抄録
1. Ouchterlony 法に基く寒天ゲル中沈降反応によつて, オオムギ斑葉モザイク病ウイルス (BSMV) 罹病植物汁液中に抗BSMV血清に対して特異的に反応する抗原物質が存在することが認められた。
2. この抗原物質に対する反応は常に抗原を入れた凹みの近くに現われ抗原側に凹形を示す鋭三日月形または弓形の不透明な沈降帯であり, これはウイルスに対する反応であると考えられた。
3. 硫安塩析法による純化ウイルス試料を用いて調製した抗血清は, ウイルスに対する抗体のほかに, 健全植物蛋白に由来すると考えられる抗体をかなり含んでいた。
4. 分画遠心法による純化ウイルス試料を用いて調製した抗血清と健全植物汁液との間では, ほとんど反応が認められなかつた。
5. ウイルスに対する抗体以外のすべての抗体は寄主植物蛋白に由来するものと考えられた。