日本植物病理学会報
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ヒメトビウンカによるイネ縞葉枯病ウイルスの伝搬
II. 保毒虫が吐出したウイルスのイネ体内における転流とその増殖部位
孫工 弥寿雄桜井 義郎
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1973 年 39 巻 2 号 p. 109-119

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抄録

1. 接種位置と病徴の発現位置との関係あるいは血清反応によるウイルスの分布調査結果により,保毒虫が吐出したウイルスはイネの吸汁部位では増殖せず,直ちに通導組織内を増殖部位へ転流するとみられた。この転流途中を氷冷,熱処理,多湿処理などの物理的処理や呼吸阻害剤,麻酔剤などの薬液処理をして,転流するイネの組織を,また,葉身切断法により転流する速度を追跡した結果,転流は30Cで師管内を1時間当たり25∼30cmの速度で下方に向って行なわれ,転流途中の吐出ウイルスは無毒のシロオビウンカで確実に回収されることが判明した。吐出ウイルスの転流の多少は,接種頭数,接種時間,品種などで異なり,品種ではRR品種よりSS品種の方が良好で,環境条件では断根,葉身折損,冷水,低温処理がいずれも転流を阻害することが判明した。
2. イネ体内のウイルス増殖部位を明確にする目的で,組織化学的検出,血清あるいは螢光抗体法,病徴出現部位の探索により,ウイルス増殖部位の分布,増殖の経時変化を追跡した結果,ウイルスの増殖は細胞分裂中の組織で行なわれるものとみられ,この部位は保毒虫接種時の最上展開葉(n)より1枚上の葉(n+1)の葉鞘から細胞分裂中の葉原基(n+4)にかけて分布し,また,出現する病徴では2枚上の葉身からであるとみられた。

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