日本植物病理学会報
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砂丘地のナガイモ栽培における黒あざイモの発生とその原因となる有害物質について
西村 正暘林 真二千代西尾 伊彦奥田 純一郎佐藤 一郎田辺 賢二
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1969 年 35 巻 4 号 p. 286-293

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抄録
最近,鳥取県下の砂丘畑に栽培中のナガイモに黒あざ状の汚斑を呈する現象が多発し,商品上大きな障害を与えている。これは,6月中旬以降,とくに集中降雨につぐ急激な地温上昇を境として,急に発生する。いちじるしい場合には,ナガイモ皮面の裂開,奇形に発展することもある。しかし地上部には外観上なんらの異常も認められない
各種の調査の結果,これは寄生病害虫によるものではなく,有害な有機物の異常集積による土壌障害らしいことを観察した。栽培土壌の水浸出液について,ハツカダイコンの出芽時の幼根の伸長抑制能を指標として調査すると,その発生時期,発生土壌などを的確に知ることができた。
被害土壌の水浸出液から,黒あざの発生原因となる有害物質として,アセトアルデヒド,フルフラールアルデヒド,およびイソ吉草酸アルデヒドを単離同定した。なお黒あざの発生イモ部位は,地下15-25cmに位置するイモの部位に多いが,その部位の土壌中にはアセトアルデヒド含量も多かった。
黒あざイモの発生の誘因として,鶏糞などの有機質肥料の多用,殺線虫剤の施用,梅雨期の連続降雨とその後の土壌温度の急昇などが考えられる。砂丘畑では,これらが,土壌中の有機質の異常分解の結果,揮発性のアルデヒド類を一時的に集積させる原因となったものと考えられる。
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