0 | (0.0) | 1 | (100.0) | 0 | (0.0) | 0 | (0.0) | ||
当番医の認知 | |||||||||||||||
知っている | 308 | 175 | (56.8) | 103 | (33.4) | 30 | (9.7) | 113 | (36.7) | 146 | (47.4) | 49 | (15.9) | ||
知らない | 52 | 28 | (53.8) | 19 | (36.5) | 5 | (9.6) | 34 | (65.4) | 16 | (30.8) | 2 | (3.8) | ||
かかりつけ医の有無 | |||||||||||||||
あり | 351 | 198 | (56.4) | 120 | (34.2) | 33 | (9.4) | 141 | (40.2) | 159 | (45.3) | 51 | (14.5) | ||
なし | 8 | 5 | (62.5) | 2 | (25.0) | 1 | (12.5) | 5 | (62.5) | 3 | (37.5) | 0 | (0.0) | ||
無回答 | 1 | 0 | (0.0) | 0 | (0.0) | 1 | (100.0) | 1 | (100.0) | 0 | (0.0) | 0 | (0.0) | ||
医療機関までの所要時間(自家用車) | |||||||||||||||
10分未満 | 34 | 20 | (58.8) | 11 | (32.4) | 3 | (8.8) | 14 | (41.2) | 13 | (38.2) | 7 | (20.6) | ||
10~29分 | 153 | 87 | (56.9) | 49 | (32.0) | 17 | (11.1) | 61 | (39.9) | 72 | (47.1) | 20 | (13.1) | ||
30~59分 | 107 | 57 | (53.3) | 43 | (40.2) | 7 | (6.5) | 42 | (39.3) | 48 | (44.9) | 17 | (15.9) | ||
60分以上 | 33 | 13 | (39.4) | 12 | (36.4) | 8 | (24.2) | 8 | (24.2) | 19 | (57.6) | 6 | (18.2) | ||
無回答 | 33 | 26 | (78.8) | 7 | (21.2) | 0 | (0.0) | 22 | (66.7) | 10 | (30.3) | 1 | (3.0) | ||
慢性的な疾患の有無 | |||||||||||||||
あり | 49 | 20 | (40.8) | 24 | (49.0) | 5 | (10.2) | 13 | (26.5) | 20 | (40.8) | 16 | (32.7) | ||
なし | 301 | 175 | (58.1) | 96 | (31.9) | 30 | (10.0) | 128 | (42.5) | 138 | (45.8) | 35 | (11.6) | ||
無回答 | 10 | 8 | (80.0) | 2 | (20.0) | 0 | (0.0) | 6 | (60.0) | 4 | (40.0) | 0 | (0.0) | ||
重症例 | |||||||||||||||
あり | NA | 0 | (0.0) | 27 | (75.0) | 9 | (25.0) | 0 | (0.0) | 28 | (65.1) | 15 | (34.9) | ||
なし | NA | 203 | (62.8) | 94 | (29.1) | 26 | (8.0) | 147 | (46.5) | 133 | (42.1) | 36 | (11.4) | ||
無回答 | NA | 0 | (0.0) | 1 | (100.0) | 0 | (0.0) | 0 | (0.0) | 1 | (100.0) | 0 | (0.0) | ||
#8000の認知,利用経験 | |||||||||||||||
利用したことがある | 150 | 65 | (43.3) | 63 | (42.0) | 22 | (14.7) | 54 | (36.0) | 71 | (47.3) | 25 | (16.7) | ||
知っているが利用したことはない | 172 | 112 | (65.1) | 48 | (27.9) | 12 | (7.0) | 73 | (42.4) | 78 | (45.3) | 21 | (12.2) | ||
知らない | 37 | 25 | (67.6) | 11 | (29.7) | 1 | (2.7) | 19 | (51.4) | 13 | (35.1) | 5 | (13.5) | ||
無回答 | 1 | 1 | (100.0) | 0 | (0.0) | 0 | (0.0) | 1 | (100.0) | 0 | (0.0) | 0 | (0.0) | ||
情報活用の実践力合計得点 | |||||||||||||||
平均(±標準偏差) | 216.62(±13.14) | ||||||||||||||
低群206点以下 | 78 | 38 | (48.7) | 28 | (35.9) | 12 | (15.4) | 32 | (41.0) | 32 | (41.0) | 14 | (17.9) | ||
中群207~225点 | 212 | 120 | (56.6) | 76 | (35.8) | 16 | (7.5) | 86 | (40.6) | 100 | (47.2) | 26 | (12.3) | ||
高群226点以上 | 70 | 45 | (64.3) | 18 | (25.7) | 7 | (10.0) | 29 | (41.4) | 30 | (42.9) | 11 | (15.7) | ||
収集力合計得点 | |||||||||||||||
平均(±標準偏差) | 42.88(±4.62) | ||||||||||||||
低群37点以下 | 31 | 17 | (54.8) | 11 | (35.5) | 3 | (9.7) | 14 | (45.2) | 11 | (35.5) | 6 | (19.4) | ||
中群38~46点 | 251 | 137 | (54.6) | 89 | (35.5) | 25 | (10.0) | 101 | (40.2) | 115 | (45.8) | 35 | (13.9) | ||
高群47点以上 | 78 | 49 | (62.8) | 22 | (28.2) | 7 | (9.0) | 32 | (41.0) | 36 | (46.2) | 10 | (12.8) | ||
判断力合計得点 | |||||||||||||||
平均(±標準偏差) | 30.70(±360) | ||||||||||||||
低群25点以下 | 22 | 14 | (63.6) | 4 | (18.2) | 4 | (18.2) | 11 | (50.0) | 10 | (45.5) | 1 | (4.5) | ||
中群26~34点 | 294 | 160 | (54.4) | 108 | (36.7) | 26 | (8.8) | 117 | (39.8) | 131 | (44.6) | 46 | (15.6) | ||
高群35点以上 | 44 | 29 | (65.9) | 10 | (22.7) | 5 | (11.4) | 19 | (43.2) | 21 | (47.7) | 4 | (9.1) | ||
表現力合計得点 | |||||||||||||||
平均(±標準偏差) | 31.85(±3.80) | ||||||||||||||
低群26点以下 | 21 | 16 | (76.2) | 2 | (9.5) | 3 | (14.3) | 6 | (28.6) | 12 | (57.1) | 3 | (14.3) | ||
中群27~35点 | 292 | 158 | (54.1) | 105 | (36.0) | 29 | (9.9) | 123 | (42.1) | 126 | (43.2) | 43 | (14.7) | ||
高群36点以上 | 47 | 29 | (61.7) | 15 | (31.9) | 3 | (6.4) | 18 | (38.3) | 24 | (51.1) | 5 | (10.6) | ||
処理力合計得点 | |||||||||||||||
平均(±標準偏差) | 34.33(±3.42) | ||||||||||||||
低群29点以下 | 22 | 9 | (40.9) | 10 | (45.5) | 3 | (13.6) | 12 | (54.5) | 9 | (40.9) | 1 | (4.5) | ||
中群30~38点 | 303 | 176 | (58.1) | 100 | (33.0) | 27 | (8.9) | 120 | (39.6) | 137 | (45.2) | 46 | (15.2) | ||
高群39点以上 | 35 | 18 | (51.4) | 12 | (34.3) | 5 | (14.3) | 15 | (42.9) | 16 | (45.7) | 4 | (11.4) | ||
想像力合計得点 | |||||||||||||||
平均(±標準偏差) | 39.94(±3.70) | ||||||||||||||
低群34点以下 | 26 | 12 | (46.2) | 10 | (38.5) | 4 | (15.4) | 10 | (38.5) | 11 | (42.3) | 5 | (19.2) | ||
中群35~43点 | 283 | 159 | (56.2) | 97 | (34.3) | 27 | (9.5) | 117 | (41.3) | 129 | (45.6) | 37 | (13.1) | ||
高群44点以上 | 51 | 32 | (62.7) | 15 | (29.4) | 4 | (7.8) | 20 | (39.2) | 22 | (43.1) | 9 | (17.6) | ||
発信・伝達力合計得点 | |||||||||||||||
平均(±標準偏差) | 36.93(±3.78) | ||||||||||||||
低群31点以下 | 25 | 11 | (44.0) | 11 | (44.0) | 3 | (12.0) | 8 | (32.0) | 11 | (44.0) | 6 | (24.0) | ||
中群32~40点 | 287 | 164 | (57.1) | 97 | (33.8) | 26 | (9.1) | 121 | (42.2) | 131 | (45.6) | 35 | (12.2) | ||
高群41点以上 | 48 | 28 | (58.3) | 14 | (29.2) | 6 | (12.5) | 18 | (37.5) | 20 | (41.7) | 10 | (20.8) | ||
合計 | 360 | 203 | (56.4) | 122 | (33.9) | 35 | (9.7) | 147 | (40.8) | 162 | (45.0) | 51 | (14.2) |
重症例についてはそれぞれの受診の回数のうち重症例があったか.
情報活用の実践力合計得点は±10点,それ以外の合計得点は±5点で3群に分割した.
小児救急医療受診を0回,1~3回,4回以上の3群に分けてクロス集計を行った結果,小児救急医療受診は,0回203人(56.4%),当番医・かかりつけ医受診は,0回147人(40.8%)であった.また,年齢は小児救急医療受診が4回以上は25歳以下で30.4%と最も多かった.当番医・かかりつけ医受診が4回以上は46歳以上で66.7%と最も多かった.小児救急医療受診が0回は子どもの出生順位3人目以上で71.7%と最も多く,小児救急医療受診が4回以上は子どもの出生順位1人目で11.7%と最も多かった.小児救急医療受診の最小値は0回,最大値は40回で,当番医・かかりつけ医受診の最小値は0回,最大値は50回であった.いずれの最大値も分布を確認し外れ値ではないと判断し分析に含めた.
情報活用の実践力合計得点について,本研究対象者の平均値は,216.6点(±13.1)であった.また,平均値付近の得点の人を中群とした場合,高群,低群と比較できるように平均値 ±10点を基準として3群に分けて集計した結果では,小児救急医療受診4回以上は合計得点の低群で15.4%と最も多かった.当番医・かかりつけ医受診においても,4回以上は合計得点低群で17.9%と最も多かった.小児救急医療受診においても,当番医・かかりつけ医受診においても,得点低群は受診回数が多い傾向にあった.
#8000の認知と利用経験についての回答分布を見た結果では,知らないと回答した人は37人(10.3%),知っているが利用したことはないと回答した人は172人(47.8%),利用したことがあると回答した人は150人(41.7%)であった.この2つの回答を合わせると322人(89.4%)であり,約9割の人が#8000を知っていた.
2. 情報活用の実践力と小児救急医療受診の関連性情報活用の実践力合計得点と小児救急医療受診,当番医・かかりつけ医受診の関連性について単回帰分析,重回帰分析を行った結果,関連は見られなかった(表2).また,情報活用の実践力の各6下位因子得点と小児救急医療受診,当番医・かかりつけ医受診の関連性について単回帰分析,重回帰分析を行った結果においても,有意な関連は見られなかった(表3).
小児救急医療受診(回数・連続量) | 当番医・かかりつけ医受診(回数・連続量) | |||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
粗モデル | 調整モデル | 粗モデル | 調整モデル | |||||||||||
非標準化係数 | Bの95.0% 信頼区間 |
非標準化係数 | Bの95.0% 信頼区間 |
非標準化係数 | Bの95.0% 信頼区間 |
非標準化係数 | Bの95.0% 信頼区間 |
|||||||
B | 下限 | 上限 | B | 下限 | 上限 | B | 下限 | 上限 | B | 下限 | 上限 | |||
情報活用の実践力合計得点(連続量) | 0.006 | –0.018 | 0.030 | 0.009 | –0.018 | 0.036 | –0.006 | –0.034 | 0.021 | –0.012 | –0.039 | 0.015 | ||
年齢(連続量) | –0.066 | –0.145 | 0.012 | –0.051 | –0.130 | 0.029 | ||||||||
配偶者の有無(Yes) | 0.121 | –2.646 | 2.887 | 1.536 | –1.243 | 4.316 | ||||||||
同居家族 | 親/夫/子ども | 0.640 | –0.255 | 1.536 | –0.325 | –1.220 | 0.571 | |||||||
夫/子ども | –0.062 | –2.688 | 2.565 | –0.966 | –3.603 | 1.671 | ||||||||
子ども | –0.705 | –3.322 | 1.912 | –0.522 | –3.162 | 2.117 | ||||||||
その他 | NA | NA | ||||||||||||
職業 | 無職 | –0.645 | –6.267 | 4.976 | –1.532 | –7.184 | 4.121 | |||||||
専業主婦 | –0.184 | –4.586 | 4.219 | 0.370 | –4.058 | 4.798 | ||||||||
フルタイム | 0.528 | –3.883 | 4.939 | 0.911 | –3.525 | 5.347 | ||||||||
パートタイム | 1.203 | –3.190 | 5.597 | 1.019 | –3.402 | 5.440 | ||||||||
最終学歴 | 中学/高等学校 | NA | –0.605 | –1.578 | 0.368 | |||||||||
専門/短期大学 | 0.106 | –0.860 | 1.072 | NA | ||||||||||
大学/大学院 | 0.980 | –0.014 | 1.974 | –1.119 | –2.053 | –0.184 | ||||||||
医療・保育系資格の有無(Yes) | 0.157 | –0.738 | 1.051 | –0.410 | –1.314 | 0.495 | ||||||||
子どもの出生順位(連続量) | –0.201 | –0.677 | 0.274 | 0.128 | –0.353 | 0.608 | ||||||||
育児相談相手の有無(Yes) | 1.071 | –2.751 | 4.892 | –19.296 | –23.124 | –15.468 | ||||||||
当番医認知の有無(Yes) | –0.628 | –1.734 | 0.478 | 1.083 | –0.027 | 2.193 | ||||||||
かかりつけ医の有無(Yes) | –1.627 | –4.213 | 0.958 | –0.111 | –2.713 | 2.491 | ||||||||
医療機関までの所要時間(分・連続量) | 0.004 | –0.019 | 0.026 | 0.012 | –0.011 | 0.035 | ||||||||
慢性疾患の有無(Yes) | 0.684 | –0.398 | 1.766 | 1.956 | 0.899 | 3.012 | ||||||||
重症例であったかどうか(Yes) | 1.677 | 0.479 | 2.875 | 1.009 | –0.096 | 2.114 |
B:標準化されていない係数,
調整モデルでは,いずれも,年齢(連続量),配偶者の有無(2値),同居家族(3値),職業(4値),最終学歴(3値),医療・保育系資格の有無(2値),子どもの出生順位(連続量),当番医認知の有無(2値),かかりつけ医の有無(2値),医療機関までの所要時間(分・連続量),慢性疾患の有無(2値),重症例であったか(2値)の変数をモデルに投入し調整した.
小児救急医療受診:休日や夜間等の通常診療時間外に当番医・かかりつけ医の受診を除く医療機関を受診するもので,出生から3歳児健康診査までの期間に利用した回数
※重症例についてはそれぞれの受診の回数のうち重症例があったか.
小児救急医療受診(回数・連続量) | 当番医・かかりつけ医受診(回数・連続量) | ||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
粗モデル | 調整モデル | 粗モデル | 調整モデル | ||||||||||
非標準化係数 | Bの95.0% 信頼区間 |
非標準化係数 | Bの95.0% 信頼区間 |
非標準化係数 | Bの95.0% 信頼区間 |
非標準化係数 | Bの95.0% 信頼区間 |
||||||
B | 下限 | 上限 | B | 下限 | 上限 | B | 下限 | 上限 | B | 下限 | 上限 | ||
情報活用の実践力 下位尺度得点(連続量) | |||||||||||||
収集力 | 0.011 | –0.057 | 0.078 | 0.008 | –0.070 | 0.086 | –0.054 | –0.133 | 0.025 | –0.041 | –0.119 | 0.038 | |
判断力 | 0.035 | –0.052 | 0.121 | 0.049 | –0.049 | 0.148 | 0.044 | –0.057 | 0.145 | 0.029 | –0.071 | 0.129 | |
表現力 | 0.039 | –0.043 | 0.121 | 0.045 | –0.048 | 0.138 | –0.061 | –0.157 | 0.035 | –0.024 | –0.118 | 0.069 | |
処理力 | –0.078 | –0.169 | 0.013 | –0.066 | –0.177 | 0.046 | –0.034 | –0.141 | 0.072 | –0.055 | –0.167 | 0.057 | |
創造力 | –0.021 | –0.106 | 0.063 | –0.023 | –0.122 | 0.077 | 0.086 | –0.012 | 0.184 | –0.031 | –0.131 | 0.069 | |
送信・伝達力 | 0.067 | –0.015 | 0.149 | 0.074 | –0.020 | 0.167 | –0.029 | –0.126 | 0.067 | –0.022 | –0.117 | 0.072 |
B:標準化されていない係数,
調整モデルでは,いずれも,年齢(連続量),配偶者の有無(2値),同居家族(3値),職業(4値),最終学歴(3値),医療・保育系資格の有無(2値),子どもの出生順位(連続量),当番医認知の有無(2値),かかりつけ医の有無(2値),医療機関までの所要時間(分・連続量),慢性疾患の有無(2値),重症例であったか(2値)の変数をモデルに投入し調整した.
小児救急医療受診:休日や夜間等の通常診療時間外に当番医・かかりつけ医の受診を除く医療機関を受診するもので,出生から3歳児健康診査までの期間に利用した回数
※重症例についてはそれぞれの受診の回数のうち重症例があったか.
交絡変数を投入して重回帰分析を行った結果では,情報活用の実践力合計得点と小児救急医療受診について,重症例の有無において,重症例ありの群で正の関連がみられた(B: 1.677[0.479, 2.875]).情報活用の実践力合計得点と当番医・かかりつけ医受診の重回帰分析を行った結果では,最終学歴の大学・大学院の群で負の関連(B: –1.119[–2.053, –0.184]),育児における相談相手がいるかどうかのうち,相談相手がいる群で負の関連(B: –19.296[–23.124, –15.468]),慢性的な疾患があるかどうかのうち,慢性疾患ありの群で正の関連がみられた(B: 1.956[0.899, 3.012]).
情報活用の実践力合計得点について,本研究対象者の平均値は,216.6点(±13.1)であった.情報活用の実践力に関する先行研究はまだ少なく,高比良らの報告によると,女子中学生の平均は222.6点,女子高校生の平均は216.0点,女子大学生の平均は233.7点であった(高比良ら,2001).本研究対象者の最終学歴は,中学校/高等学校が128人(35.6%),専門学校/短期大学が143人(39.7%),大学/大学院が89人(24.7%)であり,先行研究で明らかにされている対象集団の結果と比較すると,情報活用の実践力合計得点は同程度か,やや低かった.
小児救急医療受診が4回以下は25歳以下(30.4%)で最も多かった.先行研究では,育児者の年齢が低いことは,育児への自信のなさ等からなる,育児ストレスを高めていたことを明らかにしている(清水ら,2000).また,高齢の母親は,若い母親よりも診療所や救急受診が少なかったことも報告されている(Chen et al., 2006).年齢が低いことによる育児経験の少なさや自信のなさが,医療機関の受診が少ないことの背景にある可能性がある.
小児救急医療受診の回数の結果を見ると,小児救急医療受診では,0回203人(56.4%),当番医・かかりつけ医受診では,0回147人(40.8%)であった.小児救急医療受診は,約半数の人が受診経験なし,当番医・かかりつけ医受診は,約4割の人が受診経験なしという結果であった.先行研究でも,夜間救急受診がない人は40.4%であったと報告されている(福井ら,2007a).しかし本研究では,利用したことのない人も約半数おり,診療時間内に受診行動をとれている人や救急医療を必要としていない人が含まれているためと考えられる.
本研究では,9割の人は#8000を知っていた.しかし,先行研究では,#8000を認知している人は35.0%,利用したことがある人は2.1%であった(丹ら,2007).国の調査(日本小児科医会,2018)によると,#8000への相談件数は年々増加しており,情報が広まった結果,認知している人が増加したと考えられる.また,#8000を利用する年齢は3歳未満が最も多いという報告もあり(日本小児科医会,2018),3歳児健康診査で調査を実施したため,利用しやすい,または利用したことのある集団であったと考えられる.一方で,#8000の満足度は60.3%(日本小児科医会,2018)とも報告されており,相談対応や利用者の視点に立った情報提供を行う必要がある.
2. 情報活用の実践力と小児救急医療受診の関連性情報活用の実践力合計得点と小児救急医療受診の関連性について,単回帰分析,重回帰分析を行った結果,有意な関連は見られなかった.関連が見られなかった理由として,次のことが考えられる.まず,第一に,母親の情報活用の実践力が高い場合に,適切に小児救急医療受診や当番医・かかりつけ医受診の必要性を判断し,受診行動につながった場合と,情報活用の実践力が低く,不必要な小児救急医療受診や当番医・かかりつけ医受診につながった場合のどちらも,1回の受診と捉えている.このことは,情報活用の実践力の高低どちらもが従属変数を同じように高めたり,低くしたりするため,真の関連性を検証できなかった可能性がある.小児救急医療受診は,必要な時に利用できることが重要であるが,真に必要であったかどうかを本研究の質問紙調査では知ることができない.情報活用の実践力が高いことが,急ぐ必要のある受診とそうでない受診を母親が判断することを助けることにつながっていたかどうかについては検証できていないため,今後の研究において明らかにする必要がある.第二に,小児救急医療受診の回数と,入院や重症と診断された回数,受診時の症状を尋ねたが,重症と軽症の判断基準が曖昧であったこと,軽症で救急受診をした群も真に必要な受診である場合もあり,収集したデータだけでは受診時の状況を把握しきれていない.このような交絡の可能性がある変数を分析に反映できていないことが,関連性を明らかにできなかった要因である可能性がある.
情報活用の実践力の6つの下位尺度と,小児救急医療受診および当番医・かかりつけ医受診においても,有意な関連が認められなかった.必要な情報の主体的な収集と判断の能力は,どのような情報源にアクセス可能なのかといった周囲の環境にも影響を受ける.例えば,交絡変数として用いた育児経験の有無や相談できる身近な人の存在の有無,専門家とのネットワークの有無等が,情報の収集力や判断力を補う可能性がある.実際に,本研究でも相談相手の有無と小児救急受診行動は,有意な関連が認められている.6つの下位因子全てにおいて,交絡変数の影響に加え,測定しきれていない情報活用の実践力の各側面が存在する可能性があり,情報活用の実践力合計得点だけでなく6つの下位尺度においても,小児救急医療受診との関連性が薄まった可能性がある.さらに,情報活用の実践力以外の要因が受診行動に影響している可能性について,本研究モデルで扱った交絡変数では十分に検証できていない.
小児救急医療に関する先行研究では,小児救急の受診には保護者の不安が影響していること(福井ら,2007a)や,小児救急を受診する保護者は不安が高い(三品ら,2011;柳橋ら,2011)ことが明らかにされている.母親の応急手当の知識を聞いたものでは,「少し知っているが,応急手当てに自信がない」と回答したものが最も多いこと(宮武,2002),子どもの病気に対する思いとしては,受診や状態の判断,病気の対処方法に対する戸惑いや不安があること(枝川ら,2003)が明らかにされている.小児救急医療受診には,急病時の不安に加え,自信のなさや母親の判断,対処も影響していたことが推測される.よって,母親自身が家庭において,子どもの様子や症状を読み取り,対処する能力も必要であると考えられる.先行研究では,一方通行的な情報提供で取捨選択が困難な情報は,母親を一層不安にさせ,判断を困難にさせている(山下,2009)と報告されており,情報提供方法についても検討が必要であると考えられる.さらに,69.2%の保護者が子どもの急病についての指導を希望しており(福原ら,2006),支援の希望としては,気軽な電話相談,受診を教えてくれる電話救急相談や家庭での対応を教えてほしいという希望がある(福井ら,2007b)ことも述べられ,更なる支援の充実が望まれていることがわかる.これらの先行研究より,一方通行の情報提供ではなく,相談できる場の提供や電話相談の普及と質の向上,家庭での対処や判断の実践に焦点を置いた指導を充実させていくことが必要であると考える.
3. 研究の限界と課題A県内でも,中核市と政令市から研究協力が得られていないため,比較的人口規模の小さい自治体の人が対象であった.医療資源の少ない地域の人が多い可能性や,都市部居住者が少ない可能性があり,居住地域によって,データに偏りが出ていることが考えられ,都市部と山間部の比較のような地域特性をふまえた調査が必要である.また,小児救急医療受診,当番医・かかりつけ医受診の回数を尋ねた際,リコールバイアスによる誤分類が生じた可能性がある.さらに,小児救急医療受診が真に必要な状況であったかどうかを判断できないため,適切な小児救急医療受診との関連性は検証できていない.今後は,測定方法や研究デザインを検討する必要がある.また,今回の調査では,不安など母親の心理面に関する情報収集ができていないため,心理面の影響については評価できていない.今後,母親の心理面や子育て状況にも配慮した調査を行い,より家庭での現状に即した支援を検討していく必要がある.
情報活用の実践力と小児救急医療受診,当番医・かかりつけ医受診の回数には関連はなかった.
本研究の実施にあたり,貴重な時間を使い,研究にご協力くださいました自治体職員の皆様,アンケートにご回答いただきました3歳児健康診査を受診された皆様に心より感謝申し上げます.
本研究に開示すべきCOI状態はない.