日本植物病理学会報
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36 巻, 2 号
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  • 植物病原菌によるpentachloronitrobenzeneの吸収,代謝および蓄積
    中西 逸朗, 奥 八郎
    1970 年 36 巻 2 号 p. 67-73
    発行日: 1970/03/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ペンタクロロニトロベンゼン(PCNB)の植物病原菌に対する生育抑制作用の特性をしらべ,その選択毒性機構を病原菌によるPCNBの吸収,代謝および蓄積量から解析した。
    1. PCNBの植物病原菌に対する生育抑制作用は,きわめて選択的であり,R. solani, B. cinereaの1菌系に対して特異的に強い生育抑制を示す反面,F. oxysporum, P. debaryanum, P. parasitica, V. alboatrum, B. cinereaの他の1菌系に対する生育抑制作用は弱かった。
    2. PCNBのR. solaniに対する生育抑制作用は静菌的で,PCNBによって生育を抑制されている菌糸を無薬剤培地に移植すると,無処理区の菌糸とほぼ同様に生育した。
    3. PCNB含有培地上にR. solaniを長期間培養すると,最初完全に生育を抑制されている菌糸が日数の経過とともに徐々に生育を始めた。
    4. 感受性菌が菌体内に吸収するPCNB量は,抵抗性菌に比較して2-3倍多かった。
    5. 感受性菌はPCNBをPCAに,抵抗性菌はPCA, PCTA両物質に代謝し,その代謝能力は一般的に抵抗性菌で高かった。
    6. 菌体内に蓄積されるPCNB量は,抵抗性菌においては少なく,感受性菌ではきわめて多かった。
    以上の実験結果から,植物病原菌に対するPCNBの選択性は,菌体内に吸収される量および代謝される量と関連して,最終的に菌体内に蓄積されるPCNB量によって支配されることがうかがわれた。
  • 都丸 敬一, 陶山 一雄, 久保 進
    1970 年 36 巻 2 号 p. 74-80
    発行日: 1970/03/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. TMV普通系(OM),トマト系(T)および潜伏系(3III)を用い,精製ウイルスあるいはウイルスRNAの一定量(吸光度による)を接種源として,数種の局部病斑寄主における病斑形成能を半葉法によって比較した。OM系とT系の比較では,N. glutinosa, D. tatulaおよびC. amaranticolorのいずれにおいてもT系ウイルスの病斑形成能はOM系に劣り,N. glutinosaではOM系の50-60%,その他の寄主では約70%であった。3III系もOM系にくらべてN. glutinosa上の病斑形成能が劣り,50-60%であった。T系はOM系にくらべてウイルスRNAおよび蔗糖密度勾配遠心によるピーク画分のウイルスおよびRNAも,N. glutinosaおよびXanthi ncにおける局部病斑形成能が劣った。
    2. N. glutinosaの半葉法により,病斑形成能の差を考慮に入れて3種の全身感染寄主,タバコ(Xanthi),トマトおよびP. floridanaの接種葉におけるOM系およびT系の増殖を比較した。接種源としてXanthi接種葉の感染点を飽和する0.5mg/mlの精製ウイルスを用いた。ウイルスの増殖はタバコではOM系がT系に,トマトではT系がOM系にまさる増殖曲線が得られ,TMV系統による増殖の寄主特異性が確かめられた。P. floridanaでは両系の増殖量の差異は明らかでなかった。
  • 第1報 スイセン・モザイク・ウイルス
    岩木 満朗, 小室 康雄
    1970 年 36 巻 2 号 p. 81-86
    発行日: 1970/03/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. 黄色条斑の病徴を示しているスイセン(品種口紅)から汁液接種によって分離されたウイルスについて諸性質を調べた。
    (1) 供試した9科20種の植物のうち7科14種の植物に寄生性が認められた。このうち全身感染した植物は7種(センニチコウ,ビート,ササゲ,クリムソンクローバ,ゴマ,N. clevelandii,スイセン)で,このうち全身感染の病徴を発現したものはセンニチコウだけであった。C. amaranticolor, C. quinoa,ツルナ,エンドウ,ダイズにlocal lesionを生じた。
    (2) モモアカアブラムシによる伝搬は認められなかった。
    (3) 耐熱性は60-65°C,耐希釈性は10-7以上,耐保存性は8-16週間(20°C)であった。
    (4) ウイルス粒子は長さ500-550mμのひも状粒子であった。
    (5) 部分純化したウイルスを用いて作製した抗血清は沈降反応混合法により128の力価を示した。本ウイルスはwhite clover mosaic virus, cymbidium mosaic virus, potato virus Xの抗血清とは反応しなかった。
    (6) これらの諸性質から本ウイルスはわが国で未報告のnarcissus mosaic virusと同定された。和名はスイセン・モザイク・ウイルスとした。本ウイルスを接種したスイセン実生に病徴を示さなかったので,原株の黄色条斑と本ウイルスとの関係は不明である。
    2. 本ウイルスが各地のスイセンのウイルス症状株および外観健全株にどの程度分布しているかを調べるため,数種植物に対する汁液接種とdip法による電顕観察,抗血清試験により調べた。その結果,ウイルス症状株41株のうち34株,外観健全株12株のうち5株から検出された。この結果本ウイルスはわが国のスイセンに広く分布しているものと思われる。
  • VI. 黄色微斑系
    都丸 敬一, 宇田川 晃
    1970 年 36 巻 2 号 p. 87-93
    発行日: 1970/03/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    香川県下で1960年夏に採集された黄色濃淡斑だけで,奇形,えそ等を伴わないタバコからCMVの新しい系統(CMV-YM)が分離された。本ウイルスはタバコ,N. glutinosa, N. sylvestris,トウガラシ等にあざやかな黄色濃淡斑を示し,えそ,奇形等を生じないことが特徴である。ヒャクニチソウ,ニチニチソウに軽い緑色濃淡斑,ゴマに全身えそ,キウリに軽度の黄斑を生ずるほか,P. floridana,ホウレンソウに緑色濃淡斑および奇形を生ずる。ササゲ,C. amaranticolorの接種葉に局部えそ斑を生ずる。タバコ,N. glutinosa,ササゲ,ヒャクニチソウ,ゴマ,センニチコウなどを判別寄主として,既報のCMV-O, Y, C, LEなどの系統と判別できる。罹病葉搾汁液の耐熱性55-60°C (10分),耐保存性2-3日(25°C),耐希釈性1:10,000を示し,耐熱性は既報の系統より低い。罹病葉から直接フェノール法によって抽出した核酸成分の感染力は対照のリン酸緩衝液磨砕汁より高かった。CMV各系統との干渉効果はほぼ完全である。ただCMV-Cに感染したタバコに重複感染しないことは,その他の系統と異なっており,本ウイルスとCMV-C系との近似性を示唆しているが,さらに検討を要する。CMV各系統との血清反応によって抗原性に差異は認められなかった。精製ウイルス粒子に径約30mμの球状または多角体を示した。本ウイルスに感染したタバコの病徴の回復は顕著でないが,ウイルス濃度には既報と同様な消長がみられた。本ウイルスをCMV黄色微斑系,CMV yellow mild mottle strain (CMV-YM)と呼ぶことにする。
  • 野村 章, 加藤 寿郎, 平井 篤造
    1970 年 36 巻 2 号 p. 94-97
    発行日: 1970/03/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    TMVに罹病したタバコの茎からカルスを誘導すると,そのカルスの中でウイルスの増殖が認められた。カルスを螢光灯連続照明下と暗所でそれぞれ培養すると,連続照明下で培養したカルスが,暗所で培養したカルスに比し生育が良好であった。このカルスの湿重あたりのウイルス量をインゲン初生葉で検定し,カルス湿重と湿重あたりのウイルス量を調べたが,有意な相関は認められなかった。14CO2の存在で,連続照明下で培養すると,炭酸固定が認められることから,光による罹病カルスの生育増加は,炭酸固定によるものと想像した。
  • 兵藤 宏, 瓜谷 郁三
    1970 年 36 巻 2 号 p. 98-105
    発行日: 1970/03/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    宿主を異にする3種類の黒斑病菌(サツマイモ黒斑病菌,コーヒー黒斑病菌,スモモ黒斑病菌)をサツマイモ塊根および茎に接種して,宿主の感染組織からのエチレンの生成量を調べた。サツマイモ黒斑病菌感染組織ではいちじるしい量のエチレンが生成されたが,コーヒー黒斑病菌感染組織では生成量はかなり低く,スモモ黒斑病菌感染組織ではさらに生成量は少なかった。これらの結果は著者らがすでに報告したようにイポメアマロンを含むフランテルペン類の生成がサツマイモ黒斑病菌感染組織でもっとも高く,コーヒー黒斑病菌感染組織ではかなり低く,スモモ黒斑病菌感染組織ではもっとも少ないという結果とよく似ている。すなわちエチレンの生成はフランテルペン類の場合と同様に病原性の強い菌を接種した組織ほど高いことを示している。エチレン生成は菌の侵入,気菌糸の生育の度合とよく対応していることから,エチレンの生成量を菌の侵入,生育の度合をあらわす1つの指標とした。中抵抗性の農林1号を宿主に用いてあらかじめコーヒー黒斑病菌,スモモ黒斑病菌を接種したのちにサツマイモ黒斑病菌を接種すると,サツマイモ黒斑病菌の侵入がおさえられることがわかった。サツマイモ黒斑病菌侵入阻止効果はコーヒー黒斑病菌の前感染により非常に強くあらわれる。サツマイモ黒斑病菌の接種1時間前にコーヒー菌を接種することにより50%の阻止(エチレン生成量の測定から)がみられた。これら非病原性菌の前感染による病原性菌の感染阻止機構について考察した。同時にこの問題と関連してなぜ非病原性菌が宿主の表層にとどまり内部に深く侵入できないかということについて推察を行なった。
  • 田中 智, 塩田 弘行
    1970 年 36 巻 2 号 p. 106-111
    発行日: 1970/03/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. モモアカアブラムシのジャガイモ葉巻病ウイルス伝搬における獲得吸汁および接種吸汁の最短時間は5-10分間であったが,1時間以内の吸汁では伝搬は低率であった。獲得および接種吸汁は長くなるほど伝搬が多くなり,48時間吸汁では,それぞれ84および90%の伝搬率を示した。
    2. 獲得吸汁を1, 4および8時間行なったアブラムシ群は,吸汁後それぞれ23-24, 12-16および8-16時間の潜伏期間を経て,はじめて健全植物にウイルスを伝搬し,潜伏期間は獲得吸汁の長さにより差異が認められた。最短伝搬所要時間は,獲得吸汁の長さに関係なく16-24時間であり,ウイルス源植物の種類や大きさでやや差が認められた。
    3. 伝搬率は,15°C, 22°Cおよび30°Cでは,高温ほど,また獲得吸汁時間が長いほど高くなるが,30°Cでは長い吸汁(24, 48時間)のときは22°Cにおけるより低かった。低温では伝搬率が低く,獲得吸汁に長時間を所するが,ウイルス保有期間は長くなり,2°Cでは40日後でも伝搬が認められた。
    4. 15°Cにおける虫体内潜伏期間は24時間獲得吸汁後48-72時間,20°Cおよび25-30°Cでは8時間獲得吸汁後,それぞれ8-16および0-8時間であり,温度と伝搬所要時間との関係は,高温ほどその時間が短かくなることが認められた。
  • 土崎 常男, 與良 清, 明日山 秀文
    1970 年 36 巻 2 号 p. 112-120_1
    発行日: 1970/03/30
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    1) 関東地方で採集したササゲ・モザイク病2株,市販黒種十六ササゲ種子から由来した発病株1株につき病原ウイルスの同定を試みた。3株とも寄主範囲はマメ科の一部とアカザに限られ,不活化温度50-60℃,希釈限界10,000-100,000倍,保存限界1-6日で,3種のアブラムシで伝搬された。種子伝染はササゲでおこるが,アズキではおこらない。ウイルス粒子は長さ約750mμのひも状である。以上の結果から供試ウイルスは日野が福岡で採集したウイルスに性質が近く,Andersonの分類にしたがえば第2群に属するものと結論され,ウイルスの名称としてLovisoloらのcowpea aphid-borne mosaic virus (CAMV)を用いることとした。
    2) 関東地方で採集したササゲのモザイク株から寄生性の広いウイルスが分離された。これは粒子の形態,CMV抗血清との反応からササゲで全身感染するキュウリ・モザイク・ウイルス(CMV)の特殊な系統と考えられ,ササゲで種子伝染はしなかった。
    3) 関東地方で採集したササゲのモザイク株からbroad bean wilt virus群に属するサブクローバ・モットル・ウイルス(SMV)が検出された。
    4) 判別寄主を用い,関東地方での上記3種のウイルスの分布を調べた。供試56株のうち,CAMVが49株から,CMVが3株から,SMVが2株からそれぞれ検出された。
    5) 東北農試刈和野試験地から分譲されたアズキ大館2号種子から由来した発病株につきウイルスの同定を試みた。寄主範囲は一部のマメ科植物に限られ,不活化温度55-60℃,希釈限界10,000倍以上,保存限界5-7日で2種のアブラムシで媒介された。アズキで種子伝染し,粒子の形は長さ約750mμのひも状で,CAMVとの間に干渉効果が認められた。以上の結果から供試ウイルスは日野が記載したアズキ・モザイク・ウイルス(AzMV)と同定された。
    6) 東京都下で採集したアズキのモザイク株から,寄主範囲,粗汁液中のウイルスの不活化条件,アブラムシの伝搬などの性質がCAMVと一致し,CAMVと同定されるウイルスが検出された。7) 東京都下で採集したアズキのモザイク株から寄生性の広い,不活化温度70-75℃,希釈限界10,000-100,000倍,保存限界5-7日,アブラムシで伝搬されるウイルスが検出された。このウイルスは粒子の形態,CMV抗血清との反応からCMVと同定された。アズキで種子伝染は認められなかった。
    8) 上記3種のウイルスの関東地方での分布を判別寄主を用いて調べた。各ウイルスの分離される割合は混合感染も含めてCMVが約55%, AzMVとCAMVがそれぞれ32%と26%であった。
  • 1. 種子伝染に関与する要因
    土崎 常男, 與良 清, 明日山 秀文
    1970 年 36 巻 2 号 p. 121-126
    発行日: 1970/03/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1) アズキではアズキ・モザイク・ウイルス(AzMV),キュウリ・モザイク・ウイルス(CMV),ササゲ・モザイク・ウイルス(CAMV)を使用し,ササゲではササゲ・モザイク・ウイルス2系統(CAMV-1, CAMV-3),サブクローバ・モットル・ウイルス(SMV)を使用して種子伝染に関与する要因を研究した。
    2) 初生葉期に汁液接種したアズキおよびササゲにおける種子伝染率はAzMV感染大館2号で5.6%,早生大粒で14.7%, CAMV-1感染在来蔓無金時で5.6%,黒種十六で0.5%, CAMV-3感染在来蔓無金時で28.5%,黒種十六で21.4%を示し,その他の組合せでは種子伝染はおこらなかった。
    3) アズキ-AzMV,ササゲ-CAMV-1の組合せで,感染植物の開花時期と種子伝染率との関係を調べたところ,とくに季節の影響は認められなかった。また種子の莢内における位置と種子伝染率の間にもとくに関係は認められなかった。
    4) AzMVまたはCAMV-1と非種子伝染性ウイルスが混合感染しているアズキまたはササゲの種子では,それぞれAzMV, CAMV-1だけが伝搬され,種子伝染率は混合感染によって大きな変化を受けなかった。
    5) 在来蔓無金時と黒種十六とを接木し,それにCAMV-1を接種したが,種子伝染は在来蔓無金時にだけみられ,黒種十六では認められなかった。
    6) AzMV感染アズキ種子を貯蔵し,1年後と4年後の種子伝染率を比較したが,種子伝染率の低下はほとんど認められなかった。
    7) AzMV感染アズキ2品種の種子を50-75°Cで種々の時間温湯処理したが,種子が50%以上生存している範囲では,ウイルスを不活性化できなかった。40°C乾熱処理でも同様であった。
  • 藤原 喬
    1970 年 36 巻 2 号 p. 127-131
    発行日: 1970/03/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 田中 寛康
    1970 年 36 巻 2 号 p. 131-134
    発行日: 1970/03/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
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