日本植物病理学会報
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病原菌の宿主特異性と phytoalexin との関係
植原 一雄
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1964 年 29 巻 3 号 p. 103-110

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抄録
phytoalexin (PA) が各種菌類の菌糸の生育におよぼす作用に特異性が存在するか否かを明らかにするため, PA滲出液よりPAを振出して一層純化し, これを培地に添加して各種の菌類を培養し, その生育を比較した。その結果エンドウの莢, ナタネの莢およびソラマメの葉から得たPAは, いずれもそれらを生成した植物に寄生性を示さない菌に対してはその生育を強く阻害し, 殺菌的効果をも示すが, その植物の寄生菌に対しては前者に対するほど強い作用を示すことなく, またその植物の重要寄生菌ではないが寄生性は有すると思われる菌 (一般に多犯性菌) に対しては前二者の中間的抑制作用を示すことが認められた。これらのことから, 一般にある植物に寄生性を示さない菌はその植物の生成するPAによつて非常に強い生育阻害作用をうけるが, 寄生性を示す菌は前者ほど強い害作用はうけないものと考えた。
またエンドウの場合の試験において, これに寄生性を有すると思われる数種の菌は, エンドウのPAを不活性化する能力を有することが認められた。
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