日本植物病理学会報
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オリーブ炭疽病菌のMCP添加培養濾液より単離された一抗生物質
内藤 中人谷 利一東 純男
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1957 年 22 巻 2 号 p. 93-96

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抄録

(1) オリーブ炭疽病菌のMCP添加培養濾液より抽出した黄色油状粗物質をアセトンと水の混合液中に放置し,白色針状結晶,融点55℃の一抗生物質を純粋分離した。(2) 本物質は熱に安定で,冷水に不溶または難溶のほかは,熱水,多くの有機溶媒に溶解する。C, H, O, Clの元素よりなると推定され,アセトン:メタノール:水(30:5:65v/v)を溶媒とするRf値は0.73である。(3) 本物質を5,000倍の稀釈となるよう培地に添加すると,オリーブ炭疽病菌,稲胡麻葉枯病菌はほとんど発育せず,前者は40,000倍,南瓜白絹病菌は30,000倍でも抑制される。オリーブ炭疽病菌の分生胞子は3,000倍で全く発芽せず,20,000倍でも発芽率が低下し発芽管長も著しく短かい。他の病原菌,細菌にも抗菌性を示す。(4) MCPのオリーブ炭疽病菌に対するin vitroの抑制作用は,菌に対する直接的作用というよりも同剤添加により生成の誘致せられる本抗生物質に主因があるものと解せられる。

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