日本植物病理学会報
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原著
茨城県のキョウナ圃場における萎凋病の発生実態
林 可奈子田中 弘毅宮本 拓也渡辺 賢太金田 真人鹿島 哲郎小河原 孝司
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2021 年 87 巻 1 号 p. 1-6

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抄録

茨城県のキョウナ(Brassica rapa L. Japonica group,別名ミズナ)栽培は,行方市を中心にハウス内での周年栽培が行われている.近年,キョウナが高単価となる夏期を中心に立枯れ症状を示す株が多発生し,問題となっている.そこで,本症状の主原因と考えられる萎凋病の発生実態を調査するとともに,茨城県園芸研究所内の萎凋病菌(Fusarium oxysporum f. sp. conglutinans)接種圃場における本病の発生消長と,土壌中の菌密度の推移を調査した.その結果,現地農家においては,2016年6月から2017年10月に採取した発症株からF. oxysporumが20.0~75.0%の割合で分離され,分離株の病原性も確認したことから萎凋病が立枯れ症状の主原因であることが示された.また,Rhizoctonia solaniも高率で分離されたことから,産地ではリゾクトニア病も混発していると考えられた.例年,本症状株が多発する農家圃場において,2016,2017年の2か年調査した結果,春から夏にかけて発生が増加し,秋から冬にかけて終息する傾向を認めた.2015年9月から2018年8月にキョウナの栽培を行った所内の萎凋病菌接種圃場においても,本病の発生は夏期に顕著となった.一方,F. oxysporumの土壌中の菌量は萎凋病の発生と異なり,0~15 cm,16~30 cmのいずれの深さにおいても,採取時期によらず概ね102 cfu/g乾土以上で検出された.本研究で得られた知見を基に,今後夏期に安定した栽培を継続するための防除対策を構築していきたい.

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