ジャガイモ品種S-41956および金時いもの外観健全株からPVSのほかに未知のウイルスが検出された。このウイルスは汁液接種によってジャガイモ農林1号実生,
Solanum demissum, S. villosum,ナス,トマト,
Nicotiana debneyi, Datura metel,ササゲ,
Chenopodium amaranticolor, C. capitatum, C. murale,センニチコウなどに対し寄生性を示した。また,ジャガイモの農林1号,男爵いも,オオジロなどの品種も感染発病した。モモアカアブラムシなど4種のアブラムシによっては伝搬されなかった。粗汁液中でのウイルスの不活化温度は65~70℃,希釈限度は5,000~10,000倍,保存限度は2~3日(約20℃)で,また,ウイルス粒子は長さ約650mμのひも状粒子であった。以上の結果から,本ウイルスはBagnallら(1956)が報告したジャガイモMウイルス(potato virus M)であると結論した。
PVMに感染したトマト葉汁液をエチルエーテル,四塩化炭素,硫安などを用いて部分純化し,これを家兎に注射して沈降反応で256倍の終末希釈濃度を有するPVM抗血清を得た。この抗血清はスライド法でも陽性の反応を示し,PVSともわずかながら陽性の沈降反応を示した。
圃場では農林1号,オオジロ,ケネベックの3品種のジャガイモでPVM感染による発病株が観察された。PVMによる病徴は葉裏のストリーク,葉表面の油ぎつた光沢,漣葉などが特徴である。PVM抗血清で調べた各品種のPVM罹病率は農林1号11%,オオジロ50%,ケネベック14%,男爵いも31%で,オオジロ,男爵いもでは無病徴で保毒されるものが多く,Saco, S-41956,金時いもはほとんど全株がPVMを保毒していた。
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