日本公衆衛生看護学会誌
Online ISSN : 2189-7018
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ISSN-L : 2187-7122
9 巻, 2 号
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巻頭言
研究
  • ―子どもへの支援的な関わりを通して―
    有田 愛莉, 平野 美千代
    原稿種別: 研究
    2020 年 9 巻 2 号 p. 72-80
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/30
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    目的:吃音がある子どものために親が行う支援的関わりの中で親が抱く思いを明らかにする.

    方法:吃音がある幼児期または学齢期の子どもをもつ父親および母親10名に半構成的面接を実施し,質的記述的方法によりカテゴリを生成した.

    結果:9カテゴリが抽出され,親は子どもに対し【子ども自身が吃音に向き合うことを期待する】,【子どもが吃音による苦痛を抱えることが心配である】,【吃音による子どもの先行きが心配である】等の思いを抱き,親である自身に対し【子どもの吃音に責任を感じる】等の思いを有していた.そして周囲に対しては【吃音について知識のある専門家にそばにいてほしい】,【吃音の理解者がいることで安心できる】等と感じていた.

    考察:子どもの最も近くで支援的に関わっている親は日常的に吃音による子どもの苦難を懸念していた.また吃音の症状は今後変化する可能性があるため,子どもの将来や吃音への向き合いに期待する思いが存在していた.

  • 吉田 奈月, 蔭山 正子
    原稿種別: 研究
    2020 年 9 巻 2 号 p. 81-90
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/30
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    目的:統合失調症の当事者が親に暴力を振るった経験を記述することを目的とした.

    方法:親に暴力を振るった経験のある男性8名,女性1名に,親に暴力を振るった背景,暴力を振るった後の思いなどについて個別インタビューを行い,質的記述的に分析した.

    結果:親に暴力を振るった当事者は,《辛さが蓄積》《親に反発》《発散できない辛さ》《鬱憤を親にぶつけるか葛藤》《親への暴力の発露》《快感は一転して後悔》《辛さが霧散》《状況の捉え直し》《親との関係を改善》という経験をしていた.

    考察:支援者は,暴力が起きる前に,健康的にエネルギーを発散できるように支援することや,親子間の関係調整を行うことで暴力の発生を予防し得ると考えられた.また,暴力の発露は,リカバリーのきっかけになる可能性を秘めていることを視野に入れて関わることが望まれる.

  • 中田 弥沙, 井上 幸子
    原稿種別: 研究
    2020 年 9 巻 2 号 p. 91-100
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/30
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    目的:子育て中の母親の情報活用の実践力と小児救急医療受診の関連を検討することを目的とした.

    方法:A県内の3歳児健診を受診する母親615人を対象に情報活用の実践力,小児救急医療受診に関して,質問紙調査を実施した.情報活用の実践力を独立変数,小児救急医療受診を従属変数とし,基本属性,教育歴,子どもの出生順位等の変数で調整した重回帰分析を行った.

    結果:615人に調査票を配布し405人から回収した.最終解析対象者数は360人であった.情報活用の実践力合計得点が小児救急医療受診に関連しているかについて分析を行った結果,合計得点,6つの下位尺度は,いずれも有意な関連はみられなかった.

    考察:情報活用の実践力と小児救急医療受診の関連は明らかではなく,母親の不安や子どもの状態の判断,病気の対処方法に関する知識や経験など,本研究で検証していない他の要因が,小児救急医療受診につながっている可能性が考えられる.

  • 青木 亜砂子
    原稿種別: 研究
    2020 年 9 巻 2 号 p. 101-111
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/30
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    目的:中堅保健師が認識する「対象としての地域」とその認識に影響する経験を明らかにする.

    方法:対象者は,市町村に勤務する経験年数10~15年目の中堅保健師9名.データは,半構成的インタビューにて収集し,質的記述的に分析した.

    結果:認識は【地域資源を含めて個人・家族を捉える】【生活者の視点で地域を見る】【統計データや個別支援から地域の課題が見えてくる】をはじめとする8つのカテゴリに整理された.また,その認識に影響を及ぼした経験は【保健師活動の基本を再確認した経験】【先輩の姿から目指す保健師像を描いた経験】【行政保健師の専門性を自覚した経験】など10カテゴリを抽出した.

    考察:認識のカテゴリでは,地域を対象とするとらえ方の視点が整理された.また,多くの住民と関わる経験,住民の生活を実感する経験等が影響していることが考えられた.

活動報告
  • ―災害健康リスクアセスメントの実践―
    山村 奈津子
    原稿種別: 活動報告
    2020 年 9 巻 2 号 p. 112-120
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/30
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    目的:A市の統括的保健師と研究者が取り組んだアクションリサーチを通して,自治体で健康危機管理を推進しようとするとき何が困難となるのか,災害健康リスクアセスメント(Disaster Health Risk Assessment; DHRA)は健康危機管理を推進する起点になり得るのかを検討する.

    方法:DHRAの実践に関わる統括的保健師の取組内容を記録するとともに関連資料の収集を行った.収集データの質的内容分析を行い,アクションリサーチのプロセスを記述した.

    結果:健康危機管理を推進する困難として,保健部局の危機管理体制,保健師の連携体制,統括的保健師の準備状態に関することがあると分かった.統括的保健師と研究者が市役所の健康危機対応力に関するDHRAに取り組んだ結果,統括的保健師の中で健康危機管理に対する取組方針が確立し,具体的な行動計画の導出に繋がった.

    考察:DHRAの実践は,自治体保健師による健康危機管理の推進を後押しする可能性が示唆された.

学術実践開発委員会報告
災害・健康危機管理委員会報告
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