日本植物病理学会報
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翠菊及び百日草の立枯病
田杉 平司椎野 秀藏
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1940 年 10 巻 2-3 号 p. 278-293

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抄録

1. 本報告に於て翠菊並に百日草の子苗立枯病に就て記述せり。
2. 兩病害共子苗に發生して地際部を侵害し,立枯病状を惹起す。
3. 翠菊立枯病々原菌は分生胞子,卵胞子を形成す。藏卵器は多數の剛刺状突起を有す。本菌はオート・ミール寒天培養基上に於て最も良好の發育をなし,馬鈴薯寒天培養基上に於ても前者と大差なき發育をなせり。發育温度の範圍は10-29℃にして,發育最適温度は23℃内外なり。又培養基のpHとの關係に於て最も良好なる發育をなせるはpH 5.8-6.9の間なり。接種試驗の結果に依れば,翠菊,虞美人草,萵苣は最も良く侵され,百日草之に次ぎ,金盞花,金魚草は稍侵され難く,蕃茄は僅かに根部を侵害せらるゝに過ぎず,茄子,胡瓜,豌豆は全く侵されざりき。
4. 百日草立枯病々原菌も分生胞子,卵胞子を生じ,藏卵器に剛刺状突起を有す。馬鈴薯寒天培養基及菜豆寒天培養基上に於て最も良好なる發育をなし,合成培養基上に於ては胞子を生ずる事なかりき。發育温度の範圍は8-35℃にして,最適温度は24℃附近なるが如し。又發育最適pHは5.8-6.5の間にあり。接種試驗の結果に依れば本菌は百日草,翠菊,葉牡丹,桔梗,萵苣の子苗に對し最も強き病原性を示し,金魚草,金盞花,虞美人草之に次ぎ,胡瓜,蕃茄,茄子に對しては唯根部の變色を來すに過ぎず,豌豆に對しては全く病原性なかりき。
5. 翠菊の立枯病々原菌はPythium megalacanthumに酷似するも,本菌が游走子嚢を生ぜず且つ卵胞子の大さ稍々異なる點より,同種の變種としP. megalacanthum. var. Callistephiと命名せり。又百日草立枯病菌は病原性,分生胞子の大さに稍々差異あるも, P. spinosumと酷似するを以て同種の1系統と見做せり。

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