日本植物病理学会報
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41 巻, 2 号
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  • ナシ黒斑病菌胞子発芽の電子顕微鏡的観察
    石崎 寛, 光岡 菊郎, 河野 満, 久能 均
    1975 年 41 巻 2 号 p. 131-140
    発行日: 1975/04/25
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    ナシ黒斑病菌Alternaria kikuchiana Tanakaの胞子発芽に及ぼすポリオキシンの影響を,電子顕微鏡で観察した。未発芽胞子の細胞壁は,外層と内層の2層からなり,凹凸のはげしい表面構造を示した。発芽初期には,外層が破れて発芽管が突出するが,発芽管の細胞壁は胞子細胞壁の内層と連続していた。ポリオキシン処理をした胞子では,発芽管全体が膨潤し,胞子細胞壁の内層と連続した細胞壁層で囲まれていたが,さらにその外側に胞子外層と連続した外層が形成された。これに対して対照区では,発芽処理3時間で,発芽管の外層は形成されなかった。走査電子顕微鏡による観察でも,ポリオキシン処理胞子の発芽管の表面構造は凹凸がはげしく,無処理胞子の発芽管壁は平滑であることが明らかになった。
  • 第II報 雑草,ワラおよび土壌中における腐生的生存期間および生存密度について
    後藤 正夫, 太田 光輝, 岡部 徳夫
    1975 年 41 巻 2 号 p. 141-147
    発行日: 1975/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1) 葉肉内注射接種法によって,カンキツかいよう病菌の各種雑草,イネワラ,土壌およびナツダイダイ根部における腐生的生存期間と生存密度を調べた。
    2) 春汚染した雑草,イネワラでは約40∼90日間,土壌では約60日間の生存が認められたが,秋汚染したシバ,ベチベル,イネワラなどでは約200∼300日,土壌では約150日,ナツダイダイ根部では約300日の長期間生存が認められた。
    3) 108/gレベルで人工汚染した各種材料上における本菌の生存密度の推移をみると,湿潤土壌では初期から急激な減少を示したが,乾燥土壌では低密度ながら8ヵ月間の生存が確認された。シバでは最初急減するがその後ゆるやかな減少に移行し,102∼103/gレベルで数ヵ月間の生存が確められた。イネワラでもほぼシバと同じ傾向を示した。一方,ナツダイダイ根部では初期の減少はみられず,数ヵ月間106/gの高密度を維持した。
    4) かいよう病菌生存密度の消長は,各ファージ型間であまり大きな差はみられなかったが,一般にC型はAおよびB型よりも秋∼冬期の腐生的生存能力が高い傾向を示した。
    5) 以上のようにX. citriには寄主依存性生存形態を主とする寄生的エコタイプ(ファージ型AおよびB)と腐生的生存形態を主とする腐生的エコタイプ(ファージ型C)に区別して考えることが可能である。
  • 小金沢 碩城, 土居 養二, 與良 清
    1975 年 41 巻 2 号 p. 148-154
    発行日: 1975/04/25
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    木谷・木曽(1968)の方法によりイネ縞葉枯ウイルス純化を試みたところ,氏らが報告しような小球形粒子が分離された。しかし,これら粒子は形が不揃いでcapsid構造を欠き,ウイルス粒子とは考えられなかった。次にdirect negative染色法によりイネ病葉からウイルス粒子の検出を試みたところ,枝分れ構造を示す糸状粒子が発見された。この糸状粒子を純化するため,イネ病葉を0.2Mリン酸緩衝液で磨砕し,低速遠心上清を10%蔗糖クッション遠心し,その沈澱をクロロホルムとTriton X-100で処理し,次いで分画遠心した。さらに5~20%蔗糖密度勾配遠心し,最終的に30~60% D2O-蔗糖密度平衡遠心した。得られた試料中には枝分れ糸状粒子が多量に含まれていたが,球形粒子はまったく存在しなかった。この試料は核蛋白の紫外部吸収スペクトルを示し,ヒメトビウンカへの虫体内注射で感染性が証明された。これらの結果から,この枝分れ糸状粒子がイネ縞葉枯ウイルスであると結論した。高倍率で電顕観察した結果では,この糸状粒子は幅3nmの細い糸が絡み合い二重らせん構造となっており,幅約8nm,長さ(全長)約400nm,らせんのピッチは6nmであった。枝分れの仕方は様々であり,時に部分的にらせんがほどけ,ループ状を呈している粒子も観察された。
  • 都丸 敬一, 大河 喜彦
    1975 年 41 巻 2 号 p. 155-161
    発行日: 1975/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    タバコに被害の多いTMVやCMVなどのウイルスに対する抗ウイルス物質検索の過程で,海藻多糖の1種アルギン酸塩が高い感染阻止効果を持つことを見出した。アルギン酸のソーダ,カリ,アンモニウム,トリエタノールアミンなどのいずれの塩でも,同様な高い阻止効果を示した。TMV-N. glutinosaの系では,アルギン酸塩の阻止効果は0.1∼1%の濃度で80∼100%であった。ソーダ塩についての検討で,TMVとN. glutinosa,インゲン,タバコ(Xanthi nc)の組合せで,いずれも高い効果を示すが,C. amaranticolorでは効果はやや劣った。CMVとササゲ,タバコ,C. amaranticolorの組合わせでは,TMVにくらべて効果はやや低かった。
    アルギン酸ソーダに動物カゼインを混合し,助剤を加えたAC剤では,アルギン酸塩単剤より効果が高く,感染阻止剤として有用と思われた。AC剤は温室実験ではCMVのアブラムシ伝搬を20∼50%阻止した。アルギン酸塩の作用機作については,さらに検討を要するが,有効物質の葉組織への浸透,移行性はなく,TMV接種後の処理では接種後5分以降では効果はないことがわかった。また,アルギン酸塩はTMVを凝集させる性質もあることが明らかとなった。
  • 解離多糖質の性質
    大内 昭, 富永 時任
    1975 年 41 巻 2 号 p. 162-170
    発行日: 1975/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    腐敗病細菌のendo-PTEを細胞壁成分(粗繊維)に作用させると,多量の水溶性多糖質が溶離する28)。本報ではこの多糖質の性質を調べて,該酵素による組織の崩壊機構を検討した。
    ダイコン根部より調製した粗繊維に,2.0PTE単位の純化酵素を作用させたのち,種々の多糖質分画に分別した。まず,各分画の収量を測定したところ,酵素処理区ではF-I分画(水-可溶性多糖質)の著しい増加にともなって,おもにF-III分画(希塩酸-可溶性糖質)が減少することが判明した。
    F-IおよびF-III分画は化学的性質の異なる多成分の混合体であって,いずれもDEAE-セルロースヵラムクロマト法によって6画分に分けられた。F-I糖質の主成分は,酢酸緩衝液の濃度が0.2, 0.3および0.4Mで溶離する3画分であって,その収量はいずれも酵素処理区で高まっていた。一方,F-III糖質の主成分のうち,0.3および0.4M画分と水酸化ナトリウムで溶離する画分が酵素処理で著しく減少していた。それゆえ,酵素処理区で認められたF-I糖質の増加とF-III糖質の減少は,両糖質における主要画分の増減に起因すると判断され,この際とくにウロナイド成分の変動が顕著であった。
    酵素処理区のF-I糖質は構成単糖を異にした多成分の混合物と理解され,各画分を硫酸で加水分解した結果,ガラクトウロン酸のほかにガラクトース,アラビノース,ラムノースおよびキシロースなどの中性単糖が検出された。
    F-I糖質の解離機構についてはさらに検討を要するが,ウロナイド成分に富む0.2および0.3M画分では,不飽和化合物の含量が多く,エステル化度も高かったので,これらはエステル化度が比較的高いプロトペクチン質から,trans-eliminative26)に解離したと推考した。
  • 西原 夏樹
    1975 年 41 巻 2 号 p. 171-175
    発行日: 1975/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    トウモロコシから分離した炭そ病菌は,寒天培地上において二つの異なる型の分生胞子を形成する。一つは6-21×3.0-6.0μm(平均12×3.8μm)の楕円形胞子で,これは若い菌糸の側面に生じた小突起の先端に形成された。この胞子は日が経っても鎌形にはならなかった。他は24-30×3.3-5.7μm(平均27.2×4.7μm)の鎌形の胞子で,日を経た菌叢の上のスポロドキアに生じ,鮭肉色の小粘塊をなしていた。トウモロコシの葉に対する病原性は楕円形胞子のほうが鎌形胞子よりもはるかに強かった。この楕円形胞子はBarnett (1960)のいうfree conidiaに該当するものと思われる。
  • 藤巻 宏, 清沢 茂久, 横尾 政雄
    1975 年 41 巻 2 号 p. 176-184
    発行日: 1975/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    イネのindica品種のいもち病抵抗性遺伝子(Pi-zt)を戻し交雑法により導入して育成したisogenic系統を用いて,この抵抗性遺伝子に対して突然変異により病原性を獲得したいもち病菌系研53-33-zt+の病原力を調べた。その結果,抵抗性遺伝子をもつ系統の上よりももたない系統の上で,この突然変異菌系の病原力が強く現われることがわかった。
    3つの異なる菌系から別々に分離した突然変異菌系(いずれもPiztを特異的に侵す菌系)の病原力を感受性品種の上で原菌系の病原力と比較した。研53-33-zt+だけが原菌系よりも病原力が弱くなっていたが,ほかの2つの菌系では病原力に差がなかった。
    これらの結果を宿主と寄生者間の働き合いを説明する遺伝子対遺伝子説との関連で論議した。
  • 奥 八郎, 大内 成志, 白石 友紀, 河本 征臣, 沖 和生
    1975 年 41 巻 2 号 p. 185-191
    発行日: 1975/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    純寄生性病害であるオオムギうどんこ病においてファイトアレキシン活性が検出された。
    発病の全過程において少なくとも2相のファイトアレキシン生産の時期がみとめられる。第1相は接種後12時間頃に検出され,親和性の組合せよりも,非親和性の組合せにおいてより強い活性が生産される。非親和性寄主の第1相ファイトアレキシン生産能と,抵抗性は共に50C, 5分の寄主の乾熱処理によって消失する。第2相のファイトアレキシンは,親和性の寄主の上に形成されたうどんこ病のコロニー周辺部に検出される。レースのちがいによる第2相ファイトアレキシンに対する感受性の相違はみとめられなかった。
  • 上田 一郎, 小島 誠, 村山 大記
    1975 年 41 巻 2 号 p. 192-203
    発行日: 1975/04/25
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    インゲン黄斑モザイクウイルス(BYMV, isolate No.30)を精製し,抗血清を作製した。罹病ソラマメ茎葉(凍結組織)を0.1Mトリス緩衝液(0.05 M EDTA, 1% 2-メルカプトエタノールを含む, pH7.0)中で磨砕し,四塩化炭素による清澄化の後,4%ポリエチレングリコール(#6000)により濃縮し,さらに分画遠心後,しょ糖濃度勾配遠心法により精製した。ウイルス収量は罹病ソラマメ100gあたり約2mgであった。
    得られた抗血清の力価は1/2048であった(重層法による)。精製ウイルスは寒天中での移動度が低く,寒天ゲル二重拡散法では反応が認められなかった。しかしラウリル硫酸ナトリウム(SDS)を寒天中に加えるか,あるいはSDSによってウイルスを処理すると,1本の沈降線が認められた。この方法により既知の2系統(BYMV-N系統,BYMV-CS系統)との血清学的関係を調らべたところ,いずれも本分離株との間にはスパーが形成された。SDSの代りに3, 5-ジヨードサリチル酸リチウム(LIS)を用いた場合,より明瞭な沈降線(スパーも含む)が得られた。
  • 堀尾 英弘, 雲居 三俊
    1975 年 41 巻 2 号 p. 204-214
    発行日: 1975/04/25
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    1967年以来,十勝馬鈴薯原原種農場のほ場で男爵薯などのジャガイモ数品種に,PVXに感染していないでモザイク症状をあらわす病気が発生した。発病株は開花期頃,葉脈間に退緑した小刻点があらわれ,さらにその周辺が退緑してモザイク症状を呈し,生育後期には下位葉にえそ斑点を生じ,また葉が青銅色に変化する。本病罹病男爵薯から分離したウイルスを男爵薯のウイルス・フリー個体に汁液接種すると高率に本病徴を再現でき,またPVS抗血清に対して陽性反応を示した。さらに寄主範囲と感受性植物の病徴,伝染方法,粗汁液中でのウイルスの不活化条件,ウイルス粒子の形態がPVSと同一であること,PVSとの干渉効果が完全であること,保存中のPVSを男爵薯のウイルス・フリー個体に汁液接種すると軽症ではあるがモザイク症状を発現すること,ジャガイモの病徴がRozendaalら(1955)の記載したPVSの病徴に類似すること,などから本病がPVSによる病気であると結論した。さらにジャガイモ20品種のウイルス・フリー個体に汁液接種して男爵薯,シマバラ,農林1号,オオジロ,Sirtema,長崎黄,S-41956,ケネベック,Triumphの各品種にモザイク症状を観察した。新たに分離したPVSは従来から多くの品種に潜在していたPVSと異なって男爵薯などの品種に激しいモザイク症状をあらわすので,前者をモザイク系統(PVSM),後者を普通系統(PVSN)として区別した。また本病の和名としてジャガイモSモザイク病を提案した。本病は20Cで生育するとよく発病するが高温(25C)ではほとんどが無病徴のまま保毒された。PVSMは胆振・上北馬鈴薯原原種農場にも存在するが発生は少なかった。
  • 李 銀鍾, 松山 宣明, 山口 富夫
    1975 年 41 巻 2 号 p. 215-218
    発行日: 1975/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    The activity of pectolytic and cellulolytic enzymes excreted by different isolates of Pyricularia oryzae Cav. was examined by using agar plate method. No correlation was found between the pathogenicity or virulence and these enzyme activities. The phenomenon of sugar repression was observed. The striking outcome was the finding of a virulent isolate P-2 which does not excrete the lytic enzymes.
  • 横山 佐太正, 酒井 久夫
    1975 年 41 巻 2 号 p. 219-222
    発行日: 1975/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    The typical symptom of the disease are yellowing, and sometimes brownish necrotic spots on the middle leaves of rice plants, and stunting. The disease is transmissible by green leafhopper, Nephotettix cincticeps, and occasionally infected doubly with rice dwarf. It occurs in the paddy field of Kyushu and may be a new virus disease in Japan.
  • 西 泰道, 木村 俊彦, 前島 勇
    1975 年 41 巻 2 号 p. 223-227
    発行日: 1975/04/25
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    The “waika” disease of rice plants has occurred since 1971 in Kyushu, Japan. The characteristic symptoms on diseased rice plants are stunting, discoloration and drooping of leaves. The causal agent which was transmitted by Nephotettix cincticeps Uhler and N. virescens Distant, seemed to be non-persistent in the vectors, and was found to be spherical virus approximately 30nm in diameter.
  • 土居 養二, 山下 修一, 楠木 学, 荒井 啓, 与良 清
    1975 年 41 巻 2 号 p. 228-231
    発行日: 1975/04/25
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    Small spherical virus particles, 30nm in diameter, were found in DN preparations from rice plants infected with the “waika” disease which had been collected in several areas of Kyushu, Japan. The virus particles could be partially purified by differential centrifugation followed by sucrose density gradient centrifugation. In thin section experiments, the same virus particles were observed in vacuoles and in cytoplasm. Development of cytoplasmic inclusion bodies (viroplasms ?) containing the virus particles was found in cytoplasm of some vascular cells.
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