日本植物病理学会報
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タバコ黒色根腐病菌Thielaviopsis basicola (Berk. et Br.) Ferrarisの培養上の2, 3の性質
山口 洋一
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1957 年 22 巻 4-5 号 p. 204-210

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抄録

Thielaviopsis basicolaの3菌株を用い,in vitroにおける菌糸の生長と胞子形成におよぼす栄養,温度およびpHの影響を研究した。
1. T. basicolaはNO3-NをN源とするときは全く生長しないが,NH4-Nではかなりよく生長する。アミノ酸の多くはN源としてすぐれていた。菌糸の生長量と胞子形成量とからみれば,供試したN源のうちalanine, glutamic acidおよびasparagineが最もすぐれたN源であると思れる。
2. N源が胞子形成におよぼす影響は,菌株によつて異なり,No. 13はNH4の無機塩をN源とするとき多量の厚膜胞子を形成するが,No. 11では少なく,histidineでは逆の結果を示した。またleucineではNo. 11は相当量の厚膜胞子を形成したが,No. 13はほとんど形成しなかつた。N源の影響は胞子の種類によつても異なり,No. 13ではNH4の無機塩をN源とするとき厚膜胞子が多く内生胞子が少なかつたが,有機塩では逆であつた。
3. 液体培地にNa2HPO4またはCaCO3を加えるといずれも生長量を増加した。両者を併用すると生長量は,Na2HPO4の単用よりも増加したが,CaCO3の単用よりも減少した。合成培地のN源に(NH4)2 HPO4を用いたとき,固体培地ではかなりよく生長したが,液体培地では全く生長しなかつた。
4. No. 11の生長の最低温度は8~10℃,最高は32℃と思われる。最適温度は固体培地ではpH 5.5~7.0のとき26℃, pH 5.0またはpH 7.5のとき22℃であるが,pH 5.0~7.0で18-26℃の範囲ではかなりよく生長する。菌糸の生長にはpHよりも温度の影響が大きいが,内生胞子形成にはpHの影響も大きいようである。
5. pHは培養の始めに酸性側に変化し,後期にアルカリ側に変化することが多い。変化は培地によつて異なり,その幅は8℃から26℃までの温度では温度の高い方が著しい。

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