タバコ立枯病菌の感染機構,および本菌に対するタバコの抵抗性に関する研究を進める目的で,放射性りん(
32P)による本菌の標識について検討した。
32P標識用培地としてシュークローズ加用ジャガイモ煎汁培地(PS培地)およびブィヨン培地(B培地)を用い,これらに1μc/mlの
32Pを添加し,30°Cで8∼72時間の培養によつて
32Pの吸収量を比較したところ,PS培地のほうが菌の増殖および
32P吸収量が良好であることを認めた。
PS培地において,菌が
32Pをとり入れる量は,培地中のりんの含量に支配され,KH
2PO
4を添加した量が多いほど少なく,無添加が最もすぐれていた。
PS培地に10
6/ml∼10
8/mlの菌を接種し培養すると,菌体当りの
32P吸収量は培養5時間までは,接種菌量に反比例した。実用的には10
7程度のものを接種し,48時間の培養によつて標識菌をうるのが効率がよい。
32Pの添加量と吸収量の関係を10
-1μc/ml∼10μc/mlの範囲で検討した結果では,菌体当りの吸収量は,
32Pの添加量の増加に比例して増加した。
標識菌の保存について培地および温度をかえて検討したところ菌体外への
32Pの溶出率は,10°Cと30°Cとでは前者が低く,培地の種類ではタバコ用水耕液に浮遊した場合が最も低く,井水,PS培地の順に増加した。
水耕液(30°C)における標識菌からの
32Pの溶出率は,1日後に約1%, 3日後で2%, 5∼10日後で約3%であった。
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