日本植物病理学会報
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植物ウイルスの感染と増殖に関する研究
IV. CMV感染による細胞RNA合成の抑制
加藤 盛三沢 正生
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1971 年 37 巻 4 号 p. 272-282

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抄録
CMV感染タバコ葉細胞におけるRNA合成の抑制について検討した。
1. CMV感染タバコ葉細胞のRNA含量は感染直後から24時間までは急速に低下するが,それ以後は漸増する。この増加は主としてウイルスRNAの合成増加によるものと思われる。
2. 細胞核DNAの塩基組成,buoyant densityはCMVの感染によってまったく変化しない。したがって感染細胞のDNA依存のRNA合成の低下は,DNAの質的変化によるものではないと推定される。
3. 感染細胞でのヒストン合成はDNA合成に伴って変化するが,ヒストンはDNAと異なり,量的だけでなく,質的にも変動する。すなわちヒストンの各分画中,感染によって高アルギニンヒストンの分画がいちじるしく増加してくる。
4. タバコのヒストンはcalf thymusの細胞核系でのRNA合成を阻害する。阻害効果は健全細胞より感染細胞からのヒストンで顕著である。
以上の諸結果から,CMV感染細胞でみられる細胞のRNA合成の抑制は,感染によるヒストンの質的な変動に起因すると推定された。
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