1969 年 35 巻 1 号 p. 36-40
土壌中にせい息する軟腐病細菌の増殖一生存と作物根のそれに対してもつ意義を解明する目的で,実験をおこなった。十字花科,マメ科,イネ科など10科に属する30種の作物を圃場に栽培し,一定の大きさに生育した各作物の根圏微生物を分析した。すでに,ビタミンナとコカブは調査以前に軟腐病の発生により枯死した。ハクサイ,シガツシロナ,コマツナ,チヂミユキナ,テオシント,ニラおよびトマトの根圏で軟腐病細菌の特異的な増殖が観察された。また増菌培養によりヒカリカブの根圏から本菌が分離された。一方,供試した7種のマメ科作物からは本菌を検出できなかった。さらに,ハクサイ栽培畑に自生していた,15種の雑草の根圏について同様な調査を試みた結果,ノゲシ,アカザおよびツユクサの3種の雑草の根圏から軟腐病細菌が分離された。これら供試植物根圏における軟腐病細菌の選択的な増菌作用は十字花科に属する作物で最も顕著であった。これらの結果から軟腐病細菌はハクサイおよびそのほか十字花科の作物に特異的な根圏ミクロフローラの一構成員であると推定される。