抄録
著者は前報において本邦の貯蔵温州蜜柑ではPenicillium菌による腐敗率が甚だ大きいが,そのうちでも特に緑黴病(P. digitatum)は発生率が高く,また貯蔵中の発生時期も青黴病(P. italicum)に比べて一般に早く,果実の腐敗速度も極めて速いことを報告した。更に両病原菌に対する柑果の罹病機作および生理について追究したいと考え,まず病原菌の営養摂取と果実成分との関連について実験を行い,P. digitatumは温州果皮と果肉成分とに対して異つた生育反応を示すことを認め,果実上における両病原菌の生育は果皮成分との間に密接な関連があることを知つた。
この研究について九大農学部吉井教授より懇篤な御指導を戴き,徳島果試安達場長より終始御指導と御援助を戴いた。謹謝の意を表する。