日本植物病理学会報
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馬鈴薯疫病抵抗性の細胞生理学的研究
III. 疫病菌の侵入を受けた細胞の褐変に至る過程の時間の測定
富山 宏平
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1956 年 20 巻 4 号 p. 165-169

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抄録
馬鈴薯稚葉の中肋表皮細胞に疫病菌を接種し, その褐変に至る時間経過を測定した。この場合同一切片の連続観察では正常の褐変が起り難いので, 接種後一定時間毎に切片をつくり, 短時間にその変化を記録し, 後それらの観察結果を集計して統計的に時間を測定した。その結果によれば強抵抗性種間雑種41089-8では遊走子内容が大部分寄主細胞内に移行したのち, 早い場台にはほぼ10分間で Brown 運動をする顆粒が発生し, 遅い場合でも1時間前後で Brown 運動顆粒体が発生する。その後10分ないし1時間で細胞は黄変し, その後約10~30分で Brown 運動が停止し gel 化したと認められた。その後約10時間位の間は色が濃化して行くようである。
これに反して罹病性品種北海9号ではその各過程が遅く, 侵入後 Brown 運動顆粒が発生するまでに2~8時間, 変色する迄に7~10時間, gel 化するのに1~1.5時間を要する。上述のように, 侵入後の細胞変化の時間については抵抗性品種と罹病性品種の間に著しい差が見られる。しかし侵入は接種後おおむね12/3~2時間で始まり, 罹病性品種と抵抗性品種の間に殆んど差を見ない。
これらの観察で分裂後間もない小さい細胞では褐変進行が速やかで, その後成長するに従い遅くなるように見える。
以上の結果は展開直後の稚葉の中肋細胞における観測結果であつて, 一般に疫病菌の侵害を受けた細胞の変化は速やかで, 葉が老成するに従い, 侵入困難となり, 同時に侵入を受けた細胞の変化は遅くなるように見える。
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