日本植物病理学会報
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原著
異なる薬剤散布回数下でのコムギ出穂期の気象条件と赤かび病の発生ならびにデオキシニバレノール汚染との関係
宮野 法近辻 英明大場 淳司鈴木 智貴佐藤 直紀
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2014 年 80 巻 4 号 p. 217-221

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抄録

宮城県のコムギ生産において赤かび病によるかび毒の蓄積を防ぐために薬剤による防除が行われており,品種により出穂後2~3回防除を奨励している.一方,生産現場からは防除の低コスト化や環境への負荷軽減の観点から防除回数を減らすような防除方法が求められている.今回,宮城県の小麦主要品種で赤かび病の抵抗性が中程度である「シラネコムギ」を用い出穂後の気象条件と防除回数,発病度,発病穂率,DON濃度との関係を宮城県古川農業試験場内圃場において2007年から2013年にかけて検討した結果,開花始期の防除によりDON濃度の減少がみられた.発病穂率は開花始期から10日間の降雨日数,発病度については開花始期から10日間の日最低気温,DON濃度については開花始期の11日目から20日間の降水量との間に正の相関関係が見られた.今回の結果では開花始期後1,2回の赤かび病防除で1.1 ppmのDON濃度出荷基準値を超えることはなかった.このことは宮城県における「シラネコムギ」の赤かび病防除は,多発年でない場合,開花始期の1回防除でDON濃度の出荷基準値以内に抑制が可能であることを示唆しているものと考えられた.

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© 2014 日本植物病理学会
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