抄録
組織培養を用いて, ジャガイモ男爵の無ウイルス化を試みた。ジャガイモ男爵の塊茎から発芽した芽の先端の生長点の組織を0.2mmの長さに切りとり, Kassanis (1957) の培地を入れた小試験管に移植した。158個体を移植したうちで, バクテリアの混入した64個体を捨てた。残り94個体のうち18個体が移植後2∼6カ月で発芽しはじめた。発芽した組織はさらに大きな試験管に移し, 5cmぐらいの大きさの小植物体に発育したとき, 殺菌土壌に移植した。このようにして現在まで5個体のジャガイモを土壌に移殖したが, これら5個体はいずれもXウイルスを保有していなかつた。そのうち1個体について血清反応でSウイルスの検定を行なつたが, Sウイルスは検出されなかつた。これら5個体のうち3個体から塊茎を得ることができたので現在増殖中である。