カンキツ黒点病の温州ミカン果実における後期感染について実験しつぎのような結果を得た。
1. 黒点病菌を接種して人為的に保菌させた温州ミカンの枯枝 (=枝培養) および自然条件下で生じた黒点病菌保菌枯枝による接種試験, ならびに現地実態調査を行なつた結果, 11月上旬まで感染の起ることを確認した。各時期の発病度は, 11月上旬までの範囲においては, 果実の発育とは関係なく降雨条件に支配されることが推察される。
2. 接種試験において, 8月下旬以前の感染と以降の感染とでは, その病徴に明らかな差異のあることを認めた。8月下旬以前の感染による病徴 (=初期感染型病徴) は, 病斑が果面に突起し, 周囲に白い縁どりが認められるが, 8月下旬以降の感染による病徴 (=後期感染型病徴) は, 病斑が果面に突起せず白い縁どりもない。しかし果実の着色後も病斑の周囲に緑色を残すものが多い。
3. 広島県下における後期感染による発病程度は,初期感染と同等かやや高い傾向が認められた。