日本植物病理学会報
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イネ縞葉枯ウイルスの純化
小金沢 碩城土居 養二與良 清
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1975 年 41 巻 2 号 p. 148-154

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抄録
木谷・木曽(1968)の方法によりイネ縞葉枯ウイルス純化を試みたところ,氏らが報告しような小球形粒子が分離された。しかし,これら粒子は形が不揃いでcapsid構造を欠き,ウイルス粒子とは考えられなかった。次にdirect negative染色法によりイネ病葉からウイルス粒子の検出を試みたところ,枝分れ構造を示す糸状粒子が発見された。この糸状粒子を純化するため,イネ病葉を0.2Mリン酸緩衝液で磨砕し,低速遠心上清を10%蔗糖クッション遠心し,その沈澱をクロロホルムとTriton X-100で処理し,次いで分画遠心した。さらに5~20%蔗糖密度勾配遠心し,最終的に30~60% D2O-蔗糖密度平衡遠心した。得られた試料中には枝分れ糸状粒子が多量に含まれていたが,球形粒子はまったく存在しなかった。この試料は核蛋白の紫外部吸収スペクトルを示し,ヒメトビウンカへの虫体内注射で感染性が証明された。これらの結果から,この枝分れ糸状粒子がイネ縞葉枯ウイルスであると結論した。高倍率で電顕観察した結果では,この糸状粒子は幅3nmの細い糸が絡み合い二重らせん構造となっており,幅約8nm,長さ(全長)約400nm,らせんのピッチは6nmであった。枝分れの仕方は様々であり,時に部分的にらせんがほどけ,ループ状を呈している粒子も観察された。
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