日本植物病理学会報
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白絹病菌の土壤に於ける腐生繁殖に就て
野瀬 久義
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1953 年 18 巻 1-2 号 p. 14-16

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抄録

本報告は白絹病菌, Hypochnus centrifugus の土壤に於ける腐生繁殖についての實驗及び觀察の結果を述べたものである。
(1) 白絹病菌は稻藁, 松葉, 甘藷蔓葉, 禾本科雜草, アスナロ葉, 麥稈及大豆稈の粗粉を材料とした寒天培養基に發育し, 菌核を形成する。又これ等の材料を土壤に混じたる場合にも菌絲を發育し, 菌核を形成する。その場合混合量が少なければ菌絲を伸長するも菌核を形成するに至らず, 後菌糸は枯死する。これ等の培養實驗に於て有機材料を混合せる土壤を蒸氣殺菌すれば, 殺菌しない場合に比して却つて發育不良なるを觀察した。有機材料を混合しない土壤に於ても, 菌絲の發育に同樣の傾向が認められる。
(2) 野外の圃場觀察によれば, 白絹病菌は寄主作物の存在せざる圃場に於ても枯死せる〓麥の落葉, 根, 落穗, 前作堀殘りの甘藷塊根, ムラサキカタバミの枯死株及び其の他の有機物等植物の枯死體に腐生的に發育し菌核を形成する。この腐生繁殖は白絹病菌の存在土壤では屡々見られるもので, 殊に梅雨期に多い。

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