日本植物病理学会報
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紫紋羽病罹病クワ根の微細構造の変化について
家城 洋之
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1975 年 41 巻 4 号 p. 356-363

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抄録

紫紋羽病り病クワ根の微細構造を観察したところ,菌糸はクワ根の表面に侵入座を形成して,菌糸束がコルク化した表皮細胞縫合部から侵入していた。菌糸が皮層部に達すると四方に蔓延し,周囲の皮層細胞へと侵入していた。中心部に近い皮層部には多数の侵入菌糸がみられ,皮層細胞はいちはやく崩壊し原形をとどめていなかった。また,pitを通って導管中に侵入していく菌糸が観察された。皮層細胞壁ではセルロース層のmicrofibrilの配列が不規則となり,崩壊過程をたどり,核は顆粒状を呈し,原形質膜はいたるところで分離し切断されていた。細胞壁中層のペクチン質は分解され,細胞は分離して間隙を生じ,ていた。
侵入座の菌糸細胞は不整形で,周辺部の細胞は中心部に比較して大きく,中心部の菌糸細胞間にはcementing materialと推察される物質が観察された。菌糸細胞にはグリコーゲン様顆粒がみられ,細胞内小器官に富んでいた。菌糸の隔膜には1個の隔膜孔が認められ,その部位に1枚の膜につつまれたWoronin bodyらしいものが観察された。

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