抄録
1. エンバク冠さび菌(Puccinia coronata Corda)の夏胞子を水滴に浮かべ,膨潤と小突起の経時的推移を明らかにするとともに,小突起と発芽管との識別についても検討した。
2. 休止胞子は浮遊後約20秒で体積が約2倍になる。このときすでに,生理的作用は活性化し,内容成分も発芽を阻害しない濃度に希釈されているようである。胞子体積は約20分後に最大(約3.3倍)となるが,発芽管伸長期にはいくぶん縮小する。
3. 浮遊後約8∼20分に発芽孔から1∼6(平均3.3)個の“ドーム型”小突起が突出する。その出現は気相がわよりも液相がわ半球において速かであるが,出現数は両半球間に差異がない。
4. “ドーム型”小突起はほとんど形態的変化を示さず最長3μにとどまるが,出現後約30∼50分にその1個(まれに2個)だけが“円筒型”に移行して急速に伸長を開始する。“円筒型”突起は乾燥による収縮性,薬剤抵抗性の点でも“ドーム型”突起とは異なるので,“円筒型”すなわち約3μ以上の突起を真の発芽管とし,それ以下のものはその過程の一器官とみなしたい。