毎年トマトのモザイク病が多発するトマトの連作地圃場において,その地上部にまだモザイク病の発生のまったくみられない時期に3圃場(A, B, C),モザイク病が10%-15%の発生のみられる時期に2圃場(D, E),計5圃場のトマトを採集して,それについて試験した。採集はその茎葉部にモザイク症状のみられない株を各20株(C圃場では10株)選び,その株ごとに茎葉部と根部を1組にして,その各部におけるTMVの存否を
Nicotiana glutinosaに汁液接種して調べた。
その結果,茎葉部にはTMVが(-)で,根部(+)の結果を示した株が,A, B, C圃場では計50株中24株(48%),D, E圃場では40株中13株(33%)と多数存在することが明らかになった。すなわち,その地上部になんら病徴がみられず,かつそこからTMVがまったく検出されない株でも,その根部がすでにTMVに感染している株が比較的多数存在するといえる。A, B, C圃場およびD, E圃場における茎葉部(+),根部(-)の株はそれぞれ0, 2株,茎葉部(+),根部(+)の株は16, 18株,茎葉部(-),根部(-)の株は10, 7株であった。A, B, C圃場およびD, E圃場において分離されたTMVの系統をタバコ(Bright Yellow)に汁液接種して調べたところ,それぞれトマト系100%, 95%,普通系10%, 10%で,このトマト系と普通系の発生状況は一般圃場での89株について調べた結果のそれぞれ92%, 13%の値に近かった。
D, E圃場に生えていた外観健全なオニタビラコ,ノゲシ,ナズナ,ハコベ,ミミナグサを採集し,計25株についてその根部からTMVの分離試験を行なったが,その結果は(-)であった。
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