日本植物病理学会報
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N-3-ピリジルイミドジチオカーボネート誘導体の抗菌特性
加藤 寿郎田中 鎮也山本 茂男川瀬 保夫上田 実
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1975 年 41 巻 1 号 p. 1-8

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抄録

新規化合物,S-n-ブチルS'-p-tert-ブチルベンジルN-3-ピリジルイミドジチオカーボネート(S-1358)の抗菌特性について検討した。本薬剤は子のう菌類,不完全菌類に属する数種糸状菌の寒天培地上における生育を強く阻害し,キュウリおよびオオムギのうどんこ病に対し低濃度で高い防除効果を示した。
キュウリうどんこ病菌(Sphaerotheca fuliginea)に対するS-1358の影響を顕微鏡下で観察したところ,本薬剤は胞子の発芽を阻害しないが,発芽管の伸長を抑え,同時に発芽管先端の膨化をひき起すことが判明した。さらにこのような形態変化は薬剤処理濃度1ppm~1000ppmのいずれの濃度においても同様に観察された。これらの事実からS-1358は糸状菌の細胞壁もしくは細胞膜に何らかの影響を与えているものと思われる。
またS-1358は揮散効果を示し,キュウリ子葉上の薬剤が直接散布されていない部分で,うどんこ病を抑えた。このことは実際条件下で病害防除効果を増す可能性を示している。

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