日本植物病理学会報
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植物体の病害抵抗性増強に関する研究
(1) イネ種籾の浸漬処理といもち病の発生との関係
有本 裕本間 保男大津 紀夫見里 朝正
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1976 年 42 巻 4 号 p. 397-400

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抄録
Dodecyl DL-alaninate hydrochloride (AH)の水溶液中にイネ種籾を浸漬して得られたイネ苗ではいもち病の発生が抑制される傾向が認められた。そこでAHを用いて種々の条件について検討し,以下のような結果が得られた。
AH溶液にイネ種籾を浸漬処理したイネ苗は無処理苗に比べてかなりいもち病の発生を抑制した。浸漬濃度が5ppmから500ppmまでの間では,その濃度といもち病の発病抑制とは平行の関係にあり,500ppmでその効果は最高となった。また,1000ppmではむしろその効果は低下し,2000ppmではさらに低下した。
AH溶液への浸漬時間といもち病の発病抑制との関係は72時間>48時間>24時間>無処理の順で,浸漬時間が長いほどその効果が高い傾向がみられた。
浸漬処理後ガラス温室で栽培したイネ苗がいもち病の発病抑制を示すまでには最低20日間が必要であり,それより以前には全く抑制が認められず,また30日前後栽培するとその抑制効果は最高となり,一度獲得した抑制効果はほとんど低下することなく収穫期まで保持される傾向がみられた。
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