抄録
1. TMV普通系(OM),トマト系(T)および潜伏系(3III)を用い,精製ウイルスあるいはウイルスRNAの一定量(吸光度による)を接種源として,数種の局部病斑寄主における病斑形成能を半葉法によって比較した。OM系とT系の比較では,N. glutinosa, D. tatulaおよびC. amaranticolorのいずれにおいてもT系ウイルスの病斑形成能はOM系に劣り,N. glutinosaではOM系の50-60%,その他の寄主では約70%であった。3III系もOM系にくらべてN. glutinosa上の病斑形成能が劣り,50-60%であった。T系はOM系にくらべてウイルスRNAおよび蔗糖密度勾配遠心によるピーク画分のウイルスおよびRNAも,N. glutinosaおよびXanthi ncにおける局部病斑形成能が劣った。
2. N. glutinosaの半葉法により,病斑形成能の差を考慮に入れて3種の全身感染寄主,タバコ(Xanthi),トマトおよびP. floridanaの接種葉におけるOM系およびT系の増殖を比較した。接種源としてXanthi接種葉の感染点を飽和する0.5mg/mlの精製ウイルスを用いた。ウイルスの増殖はタバコではOM系がT系に,トマトではT系がOM系にまさる増殖曲線が得られ,TMV系統による増殖の寄主特異性が確かめられた。P. floridanaでは両系の増殖量の差異は明らかでなかった。