抄録
生育因子の存在下に稻熱病菌の榮養生理に就いて檢討し次の如き結果を得た。
1. 稻熱病菌はThiamine分子のPyrimidine及びThiazoleの兩者を必要とし,兩者を結合せしめる事が出來る。
2. Biotin及びThiamineの最低必要量を調べ,前者では0.004μg/10ml,後者では0.2μg/10mlの附近にある事を認めた。
3. 炭素源として糖及び多價アルコールに就いて實驗し,一般に前者が優る事を認めた。又SorboseとInositは本實驗の範圍に於ては利用されなかつた。
4. 窒素源に就いて檢討し,アンモニア態窒素が硝酸態窒素に優り,Glutamic acid, Asparagineはアンモニア態窒素に近い事を認めた。稻含有アミノ酸のうちではAspartic acid, Glutamic acid及びそのアミドが他種アミノ酸に優る事を認めた。又數種の有機酸には生育促進作用が認められ,特に其のアンモニウム鹽は優秀である。
5. 稻熱發菌の分離系統に就いて榮養要求を調ベたが,約50系統に就いては差異は認められなかつた。又紫外線照射によつて突然變異を起させて,Biotin, Thiamineの他にAdenineを要求する系統を分離し得た。