日本植物病理学会報
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29 巻, 3 号
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  • 植原 一雄
    1964 年 29 巻 3 号 p. 103-110
    発行日: 1964/05/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    phytoalexin (PA) が各種菌類の菌糸の生育におよぼす作用に特異性が存在するか否かを明らかにするため, PA滲出液よりPAを振出して一層純化し, これを培地に添加して各種の菌類を培養し, その生育を比較した。その結果エンドウの莢, ナタネの莢およびソラマメの葉から得たPAは, いずれもそれらを生成した植物に寄生性を示さない菌に対してはその生育を強く阻害し, 殺菌的効果をも示すが, その植物の寄生菌に対しては前者に対するほど強い作用を示すことなく, またその植物の重要寄生菌ではないが寄生性は有すると思われる菌 (一般に多犯性菌) に対しては前二者の中間的抑制作用を示すことが認められた。これらのことから, 一般にある植物に寄生性を示さない菌はその植物の生成するPAによつて非常に強い生育阻害作用をうけるが, 寄生性を示す菌は前者ほど強い害作用はうけないものと考えた。
    またエンドウの場合の試験において, これに寄生性を有すると思われる数種の菌は, エンドウのPAを不活性化する能力を有することが認められた。
  • チオール基によるPMAの解毒における量的関係
    山田 忠男
    1964 年 29 巻 3 号 p. 111-119
    発行日: 1964/05/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. アンモニア緩衝液, 硝酸銀による電流滴定法により0.03∼0.6μMの-SHを定量した。この方法により, GSHで計算量の約96%-SHを測定した。
    2. 卵アルブミン, γ-グロブリン(牛), イーストエキス, ペプトンで前報の発芽試験の解毒に見合つた-SHを定量した。γ-グロブリン (牛) では-SHは痕跡しか存在しなかつた。
    3. GSHは塩酸酸性で比較的安定であつたが, 中性∼アルカリ性では酸化消失した。イネ除たんぱく液およびイーストエキスの-SHはGSH単独より消失しやすかつた。イネ汁液-SHも5°C保存中に減少したが, GSHより安定であつた。
    4. イネにおける-SHの分布は, 上位の葉身に最も多く, 生体重100g当たり約300μM, 次に下位の古い葉および未展開葉に多く, 葉鞘, 茎, 根では上位葉身の1/10以下であつた。-SH量はたんぱく質-Nと比例関係があつた。上位葉身の-SHは栄養生長期から生殖生長期に入るとやや減る傾向があつた。ただし, 汁液への溶出は急激に減少した。これは磨砕されにくくなるからである。
    5. イネ汁液-SHはPMAと等モルで反応消失した。イネ汁液に順次PMAを多く加えていくと当量点をこえてはじめて急激に完全な発芽阻害が起こつた。発芽後の生育阻害は当量の1/2をこえてから徐々に現われた。GSHの場合はこれよりやや阻害を早く受けた。
    6. いもち病防除のため散布する粉剤の稲葉付着量は葉中-SHの1/100∼1/1,000モルあるいはそれ以下である。滲透移行したPMAはメルカプチドとなり, 解毒されていると考えられる。
  • II. 塊茎での実験
    酒井 隆太郎, 冨山 宏平, 竹森 俊彦
    1964 年 29 巻 3 号 p. 120-127
    発行日: 1964/05/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    前報でジャガイモの地上部ではパーオキシダーゼ活性の消長は熟期と相関していて, その結果間接的に見掛上疫病抵抗性品種間差との相関が現われてくるものであるとした。しかし熟期その他の条件がほとんど同一である場合にパーオキシダーゼその他のフェノール関連生理因子が抵抗性と無関係かどうかについてはなお不明であつた。
    本研究では, 熟期その他の条件が比較的均一である材料として地下部塊茎を用いて22ジャガイモ品種のパーオキシダーゼ活性, フェノールオキシダーゼ活性, 呼吸, 全フェノール含量, オルソジフェノール含量と疫病抵抗性品種間差の相関をしらべた。その結果非親和的な race 0 (寄主は強抵抗性を示す) に対する抵抗性の品種間差では特にパーオキシダーゼ, フェノールオキシダーゼ, オルソジフェノール含量の高い品種は常に強い抵抗性を示した。これに反してそれらの活性あるいは含量の低い品種では一般に抵抗性の程度の弱いものが多かつたが強いものも含まれた。race 1 (寄主は罹病性) に対する抵抗性 (いわゆるほ場抵抗性であつて本質的には罹病性であるが, なお若干の抵抗を示す) では相関は弱いが, やはり若干の関係が認められた。
    以上の結果からいわゆるほ場抵抗性 (独立遺伝子抵抗性に対比する意味における) ではジャガイモの場合, 他の生理的条件 (熟期など) が比較的均一な場合にはフェノール関連生理因子の活性または含量の高い品種は本実験に関する限り常に疫病に対し抵抗性が強いが, しかしそれが低いからといつて必ずしも抵抗性が弱いとは限らないと推定した。
  • 日本梨黒星病菌の所属について
    田中 彰一, 山本 省二
    1964 年 29 巻 3 号 p. 128-136
    発行日: 1964/05/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. 日本梨黒星病の枝の越冬病斑は健全組織との境界に亀裂を生じ, 表面平滑, かつくぼんでいるのに対し, 洋梨のそれは表皮下に子座を生じ, 膨らんでいる。
    2. 日本梨菌は寄主体上における子座の発達がよく, 分生子梗が多数簇生するために病斑の色が濃く見える。しかし分生胞子の大きさは洋梨菌 (Venturia pirina) よりもやや短かい。
    3. 子嚢殼は洋梨菌が正球形, 高さ78∼200μであるのに対し, 日本梨菌は宝珠形あるいは丸味をおびた扁円錐形, 高さは50∼150μとかなり低い。
    4. 子嚢胞子は長短の2胞よりなる靴底形, その大きさは洋梨菌が11∼19μ×5.0∼6.3μ, 日本梨菌は10∼15μ×3.8∼6.3μと後者が小さく, 特に短胞が短かい。
    5. 接種試験の結果, 日本梨菌は日本梨の代表的品種のすべてに病原性を示すが, 洋梨に病原性がなく, また洋梨菌は Flemish Beauty に病原性を示すが日本梨には病原性がない。
    6. 本報並びに第1報23)の実験結果から考察して, 日本梨の黒星病菌は洋梨の黒星病菌とは別種のものと認め, これを Venturia nashicola n. sp. と命名する。
  • (第9報) 冬期低温による回復と病徴発現機作
    田浜 康夫
    1964 年 29 巻 3 号 p. 137-141
    発行日: 1964/05/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. 萎縮病桑樹を冬期約3カ月以上15°C以下の低温において落葉休眠させると, 罹病枝条は回復する。20∼30°Cの高温に保つと回復しない。一方, 地下部は冬期15°C以下の低温にあつても回復しない。
    2. 萎縮罹病枝条が春期にほぼ健全な葉を生じ, 生長後その先端部の葉に病徴の発現するのは発芽当時には枝条のウイルスが消失または減少しており, 樹の生長につれて地下部からのウイルスが移動し増殖して,病徴を現わすものと考えられる。
  • ゴマに対する温州萎縮ウイルスの汁液接種
    岸 国平, 田中 彰一
    1964 年 29 巻 3 号 p. 142-148
    発行日: 1964/05/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. 萎縮病罹病温州の若い枝葉を接種源とし, マメ科を除く12科27種の草本植物に汁液接種した結果, ゴマ (Sesamum indicum L.) だけが感受性を示し, 接種葉に local lesion を生じ, かつ上葉に葉脈の黄化およびえそ, 葉身の捲縮, 奇形などの症状を呈することを認めた。
    2. ゴマとササゲおよびインゲンとの間では供試ウイルスの交互接種が可能であつた。
    3. ゴマは温州ミカンが保毒する3種のウイルスのうち Satsuma dwarf virus だけに感受性を示し, tristeza virus および vein enation virus に対しては感受性を示さなかつた。
    4. 白ゴマ, 茶ゴマ, 黒ゴマの3種のうち白ゴマが最も感受性が高く, 茶ゴマがこれにつぎ, 黒ゴマは全身感染するが local lesion はほとんど現わさなかつた。
    5. 本ウイルスに対するゴマの感受性は, 生育段階による著差を現わさなかつたが, 本葉1∼2対展開期のものに接種した場合最も病徴が鮮明であり, 検定用に最適であつた。
    6. ゴマは接種直後に34℃以上の高温にあわせた場合は発病しなかつたが, 接種後8時間以上25℃に保てば, その後は高温にあわせても発病を妨げられなかつた。
    7. 罹病樹の新梢汁液を McIlvaine 緩衝液でpHを5.0∼8.0に調整した場合ゴマに感染を示し, とくに7.0∼8.0において発病が著しかつた。
  • 高梨 和雄, 岩田 吉人
    1964 年 29 巻 3 号 p. 149-154_1
    発行日: 1964/05/30
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    コムギから黒穂病に対し抵抗性を異にする3品種を用い, 感染初期の土壌温度を異にした場合, それぞれの品種の発病様相に差異を生ずるかどうかを調べた。また感染初期の幼植物の切片を作つて鏡検し, 侵入の難易, 菌糸の進展度と発病様相との関係をしらべた。
    1. 厚膜胞子を種子に接種し, 殺菌土に播種した後24日間, 土壌温度をそれぞれ5, 10, 15, 20, 25℃におき, 成熟後の発病様相を調査した。罹病性品種農林50号では10~20℃で発病株率98~99%, また発病株の大部分は主稈に発病がみられた。発病株についてみると発病分けつ茎率は96~98%であつた。25℃, 5℃では発病株率, 発病分けつ茎率いずれも10~20℃に比較し, 低かつた。中度抵抗性の農林61号では10~25℃で42~57%とかなりの発病株率を示したが, 主稈発病率はきわめて低く, ほとんどの株が分けつ茎のみに発病した。発病株について発病分けつ茎率は36~49%で農林50号より低かつた。5℃区は発病株率その他いずれも低かつた。抵抗性品種ユウヤケコムギでは全く発病がみられなかつた。以上のように供試3品種のいずれにおいても感染初期の土壌温度が発病様相に著しい影響を与えることはないことがわかつた。
    2. 厚膜胞子を接種した種子を15℃の土壌に播種し, 14日後の子苗について感染状況を鏡検し, また1部は成熟後の発病調査を行なつた。その結果ユウヤケコムギでは表皮細胞膜の侵入点に形成される厚いカルスによつて侵入が阻止され, まれに侵入が行なわれても表皮細胞内容の変性, 菌糸の死滅により, 隣接細胞への侵入が起こらなかつた。農林50号では多くの場合, 菌糸は表皮細胞膜にカルスの形成なく侵入するが, カルスが形成され, その後の菌の進展が阻止される場合もあつた。農林61号では菌の侵入状況は農林50号とあまり異ならないが, 表皮細胞膜のカルス形成は農林50号にくらべ多かつた。
    3. 成熟期の調査では発病株率は農林50号, 同61号, ユウヤケコムギでそれぞれ99, 63, 0%であつたが, 一方鏡検により子葉鞘柔組織内に菌糸のまん延している株率はそれぞれ100, 50, 0%で両者はほぼ平行した。また主稈発病株率は農林50号, 同61号, ユウヤケコムギでそれぞれ96, 9, 0%, 菌糸が子葉鞘柔組織を通り, 胚軸組織または分裂組織付近に達した株率はそれぞれ90, 25, 0%で, 平行的関係がみられた。以上のことから本病に対する品種の感染には, まず子葉鞘表皮細胞膜でのカルス形成, ついで侵入菌糸の進展度が大きな関係を有するものと考えられた。
  • 第1報 数種土壌病菌の土壌生育深度
    高橋 実, 川瀬 保夫
    1964 年 29 巻 3 号 p. 155-161
    発行日: 1964/05/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. 苗立枯病菌 Pythium aphanidermatum, Rhizoctonia solani (ソラマメ立枯病菌) および白絹病菌 Sclerotium rolfsii の土壌中における生育深度について, コンタクトスライド法と指標植物の病原性とによつて検討した。
    2. R. solani は10∼15cmの深さでも生育するが, S. rolfsii は土壌表面または浅層で生育し, P. aphanidermatum は両菌の中間に生育する。これらの結果は縦スライド法, 横スライド法または寄主植物を播種した場合にも同様である。
    3. 接種深度を変えて発病状態をみると, R. solani は5∼10cm, P. aphanidermatum は2.5∼10cmで発病するが, S. rolfsii は土壌表面に接種したときにおいてのみ発病した。これらの結果から発病程度は生育深度と傾向が同じであつて, R. solani は他菌に比較して最も深いところで生育する。
    4. 土壌中における菌糸の上下層への進展はR. solani, P. aphanidermatum が良好で, S. rolfsii は下層へ向つて著しく不良である。
  • 富永 時任
    1964 年 29 巻 3 号 p. 162-166
    発行日: 1964/05/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1962年9月, 農林省畜産試験場内 (千葉市) の試験ほ場で日本で初めて Xanthomonas phaseoli f. sp. alfalfae (Riker, Jones et Davis) Sabet によるアルファルファの斑点細菌病の発生が認められた。
    初め葉に水浸状の微細な円形斑点ができ, これは次第に暗褐色となり, さらに内部が淡黄色, 周縁暗褐色の直径2∼3mmの病斑となりそのまわりに黄色のかさ (暈) ができる。病斑は特に中肋に沿つた部分や小葉の先端, 周縁にできやすい。病斑が多数でぎると葉は落葉する。
    病原細菌を接種するとインゲンマメに Xanthomonas phaseoli による葉焼病と似た病斑を作る。
    病原細菌は形態的, 培養的, 生理的性質が Riker ら (1935), Patel ら (1949), Sabet (1959) の記載した細菌とほとんど変わらないので Xanthomonas phaseoli f. sp. alfalfae (Riker, Jones et Davis) Sabet と同定する。
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