日本植物病理学会報
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イネいもち病における寄主・病原菌の関係の因子分析法による研究
後藤 岩三郎
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1973 年 39 巻 1 号 p. 35-41

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抄録

1. 葉鞘接種の侵入度による定量的データと,噴霧接種の病斑型による定性的データとは,いもち病菌とイネ品種との関係の因子分析で同じ結果を与えた。(イ)菌系・菌型の第1因子負荷量が第2因子以下の負荷量よりもいちじるしく大きく,したがってその寄与率もまた大きい。(ロ)品種の第1因子得点は第2因子以下の得点よりも大きく,平均抵抗度と密接な相関関係にある。
病原性の分化は中間程度の抵抗反応にまでおよぶものである。
2. 森島によれば,菌型はインド,日本両群に区分される。本報告は各群を別個に対象としているので,菌系・菌型の第2因子負荷量における分化は認められなかった。N菌型を中心にして,侵害品種群を多くする方向にC-1, 2, 5さらにT菌型が分化する。別の方向にC-3, 6菌型が侵害品種群を特殊化して分化する。侵害品種範囲を拡大することで両菌型群は接近している。
3. 第1因子負荷量のより大きい菌系は,解析対象のより多くの菌系と共通性の大きいものである。またその小さい値の菌系は特殊なものである。このことは単独あるいは少数菌系による検定の必要な場合の指針になるであろう。
4. 病斑型では同じ抵抗性反応群に入る品種でも,葉鞘検定によるデータの第1因子得点の異なるものがある。そしてこれは平均抵抗度からも知られる。遺伝子組成も異なるものである。葉鞘接種法は中間程度の抵抗性を含めて検定出来る方法である。

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